天気痛(症例)

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

漢方薬で「天気に左右されない体質」づくり − 天気痛の漢方治療の成功例

こちらは、天気痛を漢方で治療した症例を紹介するページです。漢方では、血(けつ)や津液(しんえき)の流れをスムーズにし、「天気に左右されない体質」を作っていくことにより、天気痛の根本的な治療を進めます。このページでは、いくつかの成功例を紹介します。

漢方では、患者一人一人の証(しょう)に合わせて、処方を判断します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら

症例1 雨が降る前の頭痛を完治

「天気痛です。雨が降る前に、頭が痛くなります。同時に眠気が強くなり、めまいがすることもあります」

疲れやすく、あまり元気のないほうです。天気痛のときは、食欲も減退します。舌は白く、表面に白い舌苔がべっとりと付着しています。

この人の証は、「水湿(すいしつ)」です。過剰な水分が体内に滞っている状態です。水湿によりリンパ液が内耳に停滞すると、天気痛が生じます。めまい、白い舌、べっとりとした白い舌苔などは、この証の特徴です。

この証の場合は、水湿を取り除く漢方薬を用い、治療を進めます。この患者さんには、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)を服用してもらいました。服用を始めて1か月後、痛みが軽くなってきました。2か月後、めまいは完全になくなりました。4か月後、天気痛が起こることはほとんどなくなりました。体調がいいので漢方を飲み続けているうちに疲れにくくなり、すっかり元気になりました。

眠気、疲れやすい、元気がない、食欲不振など、脾気虚(ひききょ)の症状がなければ、五苓散(ごれいさん)などを用います。

症例2 気圧の変動による頭痛、肩こり、関節痛が消えた

「天気の変化に敏感で、雨が降ることが前もってわかります。とくに気圧が下がるときに頭痛、強い肩こり、関節の痛みが生じます」

耳鳴りや、心煩(落ち着かない不安感)も起こります。飛行機や新幹線に乗ったときには耳が痛くなります。ストレスが強いときに、症状が強く出ます。舌は紅く、べっとりとした舌苔が付着しています。

この患者さんの証は、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」です。ストレスの影響などで肝陽とともに痰飲が上昇して内耳に停滞し、天気痛になったのでしょう。

この体質の場合は、肝陰を補い、肝陽を鎮める漢方薬を用い、治療を進めます。この患者さんには、釣藤散(ちょうとうさん)を服用してもらいました。2か月後、低気圧の接近は相変わらず前もってわかりますが、頭痛や肩こりなどの症状が緩和されてきました。6か月後には、天候の変化で体調を崩すことがほとんどなくなりました。飛行機や新幹線に乗っても大丈夫です。

顔色がよくない、動悸など、血虚(けっきょ)による症状もみられるようなら、抑肝散(よくかんさん)などを使います。

症例3 月経前後に特につらかった天気痛が治った

「天気痛です。天気が崩れる前の日に、頭痛や腰痛が生じます。とくに月経前後に症状が強く出ます」

月経前後には、エレベーターの昇降時にも頭や腰が痛み、めまいや耳鳴りも生じます。舌は深紅色で、舌苔はほとんど付着していません。

この患者さんの証は、「腎陰虚(じんいんきょ)」です。月経周期に生じるホルモンバランスの変化が自律神経の働きを過敏にし、その影響で天気痛が起きているようです。めまい、耳鳴り、深紅色の舌、ほとんどみられない舌苔などは、この証の特徴です。

この証の場合は、漢方薬で腎陰を補い、天気痛を治します。この患者さんには、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)を服用してもらいました。3か月後、天気痛が軽くなってきました。5か月後、めまい、耳鳴りはほとんどなくなりました。8か月後、頭痛、腰痛もなくなり、重かった月経痛もとても軽くなりました。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

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