漢方薬は、ペットにも味方する


■■ペットの病気を治したい■■

 うちの愛犬チロロは最近、散歩の途中で道ばたの草をよく食べる。体調が良くないのだろうか。

 そういえば、このところあまり食欲がない。便も下痢ぎみだし先日はめずらしく吐いていたっけ。

 この子、病気かしら。ちょっと心配になった。

 かつてわたしが小学生のころ、家でペロという中型犬を飼っていた。ペロはわたしが学校から帰ってくると元気に跳ね回り、うれしそうにわたしにじゃれつき、懸命に尻尾を振ってくれた。いつも笑っているような表情をして、わたしを見上げていた。

 学校でいやな思いをしたときも、成績がよくなくて家に帰るのに気が重かったときも、帰宅してペロの陽気な態度に接すると、いつの間にか癒されて、わたしは元気になっていた。

 でもペロは死んだ。

 あるころから急に元気がなくなり、わたしが帰宅しても飛び跳ねてこなくなった。床に伏せていたからだを起こして尻尾を振ってはくれるが、それ以上の元気はないようだった。からだが言うことを聞かない感じだった。ぶよっとふくれた下腹が重そうだった。目は少し潤んでいて、困ったような悲しい光を放っていた。

 父がペロを動物病院に連れて行った。診察の結果、ペロはフィラリアという病気にかかっており、すでに手遅れでどうしようもないとのことだった。

 わたしは重い鉛のかたまりが胸につかえたようになり、どきどきして、少し吐き気もした。母も暗い表情で父の報告を聞いていた。胸がつかえたまま、恐る恐る床に寝そべるペロをなでた。いつもより骨っぽく、痩せてきているのがわかった。それでも寝そべったまま上目遣いにわたしを見て、尻尾を振った。

 それ以来、日を追うごとにペロの動作が弱々しくなっていった。食事も食べなくなった。

 そしてある朝、ペロはいつもと違うふうに床に横たわっていて、母が触るとすでに冷たくなっていた。母が泣いているのを見て、わたしも泣いた。

 その日からしばらくは家の中にも家族の心の中にも、ぽかんと穴が空いたような重い静けさがのしかかった。 母は、もう犬を飼いたくない、と静かに言った。ペロは母にとっても家族の一員だったのだと思う。

 チロロが具合わるそうにしているのを見て、ふと、その昔の犬の顔を思い出した。手遅れになる前に手を打とうと思った。


■■ペットの慢性病にも漢方は効果的■■

 チロロには皮膚病もあった。皮膚が乾燥しやすく、よく湿疹ができる。かゆみがひどいようで、脚で掻いたり舌でなめたり、あるいは歯で噛んだり毛をむしったりする。そうすると皮膚がただれて赤くなり、じくじくしたり毛が抜けたりする。

 そんなわけでチロロはときどき獣医さんのお世話になっていた。

 今回も、同じ獣医さんのところに行った。

 診察と検査の結果、胃潰瘍とのことだった。ついでに、肥満ぎみとのことで、心臓に負担がかかっているとも言われた。心臓病にかかりやすい犬種なので、体重管理に気を配るように、とのこと。

 肥満ぎみって、わたしと同じじゃない。がーん。そういえば、飼い主が太っていると犬も太っていることが多い。顔も似ていることが多い。なんだか、うれしいような情けないような、複雑な気持ちになってチロロの顔を見た。チロロも申し訳なさそうな目でこちらを見ていた。

 チロロはその日から胃潰瘍の薬を餌に混ぜて飲まされることになった。下痢や嘔吐などの症状はすぐになくなり、食欲も戻った。草を食べることもなくなった。元気になってよかった。チロロはまた以前のように活発に走り回るようになった。病気のことなどすっかり忘れていた。

 しかし数か月後にまた散歩の途中で草を食べるようになった。便も軟らかく、元気もない。獣医さんに診てもらうと胃潰瘍が再発していた。また同じ薬を処方してもらい、そしてまた元気になった。しかし数か月後にはまた草を食べるようになった。

