夏バテ・熱中症

夏バテ・熱中症をもたらす邪気・・・「暑邪」

夏の蒸し暑さが続くと、体のだるさや疲れ、食欲不振など、夏ばての症状が生じます。長期化すると、下痢、めまい、頭痛などの症状も起こります。

暑い夏に適度な冷房で暑さをしのぐことは大切ですが、過度に冷房すると室内外の温度差が大きくなり、自律神経系が失調し、体調不良に陥ります。冷たい飲食物で症状を和らげることもできますが、取り過ぎると胃腸機能が低下します。さらに心臓にも負担が掛かるようになって動悸や息切れが起こり、夏ばてはますます悪化します。体の抵抗力が低下していると、厳しい暑さに耐え切れず、熱中症になることも少なくありません。

夏ばては元来、夏の盛りから夏の終わりにかけて、夏の疲れがたまった時期によく見られる症状でした。しかし今では、冷房の使い過ぎや、体力の低下、運動不足、異常気象など気候の変化の影響により、6月や7月など夏の前半から夏ばてする人も増えています。

私たちは、自然界の生き物、いわばナマモノです。従って自然界の環境の影響を大いに受けます。例えば、空気が乾燥する秋には皮膚や喉も乾燥しますし、寒い冬には手足も冷えます。そして夏には、暑さと湿度の影響を受けます。

このような体調に影響を与える自然界の要因を、中医学では六気(ろっき)と呼んでいます。風・寒・湿・熱(火)・暑・燥の6つです。人は、この六気の中で暮らしており、体内にも六気は存在します。

例えば暑いときには汗をかいて体温を下げるなどして環境に順応するといったように、私たちは普段、六気の中で上手に暮らしています。しかし、これら自然界の要因が強くなり過ぎると、人に体調不良を引き起こします。これまでおとなしかった六気が病邪(六淫[ろくいん])と化し、健康を揺るがす原因になるのです。夏の蒸し暑さで体調を崩す場合は、六淫の1つ、「暑邪(しょじゃ)」がその原因です。

暑邪の特徴は、夏の暑さによる過剰な熱(熱邪)です。多湿な気候による過剰な湿気(湿邪)を伴うことが多いのが特徴です。

まず熱邪により、発熱、充血、炎症、口渇、さらに、いらいら、不眠、多汗などの症状が表れます。炎熱の気候の影響で、発汗による体液(津液[しんえき])と気の消耗が生じます。さらに湿邪の体内への侵入により、重だるい、むくみ、胃腸機能の低下などの症状も生じます。これらの症状を夏の暑い時期に生じさせるのが、暑邪です。

漢方では、この暑邪を体内から除去したり、暑邪によって生じた証を治療したりすることにより、夏ばてを解消していきます。

夏バテ・熱中症の4つのタイプ

夏バテ・熱中症の証には、以下のようなものがあります。

まずは、夏の暑さで汗をだらだらかいて疲れが取れない状態となる「気陰両虚(きいんりょうきょ)」証です。発汗により、体に必要なエネルギー(気)と体液(陰液)を消耗している状態です。気が失われると体表が緩み、過剰に汗が出るようになります。大量の発汗で体液を消耗すると、さらに気が失われます。このような相互作用で、汗とともに元気も流れ出てしまうような状態が、気陰両虚です。陰液が不足すると、熱を冷ます機能が弱まり、夏の暑さの影響をますます強く受けることになります。こうして気と陰液を同時に消耗していくと、夏バテの重症化や長期化を招きます。体温の上昇とともに、体内の水分や塩分の減少、さらに脳への血流の不足が生じると、熱中症になります。気と陰液を同時に補う漢方薬で、夏バテ・熱中症を治療します。

夏ばてがひどくなり、動悸や息切れが生じるようになると、「心気陰両虚(しんきいんりょうきょ)」証です。心(しん)は五臓の1つで、心臓を含めた血液循環系(血脈)をつかさどり、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志[しんし])をつかさどる臓腑です。漢方には「夏は心をつかさどる」という言葉があり、夏ばてがひどくなると五臓の心に負担が掛かってこの証となり、動悸や息切れが生じます。心の気と陰液を補う漢方薬で、夏バテ・熱中症を治します。

熱中症で高熱が出るようなら、「気分熱盛(きぶんねつせい)」証です。これは、病邪が人体に侵入するときに発生する熱証(外感熱病)のうち、病邪と正気(人体の抵抗力)の戦いが激烈な段階です。高熱、発汗、口渇、顔面紅潮などの症状が表れます。熱を冷まし、津液を補う漢方薬で対処します。

