化学物質過敏症

西洋薬で治りにくい過敏症は、漢方で、敏感すぎる体質を「鈍感に」

化学物質過敏症は、ごく微量の化学物質の影響で体調不良を繰り返す病気です。
当薬局にて漢方治療のご相談が増えている病気の一つです。

*症例紹介ページは こちら

例えば次のようなケースです。

□ 衣類の柔軟剤の香りで息苦しくなる。
□ 制汗剤の香りでめまいがする。
□ 車やトイレ、衣類の消臭剤で頭が重くなったり、目がちくちくする。
□ 電車の中で隣に座った人の香水の香りで鼻水やくしゃみが止まらなくなったりする。
□ 農薬、自動車の排気ガス、住宅の建材や塗料や接着剤(シックハウス症候群)から放散される化学物質に反応して体調を崩す。

症状には、湿疹や蕁麻疹、目の痒み、目のかすみ、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、耳鳴り、不安感、頭痛、不眠、うつ状態、のぼせ、寝汗、吐き気、胸やけ、便秘、下痢、頻尿などがみられます。

原因:微量物質の毒性、アレルギー、嗅覚過敏が関与していると考えられています。

◆有効な治療薬が少ない西洋医学

化学物質過敏症に対して、西洋医学には有効な治療薬が少なく、原因とみられる化学物質をできるだけ浴びない、早めにその場を遠ざかる、こまめに換気する、適度な運動をする、ビタミンやミネラル類を十分取る、などの生活改善が治療の中心となっているようです。

◆漢方では「熱邪」を除去して「過敏反応しにくい体質」に変える

湿疹、蕁麻疹、目の痒み、鼻詰まり、不眠、のぼせなど、表れる症状には熱邪(ねつじゃ)に関連するものが多く、背景には、熱邪が発生しやすい体質があります。

熱邪は病気の原因(病因)の1つで、自然界の火熱により生じる現象に似た症状を引き起こす病邪です。

漢方薬で熱邪が生じている体質を改善して熱を冷ますと人体は、良い意味で“鈍感”になり、微量の化学物質に過敏に反応しなくなります。

熱邪には2つのタイプがあります。

実熱(じつねつ) 熱邪の勢いが盛んになって生じる
虚熱(きょねつ) 熱を冷ますのに必要とされる陰液が不足しているために(陰虚)、相対的に熱邪が強まって生じる

実熱の場合は熱邪を冷まし、虚熱の場合は陰液を補うことにより熱邪を治療するため、漢方では熱邪が実熱か虚熱かによって、処方を使い分けます。

化学物質過敏症は、微量の化学物質の影響で体調不良を繰り返すことや、嗅覚過敏が関与していることなどから、多くの場合、虚熱タイプ(陰虚)です。

◆化学物質過敏症によくあるタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>

(1) 「腎陰虚(じんいんきょ)」証

症状として、のぼせ、寝汗などの熱証がみられるようならこのタイプです。

は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。は陰液のことで、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精を指します。

この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。

加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによって腎陰が減って、この証になります。虚熱タイプです。便秘や頻尿がみられることもあります。

→ 腎陰を補う漢方薬を用います。


(2) 「心気陰両虚(しんきいんりょうきょ)」証

息苦しい、不安感、不眠、などの症状がみられる場合はこのタイプです。

は五臓の1つで、心臓を含めた血液循環系と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動をつかさどる臓腑です。大脳新皮質など高次の神経系と深く関係しています。

この心の機能(心気)と陰液(心陰)が不足している体質が、この証です。

過度の心労、思い悩み過ぎ、過労が続くと、心に負担がかかり、心気と心陰が消耗してこの証になります。

疲労倦怠感、動悸、息切れ、めまい、不安感、胸苦しい、多汗などの心気虚の症状や、不眠、不安感、のぼせ、手のひらや足の裏のほてり、口渇、焦燥感など心陰虚の症状がみられます。虚熱タイプです。

→ 心気と心陰を補う漢方薬を用います。


(3) 「肺陰虚(はいいんきょ)」証

湿疹や蕁麻疹、あるいは鼻詰まりが生じるようならこのタイプです。

は五臓の1つで、呼吸をつかさどる臓腑です。また皮膚と深い関係にあります。さらに鼻は肺と関連が深い器官です。

この肺の陰液(肺陰)が不足している体質が、この証です。アレルギーや嗅覚過敏と関係が深い証です。虚熱タイプです。

慢性疾患や炎症による津液の消耗などにより、この証になります。

→ 肺の陰液を補う漢方薬を用います。


(4) 「肝陰虚(かんいんきょ)」証

めまい、耳鳴り、頭重感、目の痒み、目のかすみ、目がちくちくする、などの症状がみられるなら、このタイプです。

は五臓の1つで、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。

この肝の陰液(肝陰)が不足している体質が、この証です。

慢性疾患や、ストレス、緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で陰液が消耗すると、この証になります。虚熱タイプです。

さらに肝陰の不足により肝の機能(肝陽)を抑制することができなくなると肝陽が上昇し、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」証になります。

上記の症状のほかに、頭痛、のぼせ、怒りっぽい、などもみられます。

→ 肝の陰液を補う漢方薬を用います。


(5) 「胃陰虚(いいんきょ)」証

吐き気、胸やけ、口の渇きなどの症状がみられるようならこのタイプです。

は六腑の1つで、飲食物を受け入れて消化し、人体にとって有用な物質へと変える機能を持つ腑です。さらに胃は、水穀の精微の残りかすを下方の小腸や大腸に下降させます。

西洋医学的には、胃のみならず、十二指腸、小腸なども、この六腑の胃に含まれます。そしてこの胃の陰液(胃陰)が不足している体質が、この証です。

陰液不足で乾燥するので口渇が生じ、口の中が粘つく、唾液が少ない、などの症状が表れます。陰液が少ないために相対的に熱が余り、乾嘔(からえずき)、口臭、胃の鈍痛なども生じます。

飲食物の消化が不調なので、おなかはすくけれども食べられない状態にもなります。虚熱タイプです。

→ 胃の陰液を補う漢方薬を用います。


(6) 「熱毒(ねつどく)」証

湿疹が赤く(紅斑)、あるいは化膿し(膿疱)、ときに熱感や疼痛を伴う、など強い熱証がみられるようならこのタイプです。

熱毒は、化膿性、あるいは激しい炎症に相当します。口の渇き、唇の乾燥、発熱、もやもやと落ち着かない不安感や不快感(煩躁)などの症状もみられます。実熱タイプです。

→ 熱毒を冷ます漢方薬を用います。


◆化学物質過敏症に効果的な漢方薬

六味地黄丸、知柏地黄丸、杞菊地黄丸、炙甘草湯、麦味地黄丸、麦門冬湯、黄連解毒湯

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あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。

自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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