 そんなことを約一年繰り返した。皮膚病も胃潰瘍も、獣医さんにもらった薬を塗ったり飲ませたりすれば症状は治る。でも、しばらくすると再発する。また薬を使えば治る。そしてまた再発する。

 待てよ。

 わたしは去年、漢方薬でダイエットに成功し、おまけにお肌もつやつや、胃の調子も絶好調になった。漢方薬をやめた今もそのままで、体重のリバウンドや肌荒れ、胃の痛みなどの症状は再発していない。

 漢方薬で体質改善。うちのチロロにも可能なのかしら。

 さっそくわたしが通っていた漢方薬局に相談に行った。

「先生、おかげさまで漢方薬をやめてから体重のリバウンドもなく、お肌もつやつやで元気にやっています」「邦子さん、うまく体質が改善されたようですね。よかったことです」

「きょうは、うちのペットの相談なんですが、動物の体質改善も漢方薬で可能ですか?」

 犬にも漢方が効くのかどうか心配だったが、先生は当たり前のような顔でお答えになった。

「もちろん大丈夫ですよ。動物の慢性病にも漢方薬は効果的です」


■■漢方薬でペットの体質を強化■■

 さっそくチロロの症状について先生に話をした。食事の内容などについても話した。

 チロロの場合は気やけつ血の流れが弱くなっていて、免疫力や抵抗力が落ちている状態とのことだった。

「そのせいでストレスに対して過敏に反応するようになっており、それが胃潰瘍の根本的な要因になっているのでしょう。皮膚においても気血の不足や抵抗力の低下が原因で、湿疹ができやすくなっているのでしょうね」

 なるほど、そういうことが根本的にあるから、薬で一時的に改善できても、また再発するわけね。

「そういう体質は、動物でも漢方薬で改善・強化できるのですか?」

「犬や猫も人間と同じ動物です。病気に関しても、人間の病気と大きな差はありません。慢性的な体調不良や病気の根本には、免疫力の衰退、血行の悪化、諸機能の衰えなど、体質的な要因が大きく関与しています」

「チロロの場合も、そういうことですね」

「症状がつらい場合は西洋薬で症状を抑える必要もありますが、病気を繰り返したり体調不良が慢性化したりしている場合は、根本的に体質を改善し、体質強化を図ることが重要となります」

「それを漢方薬でするということですね」

「漢方薬は体質改善の薬です。免疫力を高めたり、血行を改善したり、あるいは内臓機能を修復したりすることにより、少しずつペットを元気な状態に近づけていくことができます。あまり知られていませんが、ペットの根本的な体質改善・体質強化に漢方薬は効果的ですよ」

 先生のところに相談にくるペットの病気は多種多様で、皮膚の病気や胃腸の不調だけでなく、目や耳の病気、心臓や泌尿器、鼻や咳の症状、それに乳腺症、ヘルニアなどの子もいるそうだ。食生活などの生活習慣や環境の変化、高齢化、ストレスの増加などに伴い、ペットのあいだでも、がんや糖尿病などの病気が増えているとのこと。ほんと、人間と変わらないわね。

 そんなわけで、チロロは気血の流れをさらさらにして(漢方道の必殺技③)、免疫力を補う(必殺技①)漢方薬をしばらく飲むこととなった。

 最初は、漢方薬をチロロが飲んでくれるかどうか心配だった。でも意外にもチロロは苦い漢方薬を飲んだ。道ばたの雑草と同じように、チロロのからだが漢方薬を欲しがっていたのかもしれない。

 結局数か月でチロロの体調はよくなった。おまけに肥満も改善されて元気いっぱいになった。漢方薬をやめて1年以上経つけれど、獣医さんのところには一度も行かないで済んでいる。

 ペロがチロロを守ってくれたのかもしれないな。

(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

「補う」・・・ 足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
「捨てる」 ・・・体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
「サラサラ流す」 ・・・漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
「バランスを調える」・・・内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス - 漢方の得意技はバランスの調整にあり。

自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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