適応障害

適応障害に効く漢方薬

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

適応障害の漢方治療について解説します。一般には抗うつ薬や抗不安薬が処方されますが、再発したり完治しなかったりすることも多い病気です。漢方薬としては加味逍遙散などが使われることがあるようですが、これも体質が合わないと効きません。当薬局では、患者さん一人一人の体質に合わせて漢方薬を処方し、適応障害の根本治療を進めています。

*目次*
適応障害とは
症状
原因
一般的な治療
漢方薬による治療
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点

症例紹介ページもあります)

適応障害とは

適応障害は、ストレスに対してうまく適応しきれず、情緒面や行動面に症状が出現する状態です。環境の変化になじめず、あるいは人間関係などにうまく対応できず、心身のバランスを崩し、気分が落ち込んだり不安になったりし、社会生活にも支障をきたすようになります。

症状

よくみられる症状には、抑鬱、不安感、落ち込み、いらいら、怒りっぽい、焦燥感、緊張、集中力の低下、涙もろくなる、過度の心配、食欲不振、動悸、腹痛、多汗、めまい、手足の震えなどがあります。なかなか寝つけない、寝ている間に何度も目が覚める、早朝覚醒などの睡眠障害や、女性では月経不順もよくみられます。遅刻、欠勤、過度の飲酒、暴力、無謀な運転などが生じる場合もあります。一般にストレスから解放されると改善していくことが多いのですが、ストレスが持続する場合などは、適応障害が悪化して鬱病になることもあります。

原因

適応障害は、原因がはっきりしているのが特徴です。たとえば、転職、転勤、昇進、転校、進学、結婚、離婚、育児、被災、対人関係のトラブルなど、生活の中で起こるさまざまな変化や出来事が、ストレスを、そして適応障害を引き起こす原因になります。

一般的な治療

治療には、対症療法的に向精神薬を用いる治療や、心身のバランスをととのえてストレス耐性を高め、適応障害を治療していく方法があります。西洋医学では、対症療法的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などが用いられます。認知行動療法などの心理療法が行われることもあります。

漢方薬による治療

漢方では、漢方薬を用いて心身のバランスをととのえ、不安を和らげ、過緊張を鎮静させ、ストレス耐性を高めることにより、適応障害を治療していきます。漢方には「心身一如」という言葉があり、心と体の整体観(有機的なつながり)を重視します。漢方薬を用いて心身の健康を取り戻していくのが漢方治療の特徴です。

とくに適応障害と関係が深いのは、五臓の肝(かん)と心(しん)です。肝は、体の各種内臓機能を調節し、精神情緒を安定させます。心は、人間の意識や判断、思惟など、人間らしい高次の精神活動を遂行します。これら五臓の肝や心の機能がストレスの影響により失調したとき、適応障害が生じます。したがって漢方では、五臓の肝や心の失調を治療することにより、適応障害の治療を進めます。

症例紹介ページもあります)

よく使われる漢方薬

漢方では、患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決めます。同じ適応障害という病名でも、体質や病状が違えば効く漢方薬も異なります。一般には加味逍遙散などが使われることがあるようですが、だれにでも効くわけではありません。以下に、適応障害に使われることの多い漢方薬を、みられることの多い体質とともに紹介します。患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

  • ①柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散

抑うつ症状や落ち込み、緊張などの症状が強い場合は、漢方でいう「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という体質です。情緒を安定させる働きを持つ五臓の肝(かん)の機能がスムーズに働いていない体質です。強いストレスにより肝の機能が停滞することにより、適応障害が生じます。ささいなことが気になり、手足が震えたり、涙もろくなったりすることもあります。柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や抑肝散(よくかんさん)などの漢方薬で、肝の機能の停滞を和らげ、ストレス耐性を高め、適応障害を治していきます。

  • ②竜胆瀉肝湯、加味逍遙散

いらいら、怒りっぽい、なかなか寝つけない、などの症状が顕著なら、漢方でいう「肝火(かんか)」という体質です。精神的なストレスや緊張の持続の影響により、五臓の肝(かん)の機能が鬱滞して熱を帯びると、この体質になります。強いストレスの影響で自律神経が乱れ、いらいらなど熱の症状が強いタイプの適応障害が起こります。竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬で、肝の鬱結を和らげ、肝火を鎮め、適応障害を治療します。

  • ③酸棗仁湯、甘麦大棗湯、加味帰脾湯

不安感が強い、よく目が覚める、などの症状がみられるようなら、「心血虚(しんけっきょ)」という体質です。心(しん)は五臓のひとつで、意識や判断など、人間らしい高次の精神活動をつかさどる臓腑です。この心の機能がじゅうぶん養いきれていないのが、この体質です。ストレスにより心をじゅうぶん潤すことができなくなると、この体質になり、適応障害が起こります。酸棗仁湯(さんそうにんとう)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)などの漢方薬で心を潤し、適応障害の治療をします。

  • ④清心蓮子飲

焦燥感や動悸が強いようなら、「心火(しんか)」という体質です。過度の心労、思い悩み過ぎ、過労が続くことなどにより、五臓の心(しん)が過度の刺激を受けて亢進すると、この体質になります。ストレスにより心に負担がかかり、適応障害が生じます。清心蓮子飲(せいしんれんしいん)など、心火を冷ます漢方薬で、適応障害を治療します。

  • ⑤桂枝加竜骨牡蛎湯

集中力の低下がみられる場合は、「心気虚(しんききょ)」という体質です。心の機能が弱い体質です。ストレスによる考えすぎや心労の積み重ねにより心が弱まると、この体質になり、適応障害が起こります。動悸、不安感なども生じます。この体質の場合は、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などの漢方薬を用い、心の機能を補うことで、適応障害を治療します。

  • ⑥半夏厚朴湯

吐き気など、胃から上がってくるような症状がみられるようなら、漢方でいう「胃気上逆(いきじょうぎゃく)」という体質です。胃は六腑のひとつで、食べたもののうち人体に有用なものを吸収して持ち上げ(昇清)、残りのかすを下に降ろします(降濁)。この降濁機能が失調した状態が、この体質です。ストレスにより胃内の痰飲が胃から上逆することにより、吐き気などを伴う適応障害が生じます。半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など、胃の降逆機能を回復させる漢方薬で、適応障害を治します。

ほかにも適応障害にみられる体質はたくさんあります。体質が違えば薬も変わります。自分の体質を正確に判断するためには、漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることが、もっとも確実で安心です。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の体質を的確に判断し、その人に最適な漢方薬をオーダーメイドで処方しています。

予防/日常生活での注意点

日常生活では、休養をじゅうぶん取りましょう。とくに睡眠をしっかり取るのが大切です。また、趣味をもつなど、仕事や家庭、学校以外での人とのつながりの場を確保しましょう。職場に問題がある場合には、上司と相談して仕事のやり方や配置の転換を検討してもらうなど、ストレス環境を改善するのがいいでしょう。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI:ドラッグインフォメーション)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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