夏ばてで食欲不振など胃腸障害が生じているようなら、「湿困脾胃(しつこんひい)」証です。飲食物は、六腑の1つである胃に受け入れられ(受納)、消化され(腐熟)、さらに人体に有用な形(清)に変化し、脾に渡されます。脾は、清を吸収して肺に持ち上げ(昇清)、気・血・津液を生成し、全身に輸送します(運化)。これら脾胃が正常に機能していると、飲食物が停滞することなくどんどん運化されますので、脾は乾燥しています。ところがここに湿邪が過剰に侵入すると、脾の機能が阻害され、運化が円滑に行われなくなり、この証になります。食欲不振のほか、腹部膨満感や吐き気を伴います。漢方薬で脾胃の湿邪を除去することにより、夏バテを治します。

夏バテ・熱中症の症例と漢方処方

■症例1「夏の暑さにやられたようで、くたくたです。毎日、大量の汗をかき、喉が渇いて水ばかり飲んでいます。先日は、立って歩くのもやっとという状態になり、あぶら汗が出てきたので会社を早退しました」

体がほてり、めまいがします。会社を早退した日は熱中症と診断され、病院で点滴を打ってもらい楽になりましたが、真夏日が続くと似たような症状が出ます。舌は赤く乾燥しており、舌苔はほとんど付いていません。

この人の証は、「気陰両虚」です。発汗により、エネルギー(気)と体液(陰液)を消耗し、この証になります。陰液が不足すると、熱を冷ます機能が弱まり、夏の暑さの影響をますます強く受けることになります。倦怠感、口渇、ほてり、赤く乾燥した舌、少ない舌苔などは、この証の特徴です。発熱を伴う場合もあります。

この証の人に対しては、気と陰液を補う漢方薬で、夏バテ・熱中症を治します。代表的な処方は、麦門冬湯(ばくもんどうとう)です。この人も麦門冬湯を服用し、3日後には、かなり楽になりました。猛暑が続いたため、夏の間は同じ処方を服用し続け、元気に夏を過ごすことができました。

夏ばバテがひどくなり、動悸や息切れも生じるようなら、「心気陰両虚(しんきいんりょうきょ)」証です。炙甘草湯(しゃかんぞうとう)などが有効です。

■症例2「熱帯夜が続き、夏ばて気味です。体が重だるく、食欲がありません」

札幌から大阪に転勤してきました。夏の蒸し暑さが、体にこたえます。便が軟らかめで、よく下痢をします。痩せてきたのではないかと家族も心配しています。舌には白い舌苔がべっとりと付着しています。

この患者さんの証は、「湿困脾胃(しつこんひい)」です。五臓六腑の脾胃に湿邪が過剰に侵入してきて脾胃の機能が阻害され、脾の運化機能が低下し、この証になります。腹部膨満感や吐き気、口内の粘り感、味覚の衰えなどの症状を伴うこともあります。

この体質の場合は、漢方薬で脾胃から湿邪を取り除き、夏バテを解消します。代表的な処方は藿香正気散(かっこうしょうきさん)です。この人は服用を始めて1週間ほどで胃腸の調子が回復し、元気になりました。

むくみも伴うようなら、胃苓湯(いれいとう)や五苓散(ごれいさん)を使います。

だるい、立ちくらみなどの症状が強いなら、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を使います。冷たいものの取り過ぎで胃腸が冷えて弱っているようなら、人参湯(にんじんとう)が良いでしょう。

胃腸機能を高めておくことは、厳しい夏を元気に過ごすための基本です。夏バテしやすい人は、日ごろからこれらの処方を服用しておくと、夏ばての予防にもなります。

■症例3「熱中症になりました。38℃以上の高熱が出ています」

喉や口が渇き、冷たいものばかり飲みたくなります。舌は赤く乾燥しており、舌苔も黄色く乾燥しています。

この人の証は、「気分熱盛(きぶんねつせい)」です。病邪が人体に侵入するときに発生する熱証(外感熱病[がいかんねつびょう])のうち、病邪と正気(人体の抵抗力)の戦いが激烈な段階です。高熱、口渇、冷たいものを飲みたがる、赤く乾燥した舌、黄色く乾燥した舌苔などは、この証の特徴です。発汗、顔面紅潮などの症状を伴う場合もあります。

この証の人に対しては、熱を冷まし、津液を補う漢方薬で対処します。処方は、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)が良いでしょう。この人は、服用翌日には熱が下がりました。

熱が下がった後も体力を消耗したままで汗をかく人、あるいは、日ごろから暑さに弱く、汗をだらだらかく人には、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を使います。


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一日中エアコンのよく利いたオフィスにいるために、冷えや肩凝り、倦怠感が生じる「冷房病」になる人も多いでしょう。そういう場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などで体を温めて体調を整えます。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

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自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

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