シミ対策は紫外線と上手に付き合って  

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(帝国ホテル内漢方相談薬局)の漢方エッセイ


■■紫外線は敵か味方か■■

 日差しが強くなってくると気になるのが、紫外線の影響です。紫外線に当たると肌は日焼けをし、シミやしわが増える原因にもなります。

 紫外線は、太陽光線が強いときに多くなり、日の光が弱い季節に少なくなります。 一年の中で日光が一番強いのは、太陽が一番高く昇る夏至のころです。季節でいえば毎年6月の下旬、22日ごろ、一日の中で昼の時間が一番長くなる日が夏至です。この時期に太陽は最も高い位置をまわります。日光が強いのは真夏の7月や8月かと思いがちですが、実際には6月の下旬に太陽光線が一番強くなっています。

 ということは、6月の下旬を中心にしてその前後、つまり6月と7月が一年の中で一番紫外線の強い時期となります。そしてその前後、つまり5月と8月も、かなり紫外線の強い月ということになります。5月はまだ春の余情もあり涼しい風にも吹かれ気をゆるめがちですが、実際には夏休みの8月のあのぎらぎらした太陽と同じ強さの日光を浴びていることになります。天候や日照時間などの関係もありますが、紫外線対策は、遅くとも5月から。

 紫外線とは光線の一種です。光にはさまざまな特徴がありますが、そのひとつに、光は波である、ということがあります。
光には波長の長いものもあり、短いものもあります。光の波長が400~700nm(ナノメートル:1nmは1ミリの100万分の1)の場合、その光は目に見えます。波長が長いと赤、短いと紫、中間には虹に見られる七色の光があります。たとえば波長が500nmくらいだとその光は緑色に見えます。紫外線は、波長が390nmより短い光です。紫より外側にあるので紫外線です。人の目には見えません。

 紫外線は体内でビタミンDを生成するのに必要な大切な光です。ビタミンDは、カルシウムで骨を丈夫にするために必要なビタミンです。北欧など日照時間の短い地域の人たちが晴天の日に日光浴をするのは、このためです。日光に十分当たらないと骨が弱くなるのです。

 しかしその反面、紫外線には強いエネルギーがあり、微生物を殺すための殺菌灯に紫外線ランプが使われたりします。スポーツクラブや美容院で櫛やブラシ、はさみなどが青い光の下に保管されているのを見たことがあるでしょう。紫外線は、そのくらい強い光でもあるのです。浴びすぎると細胞を傷つけ、皮膚の老化を促し、シミやしわの原因となり、さらに皮膚がんを引き起すことにもなります。

 なお細胞を破壊したり遺伝子を傷つけたりする波長の短い危険な紫外線は、大気中のオゾン層で散乱するため、地表にはあまり届きません。しかし環境破壊や二酸化炭素排出量増加にともなってオゾン層が薄くなると、波長の短い危険な紫外線が将来多量に地表に達することになります。すると皮膚がんなどの病気が増えてくるなど、見通しの暗い地球の将来が思い浮かびます。身近な環境問題にも敏感になって、明るい将来を地球に残したいと思います。

 余談ですが、たくさんの光線を混ぜると白い光になります。太陽からは、さまざまな光が放射されています。昼間の太陽が白く見えるのは、そのためです。また赤など波長の長い光は細かいちりや粒子があってもまっすぐ進んできます。夕日が赤いのは、このためです。逆に青など波長の短い光は細かい粒子に当たるとすぐに反射して、進む方向を変えながらやってきます。空が青く見えるのは、このためです。

 さて青よりも波長が短い紫外線、太陽が雲に隠れていても安心することなかれ。進路を変えながら地表にまでやってきています。つまり曇りの日でも紫外線はあなたに降り注いでいることになります。実際に曇りのときは晴天の場合の約半分、そして雨の日でも快晴の日の3割程度の紫外線量が観測されます。


■■色素沈着は自衛反応■■

 前置きが長くなりました。漢方とシミの話に進みましょう。

 先ほど紫外線の害について話しましたが、私たちの体には、ある程度の紫外線量に対しては自分で防衛する仕組みが備わっています。それが皮膚の色です。太陽光線の強い地域に住む人たちの皮膚の色が黒いのは、そのためです。逆に肌の色が黒いと体内でのビタミンDの産生が邪魔されますので、太陽の光が弱い地域に住む人たちの皮膚の色は白くなっています。

