線維筋痛症(症例)
(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら)
症例1
「3年前に線維筋痛症になりました。混んでいる電車の中などで、まわりの人と当たるたびに痛みが走ります」
長袖シャツが肌に触れても痛みます。関節より筋肉が痛みます。仰向けに寝ると痛みが増すので、寝ているあいだに自分の体重で痛みが生じて目が覚めてしまうことも多く、ぐっすり眠れません。頭痛もあります。刺されるような痛みです。肩こりも慢性的にあります。舌は紫色を帯び、瘀斑がみられます。
この人の証は、「血瘀(けつお)」です。血の流れが鬱滞しやすい体質です。刺痛、肩こり、紫色の舌、瘀斑などは、この証の特徴です。
この証の場合は、血の流れを促進する漢方薬で血瘀を除去し、線維筋痛症の治療をします。この患者さんには、折衝飲(せっしょういん)などを服用してもらいました。3か月後、混んだ電車に乗って人と当たっても痛みが以前ほどひどく感じなくなってきました。5か月後、長袖シャツを着ても痛まないくらいにまでなりました。8か月後、痛みで目覚めることがなくなり、ぐっすり眠れるようになりました。
症例2
「線維筋痛症です。全身が痛く、朝はひとりで起きられず、家族に抱きかかえて起こしてもらっています。動いているうちに痛みは軽くなります」
同じ姿勢でいると痛みが増します。肘を曲げ伸ばしするなどすると、楽になります。湿度が高い日は、全身の痛みに加え、頭痛、だるさが増し、筆圧や握力が低下します。乾燥した晴れた日は、痛みが軽くなります。むくみがあります。舌は淡紅色で、湿った白い舌苔が付着しています。
この患者さんは、「寒湿痺(かんしつひ)」証です。寒湿邪が停滞して血行を阻害し、痛みを生じています。
この体質の場合は、寒湿邪を除去する漢方薬を用い、線維筋痛症の治療を進めます。この患者さんには、桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)などを服用してもらいました。3か月後、痛みが軽くなってきました。むくみが減ってきました。朝ひとりで起きられる日が増えてきました。6か月後、湿度が高い日でも頭痛をすることがなくなりました。10か月後、毎年一番つらくなる梅雨の時期を元気で乗り越えることができました。
症例3
「全身が痛みます。何軒か病院を回りましたが原因がわからず、最終的に線維筋痛症と診断されました。血管にも痛みを感じます。食後など血流がよくなると、痛みが増悪します」
両目の奥も痛みます。ノイロトロピンなどを処方されていますが、あまり効果がありません。音や光に過敏に反応するようになりました。気分が落ち込みます。夜なかなか眠れません。舌は紅く、舌下静脈がやや怒張しています。
この患者さんの証は、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」です。からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる機能を持つ五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。目の奥の痛み、音や光に過敏、落ち込み、不眠などは、この証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、線維筋痛症を治していきます。この患者さんには、四逆散(しぎゃくさん)などを服用してもらいました。2か月後、目の奥の痛みが和らいできました。5か月後、血管の痛みも軽くなってきました。夜の寝つきもよくなってきました。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆しました。日経DIオンラインにも掲載)
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