「不安神経症」と診断された奈々子が漢方でストレスを見事克服

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(帝国ホテル内漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方ストーリー

以下は、ストレスによって激しい動悸に襲われ「不安神経症」と診断されたOLが漢方で落ち着きを取り戻していく物語です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。

同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)


■■突然の動悸と息苦しさ■■


「あと先生、肌の調子もぼろぼろなんです」

奈々子は漢方薬局でのカウンセリングの最後に、こう付け加えた。

「それも4年前からですか?」

漢方の先生が、メモをとりながら奈々子に聞いた。

「そうです。全部、4年前からです」

4年前というのは、奈々子が帰宅途中の電車のなかで急に息苦しくなり、激しい動悸に襲われたときのことだ。呼吸ができないほどの苦しさで窒息しそうになり、倒れこむように次の駅でおりて、救急車を呼んでもらった。病院で心電図などの検査を受けたが、まったく異常は見つからなかった。

奈々子は6年前に大学を卒業して証券会社に就職した。希望の東京本社に配属されて喜んだのもつか束の間、与えられる仕事の量は多く、会社では時間に追われて働き、かなりのストレスを感じていた。

しかしストレスの最大の原因は、年配の女性社員、いわゆる“お局さま”の存在だった。

東京本社の奈々子の部署にはお局さまが4人いた。ちょっとしたミスで、ねちねちと怒られた。仕事を教えてくれている、と前向きに考えられればよかったのだけれど、そうは思えなかった。多くの人が見ている前で怒られたり、ロッカールームで陰口を言われたりした。いじめに近い人間関係に感じた。

入社して数ヵ月目には、奈々子は暗い表情で仕事をするようになっていた。

「奈々子ちゃん、大丈夫? 毎年お局さまにいじめられて何人かの若い女子社員が辞めていくみたいだけど、がんばってね」

と一年上の先輩に言われた。

そのころから、会社では常に緊張しているような状態になった。人の視線や動きが気になって仕方なくなり、遠くでこそこそ話をしている人がいると、自分のことを話題にしているのかと思うようになった。

緊張状態は職場だけでなく、家でも続くようになった。夜寝るときも、からだは疲れているのに頭がさえてしまっていて、なかなか寝付けなかった。ようやくうとうとしても、いやな夢を見て目覚めることも多かった。朝起きたときからどきどきと動悸がしていることもあった。

入社2年目くらいに、背中が痛くて病院に行ったことがある。調べてみると、胃潰瘍のあとが見つかった。ストレスが胃にきて、ちょうど胃の裏あたりの背中が痛くなったのでしょう、と言われた。

そしてとうとう4年前、帰りの電車のなかで激しい動悸と呼吸困難に襲われて救急車で運ばれる事件がおきた。


■■ストレス抵抗性を高める■■


それ以来、帰りの電車では扉が閉まるたびに息苦しくなり、一駅ごとにおりるようになった。なにかに対して常に恐怖感を感じるようになっていた。

たとえば心配して上司が食事に連れていってくれても、それがかえって息苦しく、食べものがのどを通らない状態だった。トイレも、気になりだすとすぐに強烈な尿意を感じて、ひどいときは10分おきくらいにトイレに行っていた。自分でも変だと思っていたが、どうしようもなかった。どうしていいのか、わからなかった。脳に血液がいっていないような感じで、めまいも生じるようになった。

病院に行ってみた。心療内科で“不安神経症”と診断され、抗不安薬が処方された。

薬を飲んでいると、不安感や恐怖感は少し薄らいだ。しかし、のどからみぞおちの辺りにかけての、つまっているような不快感は消えなかったし、気力や活力に欠けている状態は続いた。いやな夢を見ることにも変わりはなかった。

「奈々子、調子はどうなの? 少しは落ち着いた?」

こんなとき、心が安らぐのはむかしからの親友である。

「ありがとう、由加。薬を飲んでいると、ちょっとは楽かな。でも薬でコントロールしているって感じが自分でわかって、変な感じがするわ。なんていうか、自分の心じゃないみたい」

