乾癬の治療は体の中から・皮膚は内臓の鏡
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、乾癬の悩みを漢方で解決したOLの物語です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■ストレスや乾燥で悪化する皮膚トラブル■■
「めずらしいね、古典文学なんか読んで」
翔太は、奈緒子の読んでいる文庫本を覗き込みながら、そう言った。
「そうなのよ。人格を高めようと思って」
「人格? 急にどうしたの?」
ふたりは、奈緒子が住むマンションのダイニングテーブルで、のんびりくつろいでいた。
「じつは、この前、会社でセミナーがあったのよ」と奈緒子が話し始めた。
奈緒子は自動車販売会社に勤めている。セミナーの講師は、2年連続でトップセールスを勝ち取った上司。女性である。ばりばりの営業ウーマンという印象はなく、どちらかというと童顔で、いつもニコニコしていて親しみやすい。その女性が、だれよりも多く自動車を売る。
その上司がセミナーで言うには、顧客はいま"何を買うか"より"だれから買うか"を求めているという。インターネットで簡単に調べられる程度の情報には、顧客は価値を感じない。顧客は、自分たちで入手可能な情報を提供する営業マンより、人間的に信頼できる営業マンから商品を購入する。
顧客は、話をよく聞いてくれる人、要望にしっかりと応えてくれる人、人柄のいい人から商品やサービスを購入したいと思っている。高額な商品やサービスほど、信頼して長く付き合える営業マンから買いたいと顧客は考える。
セミナーの講師は最後に、「結局いちばん大切なのは、顧客との信頼関係だと思います。みなさんも商品知識だけでなく、人格やコミュニケーション能力を高めて、顧客に頼られる営業マン、営業ウーマンになってくださいね」と笑顔で話して講演を終えた、と奈緒子は言った。
「それで質疑応答のときに、人格を高めるにはどういう勉強をすればいいですか、という質問が出て、専門書以外にも古典文学なども読むといいわよ、と上司が答えたのよ」
「それで、めずらしく古典文学を読んでいるんだね」
「めずらしく、は余計よ」
奈緒子と翔太は大学のゼミで学生が二人きりだったこともあり、親しく付き合っている。でも恋人同士というわけではない。
翔太は奈緒子のことを気楽な友だちくらいのつもりで付き合っているようだ。奈緒子も翔太のことを女友だちの延長くらいのつもりでいる。翔太が自宅に遊びに来ても、ろくに化粧もしない。
「それより、おなかすいた。なんか食べようよ」
「うるさいわね。彼氏でもないくせに」
奈緒子はそう言って、台所に向かった。きょうは翔太の好きな肉じゃがを作るつもりでいる。
台所でじゃが芋の皮をむきながら、奈緒子が翔太に話しかけた。
「そういえば、あした漢方薬局に行くの」
「漢方?」
「わたし高校生のころから乾癬という皮膚病にかかっていて、薬を塗っているの。さほどひどくないんだけど、ストレスや乾燥ですぐ悪化しちゃって、なかなか治らないのよ。一応、翔太も男だから恥ずかしくて言ってなかったんだけど、ほら」
調理の手を休めて、奈緒子が手を広げて翔太に見せた。爪はでこぼこして厚く白くなっており、手の甲も少し赤くごわごわしていた。
「ああ、知ってるよ」
「気にならないの?」
「別に。一応、奈緒子も女だし、早く治ればいいな、と思っているよ。漢方でよくなるといいね」
漢方は、友だちの麻衣が、「対症療法だけでなく、漢方でからだの中から改善すればどうかしら」と薦めてくれたのがきっかけだ。さっそく明日、行ってみる。
■■皮膚に現れる体質悪化を漢方で改善■■
漢方薬局では、最初に漢方の先生が、乾癬のことや、その他の体調について、詳しく聞いてきた。乾癬はストレスや乾燥で悪化することも話した。
ひととおりカウンセリングが終わったあとで、漢方の先生が話をした。
「皮膚のトラブルは、皮膚だけの問題ではありません。"皮膚は内臓の鏡"といわれるように、からだの中の不調が皮膚に現れてきます」
