線維筋痛症

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  • 線維筋痛症とは

線維筋痛症は、全身に激しい痛みが生じる疾患です。筋肉、関節などに疼痛が生じ、痛みが体幹、四肢など全身に広がります。男性よりも女性に多くみられます。以前は非関節性リウマチ、心因性リウマチなどと呼ばれていました。

  • 症状

全身の慢性疼痛に加えて、疲労倦怠感、手指などのこわばりや腫脹、四肢のしびれ、ふるえ、微熱、睡眠障害、うつ状態などの症状もみられます。

  • 原因

脳の機能障害が原因とも考えられていますが、明らかな原因は不明です。血液検査やCT、MRIなど、一般的な検査をしても異常はみつからないようです。

  • 治療

痛みを薬で対症療法的にコントロールしたい場合は西洋医学、根本的に体質から改善していきたい場合は漢方が適しています。

西洋医学での治療には、プレガバリン(商品名リリカ)などの神経障害性疼痛治療薬、抗てんかん薬や、デュロキセチン(同サインバルタ)などの抗うつ薬、オピオイドなどが使われます。散歩や、体操、ヨガ、有酸素運動、ストレッチなどの運動療法も行われます。痛みで眠れない場合は睡眠導入剤が使われることもあります。一般的な非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などは効果が認められないケースがあります。

  • 漢方治療

漢方では、痛みは気・血(けつ)・津液(しんえき)など人体の構成成分の「流れ」や「量」と深い関係にあると捉えています。気は生命エネルギーに近い概念、血は全身を滋養する血液や栄養、津液は体内の水液を指します。

まず流れについては、中医学に「不通則痛(ふつうそくつう)」という言葉があります。「通じざれば、すなわち痛む」と読みます。体内での気・血・津液の流れがスムーズでないと痛みが生じる、という意味です。

量については、「不栄則痛(ふえいそくつう)」という原則があります。「栄えざれば、すなわち痛む」と読みます。人体にとって必要な気・血・津液が不足すると痛みが生じる、という意味です。栄養や潤いがじゅうぶん供給されないと、その部分が正常に機能できず、痛みが生じます。

漢方では、これら気・血・津液の流れや量をととのえることにより、線維筋痛症の治療を進めます。以下に、線維筋痛症にみられることの多い証(しょう)と漢方薬を紹介します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者ひとりひとりの証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

  • ①血瘀

血の流れがスムーズでない場合は、「血瘀(けつお)」証です。血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。血管の微小循環障害や、流動性の異常、精神的ストレス、寒冷などの生活環境、寒冷刺激、不適切な食生活、運動不足、水液の停滞、生理機能の低下などにより、この証になります。疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になることもあります。折衝飲(せっしょういん)など、血の流れを促進する漢方薬で血瘀を除去し、線維筋痛症の治療をします。

  • ②寒湿痺

津液の流れがスムーズでない場合によくみられるのは、「寒湿痺(かんしつひ)」証です。寒湿邪が停滞して血行を阻害し、痛みを生じます。痺証は、経絡が風寒湿邪などの病邪によって塞がれて閉じ、気血の流れが妨げられ、筋肉や関節の疼痛やしびれ、運動障害が表れる証です。寒湿邪は、体内に滞留する寒邪と湿邪が結合した病邪です。寒邪は気血を凝滞させやすいため、固定性の激しい疼痛が生じます。梅雨などの湿度の高い季節や環境、低気圧の接近、寒い日や冷房の効いた場所などの冷えた環境などで症状が悪化します。朝起きたときなど動き始めるときに痛むのも特徴です。お風呂に入るなど、温めると痛みが軽減します。桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)など、寒湿邪を除去する漢方薬を使い、線維筋痛症の治療をします。

  • ③肝鬱気滞

気の流れがスムーズでない場合は、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。肝は自律神経系と関係が深い臓腑です。一般に、精神的なストレスや、緊張の持続などにより、この証になります。四逆散(しぎゃくさん)など、漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、ストレスに対する抵抗性を高め、線維筋痛症を治していきます。

  • ④血虚

血の量が不足している場合は、「血虚(けっきょ)」証です。血は人体の構成成分のひとつで、血液や、血液が運ぶ栄養という意味があります。この血の量が欠乏している状態が、血虚です。「不栄則痛」で痛みが生じます。痺証は、基本的に気血が不足して経絡が空虚になっているときに生じやすい証です。血虚は偏食など無神経な食生活、胃腸機能の低下、出血、慢性疾患などにより生じます。四物湯(しもつとう)など、血を補う漢方薬で、線維筋痛症を治療します。

  • ⑤熱痺

患部に熱感があり、温まると痛みが増悪するような場合は、「熱痺(ねっぴ)」証です。熱邪による痺証です。熱邪が強いため、熱感などの熱証があらわれます。痛みは冷やすと軽減します。白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)など、熱邪を除去する漢方薬で、線維筋痛症を治療します。

 

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆者紹介*

幸井俊高  (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラム好評連載中。

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