親友と一緒だと食事がおいしい。温かいポタージュが、心も温める。

「ああ、わかる、わかる。わたしも抗うつ剤を飲んでいたとき、そんな感じがしたわ。人工的に明るく元気にさせられているような気分ね。心の奥底ではつまらないと思っているのに、ぺらぺらと楽しそうにしゃべっている自分がいたわ」

由加も仕事のストレスから体調をくずし、軽いうつ病と診断されて、一時、抗うつ剤を飲んでいたことがある。

「でも薬のおかげで、あの突然おそってくる動悸や息苦しさが減っていることを思えば、少しくらいの違和感は仕方がないのかな、って思ったり」

「あら、だったら奈々子も漢方薬で体質改善してみたら?」

「漢方薬? そうか、由加は漢方薬でうつ病を改善したのだったわね」

「そう、ストレスに対する抵抗性を高めるような漢方薬で、うまく体質改善ができたみたいよ」

「そんなことが漢方薬でできるの?」

「漢方の先生がおっしゃるには、いまの世の中、ストレスがあるのは当たり前、問題は、同じようにストレスを受けていても、体調をくずす人もいれば、平気な人もいる、っていうことですって」

「なるほど」

「つまり、ストレス発散も大事だけど、ストレスをため込まない体質になれば、より安心、ってことみたいなのよ」

「へえ、なるほどね。それで由加は、どんな処方の漢方薬を飲んだの?」

「それはひとりひとりの体質によって違うらしいのよ。だから、わたしが飲んでいた漢方薬が奈々子にも同じように効く、とは限らないみたい」

「じゃあ、わたしに効く漢方薬は、どうやったらわかるの?」

「漢方薬局でカウンセリングを受ければいいのよ。カウンセリングで詳しく話をすれば、先生のほうで奈々子の体質を判断して、適切な処方を調合してくださるわよ」

さっそく奈々子は漢方薬局に行くことにした。


■■敏感すぎる気質を改善する漢方■■


「奈々子さんの体質を説明しますと、このようになります」

漢方薬局で問診票に記入し、先生とのカウンセリングが終わると、30分以上の時間が経っていた。先生は資料を見せながら、漢方の視点から見たわたしの体質について説明してくれた。

説明によると、五臓六腑の“心”と“脾”が、精神的なストレスの影響で弱っているとのことだった。“心”には神経系の機能が関係しているため、ここが弱ると神経症にかかりやすくなるそうだ。また“脾”には栄養代謝機能が含まれるため、この部分が衰えると体力も気力も弱くなり、疲れやすくなるとのことだ。

「たしかに先生のおっしゃるとおりですね」

「この“心”と“脾”の両方が弱っていると、環境変化や刺激に対して過剰に敏感に反応してしまいます。その結果、ちょっとしたことで精神不安を感じるようになっているのだと思われます。ついでにというと変ですが、こうなると“血”も不足してしまいますので肌が荒れますし、また生理がおくれたり、不正性器出血が生じたりすることもあります」

それはまさに、その当時のわたしの状態だった。そんなことも関係していたとは知らなかった。

「先生、また元のように明るく元気になりますでしょうか」

「不安や恐怖心から生じる激しい動悸や息苦しさで、命を落とす人や障害を残す人はいません。五臓六腑のバランスが整って敏感すぎる気質が安定してくれば、体調は改善されてくるでしょう」

奈々子は翌週から“心”と“脾”を中心に五臓六腑のバランスを調える(漢方道の必殺技④)漢方薬を飲み始め、8ヵ月ほどで元気になった。抗不安薬も必要なくなった。肌の調子もよくなった。

お局さまからは相変わらず小言や陰口を言われるが、そのころにはそれで悩むこともなくなった。奈々子はいつまでこの証券会社にいるかわからないけど、長く勤めることになろうとも、やさしくかわいいお局さまになって、後輩たちに余計なストレスを与えないようにしようと思った。

(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)

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当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

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