余分な汗が出る体質が漢方で治った!    

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(帝国ホテル内漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方エッセイ


余分な汗が出やすい人の体質と漢方による対処法を説明し、薬石花房 幸福薬局の漢方薬で改善した症例をご紹介します。 


■■発汗は大切な生理現象■■


体温が上がると汗が出ます。汗は体表で蒸発して熱を奪い、皮膚を冷やしてくれます。暑い季節にも体を適度に冷やして、体温がむやみに上がるのを防いでくれます。汗が出ることは、とても大切な生理現象です。

もし汗が出ないとどうなるのでしょうか。

たとえば真夏の直射日光のもとで汗が出ないと、体温はすぐ40度を超え、意識がもうろうとしてきて熱射病を起こします。長引くと、生命の危険さえ生じます。正常な発汗は、われわれが健康であることの証です。
汗がまったく出ない、あるいはほとんど出ない無汗症あるいは乏汗症という病気があります。アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの場合も、汗が出なくなることがあります。そのような場合は、汗が出ないので皮膚の乾燥が進み、炎症が悪化してしまいます。熱がこもる感じをともないます。

汗は気化熱で皮膚の温度を下げ、また皮膚に潤いを与えてくれる、大切な分泌物です。
暑いときに汗を出している汗腺は全身に200~500万個あり、一日に700~900mlの汗を分泌しています。暑い季節や運動時はさらに増えます。

手のひらや足の裏のように皮膚が厚いところは、いつも汗で潤していないと肌が乾燥して硬くなり、あかぎれができてしまいます。
ですから手のひらや足の裏は汗腺が多くなっています。
正常な場合、体温の上昇時以外に、精神的に緊張や興奮した場合も汗をかきます。手に汗にぎる、冷や汗をかく、などの場合です。


■■余分な汗は体調不良の結果です■■


さて問題は、必要以上に流れ出る、不快な汗です。
運動や入浴、高温多湿の環境下における発汗は正常ですが、それ以外に汗の分泌が異常に増えた状態を多汗症といいます。全身的な多汗は、肥満や糖尿病、甲状腺機能亢進、交感神経の緊張、閉経時などにみられます。

また暑いときだけでなく、精神的な緊張や興奮により、手のひらや足の裏、顔や頭、わきの下などに局所的に発汗する場合もあります。多汗症とはいわないまでも、ちょっとした体調の不調や精神的なストレスなどにより汗をたくさんかくこともよくあります。いくら汗は必要なもので発汗は正常な生理現象だといわれても、必要以上にだらだらと流れる汗は不快なものです。実際に汗の悩みで漢方薬を服用する人は四季を通じて多いというのが現状です。

不快な汗の原因は、漢方の視点から見ると、おもに五つあります。

一つ目は、体内の熱と水分のバランスが崩れたタイプ。健康な人体内では熱と水分のバランスが均衡していますが、そのバランスが崩れると熱が体内にこもり、汗が出てきます。上半身がほてったり、すぐ顔が赤くなったり、のぼせたりしやすい人は、このタイプが多いでしょう。寝汗をよくかく人もみられます。

二つ目は、緊張やストレスに敏感なタイプ。精神的に緊張したり興奮したりすると、手のひらや足の裏にたくさんの汗をかきます。
精神的なストレスや緊張は、体内の気の流れを悪くしがちですが、このタイプの人はそれらの刺激に対して敏感に反応してしまうために異常に汗をかいてしまいます。全身からというよりは部分的にかくことが多く、手のひらと足の裏が一般的ですが、わきの下や顔、頭にも汗をかくという人もいます。

三つ目は、気が不足したために汗が出るタイプ。気は体に必要な元気や水分が体表から漏れ出すのを防ぎます。その気が不足すると、体内に保存しておくべき水分が体表から漏れ出してしまい、必要以上の汗となります。全身からじわりとかく場合が多く見られます。気が足りないために元気がなく疲れやすく、冷え症であるのに汗をかくことが多いため、冷たい汗、といわれることもあります。

四つ目は、体内に余分な水分が溜まっているタイプ。むくみをともなっていて、ぽちゃっとした印象の、いわゆる水太りタイプに多く見られます。暑い季節にちょっと動いただけでもだらだらと汗が出て止まらなくなったりします。

五つ目は、体内の水分が熱を帯びやすいタイプ。汗もかくけど脂性でもあり、肌が荒れやすくてのぼせやすい感じです。汗で下着に色がつきやすく、また汗のにおいも気になります。

