新型コロナ後遺症・ワクチンの副反応
新型コロナ後遺症やワクチンの副反応に効く漢方薬
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
新型コロナ後遺症ならびに新型コロナワクチンの副反応に対する漢方治療について解説します。新型コロナの罹患やワクチン接種のあと、倦怠感や微熱、味覚障害などの症状が長引く人は少なくありません。人参養栄湯などの漢方薬が使われることもあるようですが、これも体質が合わないと効きません。当薬局では、患者さん一人一人の体質に合わせて漢方薬を処方し、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応の根本治療を進めています。
*目次*
新型コロナ後遺症とは
症状
原因
一般的な治療
漢方薬による治療
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点
(症例紹介ページもあります)
新型コロナ後遺症とは

新型コロナ後遺症、つまり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後に症状が長引く状態に悩む人が少なからずいます。新型コロナワクチンの副反応が長引く人もいます。なかなか改善がみられず、漢方治療を希望する人も多いのが実情です。このコラムでは、新型コロナ後遺症や新型コロナワクチンの副反応に対する漢方の考え方や、よく使われる漢方薬を紹介します。
症状
よくみられる症状は、疲労倦怠感、思考力や集中力の低下および記憶障害(ブレインフォグ:brain fog)、抑うつ、微熱、筋力低下、関節痛(関節リウマチも含む)、筋肉痛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害、咳、痰、後鼻漏、上咽頭炎、息苦しさ、息切れ、胸痛、しびれ、睡眠障害、脱毛など、多岐にわたります。
ワクチンはウイルスの病原性を弱めたもの、あるいは毒性をなくしたものです。したがってワクチンの接種により、感染した場合と同じような副反応(炎症、アレルギーなど)が生じる可能性があります。
原因
原因としては、新型コロナウイルスの感染やワクチン接種による肺や血管などの障害、自律神経や中枢神経の障害、罹患時のストレスなどが考えられていますが、現在のところ不明な点が多く、わからないことが多いようです。
一般的な治療
治療には、顕在化している症状を薬物療法によって抑制する対症療法や、症状の元にある心身バランスの失調や、ウイルスやワクチンによるダメージからの回復を促す方法などがあります。西洋医学では、おもに各症状に応じた対症療法が行われます。鎮痛薬や、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、鎮咳薬、去痰薬などが用いられることが多いようです。
漢方薬による治療
漢方では、ウイルスやワクチンによるダメージや、心身バランスの失調、自律神経の失調などを漢方薬で調整することにより、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応の治療を進めています。とくに関係が深いのは、五臓の腎・心(しん)・肺です。
腎は「髄を生じ、脳に通じる」臓腑として、脳の機能と深く関係しています。心は「神志(しんし)をつかさどる」臓腑として、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志)をつかさどります。肺は「気をつかさどる」臓腑として、呼吸をつかさどります。いずれも感染症の影響で機能低下が生じます。したがって漢方では、おもに五臓の腎・心・肺の機能を補うことにより、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応の治療を進めます。
(症例紹介ページもあります)
よく使われる漢方薬
漢方では、患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決めます。同じ新型コロナ後遺症やワクチンの副反応でも、体質や病状が違えば効く漢方薬も異なります。人参養栄湯などが使われることが多いようですが、だれにでも効くわけではありません。以下に、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応に使われることの多い漢方薬を、みられることの多い体質とともに紹介します。患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。
- ①六味地黄丸
疲労倦怠感や、集中力の低下、記憶障害などのブレインフォグ、微熱、脱毛などの症状がみられるようなら、「腎精不足(じんせいぶそく)」という体質です。腎精とは、生命活動や成長・発育・生殖の基本となる、生命体の根本をなす物質のことで、これが不足している状態が「腎精不足」です。精は「脳・髄・骨を生じる」物質として、脳と深い関係にあります。感染症やワクチンの影響で腎精が減少し、脳の機能が低下すると、上記のような症状が残ります。六味地黄丸(ろくみじおうがん)など、腎精を補う漢方薬で、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応の治療を進めます。
- ②四君子湯
思考力や集中力の低下(ブレインフォグ)とともに、息苦しさや疲労倦怠感がみられる場合は、「心気虚(しんききょ)」という体質です。五臓の心の機能が弱っている状態です。感染症やワクチンにより心の機能が弱まってこの状態になると、前述のような症状が残ります。この証の場合は、四君子湯(しくんしとう)などを用い、心気を漢方薬で補うことで心の機能を強化し、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応を治療していきます。
- ③人参養栄湯
嗅覚障害、咳、痰、息切れ、胸痛などの症状がみられる場合は、「肺気虚(はいききょ)」という体質です。五臓の肺の機能が弱っている状態です。肺の防御機能が弱いため、かぜや新型コロナなどの感染症にかかりやすい上に、上記のような呼吸器系の症状が残りやすい体質です。人参養栄湯(にんじんようえいとう)など、肺の機能を補う漢方薬を用いて、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応を治療します。
- ④六君子湯
味覚障害、筋力低下などの症状がみられるようなら、「脾気虚(ひききょ)」という体質です。五臓の脾の機能が低下している状態です。脾は消化吸収や代謝をつかさどり、エネルギーや栄養の源を生成する臓腑です。この脾の機能が新型コロナの感染やワクチン接種により弱まると、この状態になり、味覚障害や、食欲不振、筋力の低下などの症状が残ります。六君子湯(りっくんしとう)などの漢方薬で脾の機能を強めることにより、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応の治療を進めます。
- ⑤四逆散
抑うつ、睡眠障害、頭痛などの症状が続いている場合は、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という体質です。体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ臓腑である五臓の肝(かん)の機能がスムーズに働いていない状態です。肝は自律神経系と関係が深い臓腑です。新型コロナの感染やワクチン接種により肝の機能が失調すると、この状態になり、前述のような症状が残ります。四逆散(しぎゃくさん)などの漢方薬で肝の機能の鬱結を和らげ、肝の流れをスムーズにすることにより、新型コロナ後遺症やワクチンの副反応を治していきます。
ほかにも新型コロナ後遺症やワクチンの副反応にみられる体質はたくさんあります。体質が違えば薬も変わります。自分の体質を正確に判断するためには、漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることが、もっとも確実で安心です。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の体質を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで処方しています。
- 新型コロナ後遺症・ワクチンの副反応(体験談) (改善症例)
予防/日常生活での注意点
日常生活では、じゅうぶんな睡眠と休養をとり、食事をしっかり取るようにしましょう。とくに旬の野菜や魚介類、豆腐や納豆などの大豆製品をはじめとする豆類、海藻類、芋類、きのこ類などをいただくようにするといいでしょう。ストレスをためないよう、リラックスした時間を持つことも大切です。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。