「からだの中の不調を漢方薬で改善して、皮膚のトラブルを治していくのですね」
「奈緒子さんの場合は、ストレスの影響を受けやすい、あるいは外気の乾燥に弱い、という敏感な体質を改善していけば、乾癬も少しずつ楽になっていくと思います」
奈緒子は、からだ全体のバランスを調えて(漢方道の必殺技④)、ストレスや環境変化に敏感すぎる体質を改善していく漢方薬を飲むことになった 。
「先生、それが乾癬に効く特効薬なのですか」
「漢方処方は、その人の体質によって違います。逆に、乾癬以外の皮膚トラブルでも、それがストレスや乾燥の影響で悪化しやすいならば、これと同様の漢方薬が効果的です」
からだの中を改善して皮膚トラブルを治すという漢方の考え方が少し分かったような気がした。奈緒子は続けて漢方の先生に質問した。
「先生、漢方薬はどこでお願いしても同じですか」
「同じ目的、たとえば富士山に登るという目的でも、御殿場口から登るか、あるいは吉田口から登るか、など道はいろいろあります。同じように漢方の場合も、たとえば奈緒子さんの乾癬の治療をするとき、まずストレスに弱いところから改善していくのか、それとも乾燥に敏感なところを改善していくのか、などと治療方針はさまざまです。どこで漢方薬を処方してもらうかによって、漢方薬は異なるでしょう。よく相談して、自分が納得のいくところで治療するのがいいと思います」
「この病気だからこの漢方薬、と簡単には決まらないのですね」
「"どの漢方薬を飲むか"というより、"だれの漢方薬を飲むか"ということが重要ですね」
奈緒子は先日のセミナーの話を思い出した。漢方の先生は、続けた。
「漢方は、ずっと同じ処方を飲んでもらうこともありますが、その人の体調の変化や体質の改善具合、あるいは季節の影響なども考慮して処方を変えることもあります。有名な先生に処方だけ決めてもらって、あとは別のところで調合してもらう、という人もいますが、結局、途中から薬が効かなくなるなどして、また戻ってくるようです」
「漢方は長く飲み続けることが多いので、信頼できる先生のお世話になるのがいいですね」
「知識を増やして経験を積むことも大事ですが、それらも含めて、患者さんとの信頼関係が重要だと思います」
漢方の先生は、また奈緒子の上司と同じようなことを言った。
■■大切なのは信頼と安心■■
漢方薬を飲み始めて3か月、奈緒子の体調に変化が出てきている。
まず、手の爪がきれいになってきた。まだまだ厚くごわごわしているが、爪の根っこのあたりが、すっきりとふつうの爪になっている。手の甲や、肘、腰まわりの乾癬も、赤みが少し引いている。
きょうも気軽に遊びに来ている翔太にも、自分の手を見せつつ奈緒子は漢方治療の好調な経過を話して聞かせた。
「お、調子いいじゃない。よかったね」
嬉しそうに喜んでくれる翔太は、きょうもご飯を食べて帰るつもりだろう。久しぶりにまた翔太の好きな肉じゃがを作ってあげようと思った。
そのとき翔太が咳払いをひとつして、背筋を少し伸ばして言った。
「思ったんだけど、肉じゃがはもちろん好きだけど、"奈緒子の作った肉じゃが"が好きみたいなんだ、おれ」
はっとして翔太の顔を見た。ちょっと緊張して、ちょっと笑っている。
「"何が食べたい"よりも"だれが作った料理が食べたい"、だね」
男として意識していないつもりだったけど、自分も翔太のことが好きだったのかも、と奈緒子は思った。皮膚のトラブルが恥ずかしくて恋愛なんて自分にはあまり関係ないと思っていただけなのかもしれない。自動車販売も漢方薬も男と女も、みんな信頼と安心の関係なのね、きっと。
思わず翔太の首に思いっきり抱きついて、奈緒子は急いで台所に向かった。
(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)
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