気管支炎(症例)
(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら)
症例1
「慢性気管支炎です。咳が繰り返し出るほかに、痰がたくさん出ます。痰はやや粘り気があります」
咳や痰のせいもあり、眠りが浅く、よく夢を見ます。胸苦しいときもあり、夜は、不安を感じることや動悸が強くなります。舌にはべっとりとした、やや黄色い舌苔が付着しています。
この人の証は、「痰飲(たんいん)」証です。痰飲が咳嗽や痰となって表れ、気管支炎になったのでしょう。咳を繰り返す、痰の量が多い、眠りが浅い、不安感、動悸、べっとりとした舌苔などは、この証の特徴です。
この証の場合は、痰飲を取り除く漢方薬を用い、気管支炎の治療にあたります。この患者さんには、温胆湯(うんたんとう)を服用してもらいました。2か月後、痰がだいぶ減りました。5か月後、咳も減り、夜ぐっすり眠れるようになりました。
症例2
「閉経が近づいているようで、ずっと安定していた月経がやや乱れ始め、不眠、いらいら、ホットフラッシュなどの更年期障害の症状が少し表れてきました。でも一番つらいのは、空咳です。ときに激しく咳き込み、痰に血が混じることもあります」
痰は少なく、粘稠です。咳のせいで声が枯れています。病院で気管支炎と診断されました。舌は紅く、舌苔はあまり付着していません。
この患者さんは、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。更年期に自律神経系が不安定になり、自律神経の失調が気管支に及び、気管支炎になったのでしょう。
この体質の場合は、肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにする漢方薬を用い、気管支炎の治療を進めます。この患者さんには、滋陰至宝湯(じいんしほうとう)を服用してもらいました。2週間後、空咳がだいぶ減りました。1か月後、咳き込むことがほとんどなくなりました。2か月後、気がつけば、いらいらやホットフラッシュもずいぶん軽くなりました。
症例3
「70歳を過ぎてから、咳がよく出るようになりました。とくに夜間、布団に入るとよく出て、なかなか止まりません」
咳は乾いた咳で、痰は少なく、切れにくく、不快です。咳のせいで喉が痛むので病院で診てもらったところ、慢性気管支炎と診断されました。最近は激しく咳き込むことも増え、つらいです。疲れやすくなりました。舌は紅く乾燥しており、舌苔が付着しておらず、鏡面舌を呈しています。
この患者さんの証は、「肺陰虚(はいいんきょ)」です。五臓の肺の陰液(肺陰)が不足している体質です。陰液の不足により相対的に熱が余って熱邪(虚熱)となり、炎症を生じ、気管支炎になったのでしょう。空咳、痰が少なく切れにくい、鏡面舌などは、この証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で肺の陰液を補い、気管支炎を治していきます。この患者さんには、滋陰降火湯(じいんこうかとう)を服用してもらいました。1か月後、痰が切れやすくなりました。それだけでも楽です。4か月後、激しく咳き込むことが減り、喉が痛むことがなくなりました。10か月後、咳はほとんどでなくなりました。おかげで夜ぐっすり眠れるようになりました。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆しました。日経DIオンラインにも掲載)
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