仕事で気力消耗→体調不良続出→漢方で復活
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、仕事に疲弊し体調不良となったOLが漢方で復活した話です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■会社に元気を吸い取られ■■
狭き門をくぐりぬけて入社した外資系のコンサルティング会社では、想像以上にハードな仕事が待っていた。データの収集に統計の分析、資料の作成、社内でのディスカッション、上司からの深夜のフィードバック、翌朝のクライアントでのプレゼンテーションに向けての徹夜での資料の修正、といった毎日。ひどいときは早朝に帰宅し、ソファに倒れこんで仮眠程度の睡眠、そして熱いシャワーを浴びてクライアントの企画会議に出席する。
クライアントは外部の専門家としてわたしを見ている。期待されている重圧をひしひしと感じる。ろくに寝ていないからといって弱音は吐けない。だれでも思いつくような提案をしては笑われる。
会社の上司も厳しい。教科書的な分析の羅列資料ではOKがでない。
「クライアントからお金をもらっているんだから、ちゃんと満足してもらえる結論を出せ。やり直しだ」
徹夜で作った資料がそのまま戻されてくる。女性だからといって手加減はない。
こうして睡眠不足の毎日がすぎていく。徹夜の日もあれば早朝から会議の日もある。生活のリズムは乱れる。
食事をゆっくりとる余裕などない。朝はぎりぎりまで寝ていたいので、朝食はろくにとれない。昼も、ちょっとした空き時間に急いでコンビニ弁当をかきこむ毎日だ。夕食も深夜にずれ込むことも多い。
「おい依子、からだは大丈夫か」
この会社に転職してきて約半年があっという間にすぎた冬のある日、帰宅したわたしを深夜の冷え切った玄関で出迎えてくれた父が心配そうに聞いてきた。
「うん、大丈夫よ、お父さん」
「そうか、でも顔色が最近あまりよくないぞ。無理するなよ」
「ありがとう。たしかに無理していないとはいえないけど、好きで手に入れた仕事だから、がんばってみるわ」
このとき自分で「好きで手に入れた仕事」と言ってから、はっと思った。そういえば、転職したばかりのころのような情熱が薄らいでいる。あのころの気力ややる気が失われていた。まだ半年なのに、こんなことじゃいけないわ、とがんばろうと思っても、昼間から眠い日が多かった。
「それだけ働いているんだから、しょうがないわよ」
久しぶりに日曜日に一緒に食事をした友人の亜希子がそう言ってなぐさめてくれた。
「でも目の下にくまができているわよ、依子。あまり無理しないほうがいいわね」
亜希子に言われてあわてて鏡を見ると、目の下が少しくすんでいた。なんだか疲れた顔の自分がいた。
■■ストレスに負けて体調不良■■
そのころから体調はじわじわと悪化していった。会社には毎日かよっているが、からだが重く、きびきびと動くのがつらくなってきた。
肌荒れがひどくなり、皮膚がかさかさしてお化粧ののりがわるくなった。ずっときちっと来ていた生理が遅れるようになった。なんとなく、からだの中から元気が失われてきている感じがした。頭がぼうっとすることもときどきあった。
「おい、あの仕事、どうした?」
上司に指示されていた業務をすっかり忘れて怒られることが先日あった。こんなこと、転職したばかりのころには考えられなかったミスだ。仕事ができない女、と上司に思われていなければいいけれど。
ある日、鏡を見てびっくりした。少しくすんでいた程度だった目のくまが、はっきりくっきり黒ずんでいた。自分の顔が、ますます疲れきっているように見えた。父に心配をかけないように、濃いめの化粧で疲れた肌を隠すようになった。
わたしの体調不良はさらに続いた。
腰の冷えがひどくなった。いままで気がつかなかったけれど太ももを触ると冷たい。下半身全体が冷えている。お風呂に入っても温まらない。でも上半身は逆に熱っぽい感じで、とくに首から上はのぼせることが増えた。
精神面でも弱くなってきている気がした。やる気や気力がどうしようもなく弱くなった。集中力が続かず、些細なことでいらいらしやすくなった。
歩いているときに、めまいやふらつきを感じるようになった。昼間はくたくたで眠いのに、夜になると目がさえてなかなか寝つけない日が多くなった。