西洋医学では、塩化アルミニウム液が処方されることがあります。汗が出てくる穴を金属化合物の作用でふさぐことにより、汗が出ないようにします。また精神安定剤を用いて、緊張したときに出る汗を減らすこともあります。汗が交感神経の働きで出るというので、手のひらの多汗症に対して、脳から手のひらにつながっている交感神経をメスで切断してしまう手術もあります。電気を用いて汗腺を焼いたり、わきの下の皮膚を剥離して汗腺を除去したりする手術もあります。
化粧品としては、一時的に汗の穴を凝固させる酸性水、汗のにおいのもととなる細菌の働きを抑える殺菌剤、においを隠すための香料、汗を吸い取って乾かすためのパウダー類などが用いられます。

漢方では、漢方薬を服用することにより内臓の機能や心身のバランス、またホルモンのバランスや自律神経の状態を調整し正常化させ、多汗症の改善に当たります。漢方薬の働きにより過剰に出る汗の量が少なくなり、汗のにおいも減ります。からだの内側から肌の状態を自然に調えていくことになります。


■■体質だからとあきらめないで■■


多汗症については、子どものころから汗っかきという方が多く、また汗腺の個数そのものを漢方で減らすことはできませんので、すぐに簡単に改善されるというわけにはいきません。汗が多い部位が手のひらやわきの下など局所的な場合は、外用薬やデオドラントなどの対症療法を併用しながら漢方薬で体質を改善していく、というのが一般的な方法かと思われます。

漢方薬で症状が改善された例を三つあげておきます。

■症例1(28歳 OL)「手のひらに汗をかきやすく、大事な書類などは汚さないように指先でつまむようにして持つのですが、それでもつまんだ部分が指のかたちにふやけてしまいます。握手をするときも、すごく緊張します。」

この方はカウンセリングのときもハンカチを握っておられました。手を広げて見せていただくと、見ているうちに少しずつ汗がにじみ出て、手のひらがきらきら光ってきました。汗の悩み以外には、月経前症候群があります。

この方の場合は精神的な緊張や興奮に対して体調が敏感に反応するタイプです。青皮や香附子、枳殻などサラサラ流す(漢方道3)働きの強い生薬で気の流れをのびやかにし、緊張に対して体が必要以上に反応しないようにしました。緊張の根源となる仕事をしながらでしたが、半年ほどで本人もさほど気にならないくらいに汗が減りました。生理前の落ち込みやいらいらも、かなり楽になりました。


■症例2(27歳 看護師)「子どものころから汗っかきで、ちょっと運動するだけで、顔や頭から汗がふき出します。また顔が赤くなりやすく、そういう時は顔がほてってしまいます。それ以外に気になることは、午後から足がむくみやすいこと、たまに夜中に手足がほてって眠りにくいことがあります。」

この方は体内の熱と水分のバランスが悪くなっているタイプです。汗だけでなく、足のむくみや夜中のほてりも、同じところに根本原因があります。このようなときは生地黄、当帰、銀柴胡、白薇などの生薬を使って熱と水分のバランスを調えて全身の水分状態を改善します。漢方道の必殺技4「バランスを調える」です。やはり半年近くかかりましたが、職場で仕事中も汗のことがさほど気にならないくらいになりました。

 

■症例3(25歳 販売店勤務)「全身にじわりと汗をかいてしまいます。とても疲れやすくて冷え症で、夏も自分の汗で体が冷えます。」

この方はエネルギー不足、漢方でいう気が不足しているタイプです。必要な水分を体内に保持するのも気の大切な働きですが、この気の機能が低下しているために汗が皮膚からにじみ出ます。疲れやすいのも冷え症なのも、気が不足していることが根本にあります。

こういう場合は黄耆、黄精、西洋参、大棗、浮小麦など、補う(必殺技1)働きの強い生薬を中心とした調合が効果を現します。この方の場合は冬から漢方薬を飲み始めて、最初はなかなか冷え症も改善されず効果が現れませんでしたが、夏になって汗のかき方が去年と比べて格段に改善されているのに気づき、夏の冷えも軽くなりました。

なおこの季節に気になる夏ばてや夏の冷え症、また清涼飲料水の飲みすぎの害などについては、拙著「漢方美人講座」(文藝春秋)の中で解説してあります。そちらも参考になさってください。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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