 皮膚の色はメラニンとよばれる色素の量に左右されます。メラニンは、皮膚に存在するメラノサイトという色素細胞で作られます。皮膚に紫外線が当たるとメラノサイトや、ある種の酵素、ホルモンが活性化してメラニンを作るようになっています。太陽の光が足りないとビタミンD量が足りなくなり、丈夫な骨が維持できなくなります。しかし逆に太陽の光を浴びすぎると紫外線が皮膚を傷つけ、肌の老化を招くばかりです。そこでメラノサイトはメラニン色素をせっせと作り、紫外線の害から私たちの体を守ってくれます。

 しかし繰り返し長く日光に当たるうちに、皮膚にはシミが出てきます。シミは、長年にわたって必要以上の紫外線を浴びてきた成果といえます。とくに年中肌を露出している顔に多くできてしまいます。

 シミは医学的には肝斑をさすことが多く、これは顔に左右対称にできやすい褐色の色素斑です。疲れがたまったときや、生理前、また妊娠中に濃くなります。肝臓の働きがよくないときにもよくできます。長年にわたって紫外線を浴び続けてきた結果できるシミについては老人性色素斑とよばれることがあります。もうちょっと気の効いた、女性にも受け入れられやすい名前にしてほしいものです。


■■シミのできにくい体質を■■

 シミの治療法として、現代医学ではビタミン類の内服や、ケミカルピーリング、レーザー治療などの外科的治療が行われます。外科的な措置はシミそのものを取り去りますので即効性はありますが、レーザー治療の場合は再発することが多く、前より悪化する例も多いようです。ケミカルピーリングは人工的に皮膚をはがしますので、そのぶん紫外線の害も受けやすくなります。治療をする場合は、十分注意して行ってください。

 漢方の場合は、シミができにくい、あるいはシミが悪化しにくい体質を作ることにより、シミの改善に当たります。

 32歳のOLで、左右の頬に薄く出てきたシミを改善したいというかたがいました。お化粧をしないで来てもらいましたところ、目じりの下のあたりに約1センチ大の淡褐色のシミができていました。さほど目立つほどではないのですが、疲れたときに濃くなるようで、また母親もシミが多いということもあり、気になっているとのことです。
とくに大きな病気にかかったこともなく元気そうですが、生理が遅れがちで、手足の末端が冷えやすいようです。仕事のストレスも感じており、いらいらしやすくなったとのことです。

 メラニン色素を作るメラノサイトは神経に由来する細胞です。このためメラニン色素の形成には精神的な要因も影響してくるようです。このかたの場合も精神的なストレスがシミに関係していると思われます。漢方道の必殺技③「サラサラ流す」働きのある生薬で気の流れを調え、ストレスを和らげます。具体的には川楝子や烏薬などがいいでしょう。さらに補う(漢方道①)力を使って代謝を促して皮膚に元気を与えることも大切。白朮や人参などを用います。そして捨てる(漢方道②)生薬、石膏、荊芥、黄柏などを用いてメラニンの排泄を進めました。

 シミは生理前や妊娠中に濃くなることからホルモンと関係していると思われますので、白芍などバランスを調える(漢方道④)生薬も使いました。もちろん、できるだけ直射日光に素肌を長時間さらさないようにしたり、バランスのよい食事を心がけたりという配慮も忘れないようにしてもらいました。半年ほど続けていますが、当初のシミはずいぶん目立たなくなりました。

 このように、漢方では体質を改善することにより症状が改善されます。シミの場合は、上記のような体質の改善が進んでようやくシミが薄くなってきます。効果が現れるのは、漢方薬を飲み始めてすぐというわけにはいきません。全身の状態がよくなって、気血のめぐりがスムーズになって、そしてはじめて顔のシミが薄くなっていきます。

 一般に、少なくとも数ヵ月はかかります。シミをとにかく短期間に消したい場合は、西洋医学の治療を優先させたほうがいいでしょう。外科的治療でシミができやすい体質が改善されるわけではありませんが、漢方で早く、と言われても困ります。

 今回は理科の勉強のようになりました。世の中にはさまざまな情報が流れていますが、皆さんには、漢方に限らず、いろいろな身近なことに対して正確な知識と判断力を身につけていただき、毎日の生活を楽しんでいただきたいと思っています。なお肌のトラブルに関しては拙著「漢方美人講座」(文藝春秋)の中でも解説してあります。そちらも参考になさってください。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

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★ 漢方道・四つの必殺技 ★

「補う」・・・ 足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
「捨てる」 ・・・体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
「サラサラ流す」 ・・・漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
「バランスを調える」・・・内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス - 漢方の得意技はバランスの調整にあり。

自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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