明らかに、からだの中のどこかでバランスが狂ってきている気がした。
ある日、横断歩道を歩いているときに激しいめまいに襲われて倒れそうなめにあい、危ない思いをした。心配になったので病院に行ってみた。
検査の結果、軽い貧血ぎみではあるものの、異常はない、とのことだった。めまいやふらつきは貧血のせいかもしれません、と医師に言われた。
「でも先生、のぼせやいらいら、腰の冷えや不眠は、何が原因なのですか?」
「検査の結果、とくに異常はありませんからねえ。疲れているんじゃないですか? ちょっとゆっくり休んでみてはどうですか?」
それができたら苦労はないわ。仕事をやめれば体調が改善するかもしれないことくらい、自分でわかっている。でも、それができないから困っているのに。
「依子も漢方薬を飲んでみたらどう?」
亜希子に相談したら、そんな答えが返ってきた。そういえば亜希子は漢方薬を飲んで、過剰にいらいらしやすかった体質を改善したことがあった。
とにかくこの気力減退とめまいだけでも治したい。わたしもさっそく亜希子が通っていた漢方薬局に相談にいった。
■■元気を補ってストレスに打ち克つ■■
漢方の先生に現在の気力低下やめまい、冷え、のぼせ、いらいらなどについて話をした。先生はわたしの話を聞いたあと、さらに転職して今の仕事についてからの体調の変化についてくわしく話すようにおっしゃった。そんなことが関係あるのかしら、と思ったが、これまでの体調悪化の経緯を話した。
「よくわかりました。病院へは行きましたか? なにか薬をもらいましたか?」
「いえ、病院には行って検査を受けましたが異常は見つからず、とくに薬も処方されていません」
「それで、会社を辞めたら治るって言われたんじゃないですか」
「そう、おっしゃるとおりです。そのように言われました」
「そうでしょうね。なぜならば西洋医学的には依子さんは病気ではないからです」
「こんなにつらいのに病気ではないというのは、どういうことですか?」
「検査をして異常が見つからなければ、西洋医学の場合、病名がつけられません。だから本人がつらくても、病気とは認められないのです」
「なんか、冷たいですね」
「漢方の場合は、検査結果だけではなく、その人の自覚症状を重視します。なにかつらい症状が自覚される場合、それは体内からの叫び声のようなものです。からだの中でそれまで安定していたバランスがくずれていると、なにか黄信号のようなものが現れて、それが症状として出てきます」
「わたしの場合は、どうなっているのですか」
「まず今の会社に転職をしてからの激務で“気”を急激に消耗し、やる気の減退や昼間の眠気が生じたようです。そして次に“血”も消耗し、肌荒れや生理不順、健忘などの症状が出てきたのでしょう。そしてとうとう“気”が上昇してしまい、のぼせやいらいら、めまいなどが生じたのでしょうね」
漢方の先生は、そのあともわたしの体質の変化について詳しく説明してくれた。すべて納得できる内容だった。
「つまり依子さんの場合は漢方薬で“気” や“血”を補うことで体質を改善していけば、元のような体調に戻っていきますよ(漢方道の必殺技①)」
その日から、わたしは眠くてふらふらの日も帰宅後に漢方薬を煎じて服用し続けた。亜希子に言われていたほど苦い味ではなく、少しずつだったけれど元気が補われてストレスに強くなっていく実感があった。
「お、以前のように仕事に対する気力が充実してきたな」
ある日、仕事の報告を済ませると、上司がうれしそうな顔でそう言った。
「部長、わたしが体調をくずしていたのをご存知だったのですか」
「当たり前だ。わたしにもちょうど君と同じくらいの娘がいる。社会人になったときにストレスで体調をくずしていたよ」
「そうだったのですか」
部長の顔が少しだけ、父の顔と重なったように見えた。懐の深い男性だけがもっている、長い視野でものごとをとらえることができる余裕を感じた。わたしはなんだかいろいろなものに守られて生きているように思った。
(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)
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