たるみ
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
美容・美肌漢方・・・肌の「たるみ」を漢方で解き明かす
当薬局では「たるみを取り、肌を引き締めたい」など、美容・美肌を目的とした漢方のご相談もお受けしています。
長年、生きていると、顔の皮膚も重力に逆らいきれず、下へ下へとさがってきます。これが肌のたるみです。
若いころは、皮膚がしっかりと皮下組織とくっついていますので、たるみはありませんでした。しかし年齢を重ねるうちにその結合力が弱くなり、たるみが生じます。自然現象ですので、ある程度は仕方のないことだと思います。
皮膚は、真皮がその下の脂肪層や筋肉などの皮下組織と結合して維持されています。しかし皮膚を支えている脂肪層や筋肉は、20~30歳ごろから衰え始めます。真皮が皮下組織と結合する力も弱くなります。そうするとお肌が重力によって垂れ下がり、たるみになります。肌の乾燥も影響します。
漢方薬は、皮膚を活性化させることにより、加齢による真皮の衰えを防ぎます。同時に筋肉や脂肪層などの皮下組織にも活力を与えます。血行やリンパの流れを改善することにより、余分な脂肪の排泄も促進できます。漢方薬は、からだの内側から改善していく薬です。
漢方薬でたるみを目立たなくするには、ある程度、時間がかかります。しかし健康維持や美容のために漢方を飲み続けるうちに、あるいは他の病気の治療で漢方薬を服用しているうちに、「顔が引き締まってきたように思う」「お肌が若々しくなったわね、と人から言われるようになった」という方がいらっしゃいます。
逆に、とにかくすぐにたるみを取りたいという方は、漢方より、美容整形・美容外科・美容皮膚科で手術や皮下注入をするのがいいでしょう。手術では、余分な脂肪を除去したり、たるんだ皮膚を切り取ったり引き上げたりしてくれます。皮下注入では、真皮にコラーゲンなどを直接注入してシワをのばす要領で、たるみを目立たなくさせます。いずれも即効性があります。(ただし肌質や皮下組織が根本的によくなるわけではありません。皮下注入の場合、人工的に注入したコラーゲンや薬剤は数か月間持続したのち効果がなくなり、肌は元の状態に戻ります。)
漢方薬は、あくまでも体質を改善して肌質を改善し、たるみが目立たない肌、今後たるみができにくい肌を作るものです。美容外科のようにたるみを完全になくすことは困難ですが、美容整形やトリートメント、エステなどと併用している方もいらっしゃいます。漢方薬は、からだの内側からじっくり根本的に美しくなりたいとお考えの方に適しています。
美容・美肌によく使われる漢方薬
1:年齢とともに衰える筋肉などの皮下組織を活性化させて若々しさを保ちたい場合は、五味子、麦門冬など、皮下組織に活力を与える生薬を使った漢方薬を用います。
2:加齢による肌質の衰えが心配な方は、黄耆、甘草など、皮膚組織の機能を高める生薬を用いた漢方処方が適しています。
3:肌にたまった老廃物を捨て去りたい場合は、茯苓、白朮など、リンパの流れを良くする生薬などを配合した漢方薬がいいでしょう。
4:血行を改善して皮膚に豊かな栄養を送り込みたい場合は、芍薬、牡丹皮など、血行を促進する生薬配合の漢方処方を使います。
5:肌の乾燥が気になる方は、当帰、地黄など、肌を潤す薬効のある生薬を使った漢方処方がよろしいでしょう。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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