夜間頻尿
夜間頻尿に効く漢方薬
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
夜間頻尿の漢方治療について解説します。一般には抗コリン薬などが処方されますが、再発したり完治しなかったりすることも多い症状です。漢方薬としては八味地黄丸などが使われることがあるようですが、これも体質が合わないと効きません。当薬局では、患者さん一人一人の体質に合わせて漢方薬を処方し、夜間頻尿の根本治療を進めています。
*目次*
夜間頻尿とは
症状
原因
一般的な治療
漢方薬による治療
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点
(症例紹介ページもあります)
夜間頻尿とは
夜間頻尿は、排尿のために就寝中に何度も目が覚め、起きなければならない症状です。睡眠が妨げられ、睡眠の質が低下します。日中の生活の質(QOL)も下がります。夜間頻尿は年齢とともに頻度が高まり、40歳以上の約7割が就寝中に1回以上トイレに起きるというデータもあるようです。
症状
よくみられる症状は、たとえば3時間おきに尿意で目覚めてしまう、あるいは夜中に何度も起きて、ぐっすり眠れない、さらに睡眠が妨げられ、仕事など日常生活に支障をきたす、などです。夜間だけでなく昼間も頻尿や尿意切迫を覚えることもあります。
原因
原因としては、夜間に生成される尿量が増える、尿を十分に溜められない(膀胱が収縮しやすい、尿道がゆるみやすい、膀胱が硬く柔軟性が低い、膀胱が小さくなった)、睡眠障害、水分の過剰摂取、アルコール・カフェイン・塩分の摂取過多などがあります。服用薬の影響で夜間頻尿となる場合もあります。高血圧や糖尿病、心不全、過活動膀胱などの疾患が関与していることもあります。男性の場合は前立腺肥大症に伴って夜間頻尿となる場合もあります。
一般的な治療
治療には、薬物療法によって膀胱の収縮を抑えたり夜間尿量を減らしたりする対症療法や、心身の体調をととのえて自然な排尿を取り戻していく方法などがあります。西洋医学では、おもに薬物療法が行われます。膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬や、夜間尿量を減少させる抗利尿ホルモン剤の投与などが使われます。高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある場合は、それらの治療を十分に行います。
漢方薬による治療
漢方では、心身の体調をととのえて自然な排尿を取り戻していくことにより、夜間頻尿の治療を進めます。根治するには、薬物療法だけに頼らず、体質など夜間頻尿の背景からも改善を進め、心身の状態を穏やかに安定させ、夜間頻尿を治していきます。
漢方では、夜間頻尿を五臓六腑の腎(じん)や膀胱と関係が深い症状と捉えています。腎は五臓のひとつで、尿を含む体液の代謝全般の根本的な調整をします。また大小便の排泄と深い関係にあります。六腑のひとつである膀胱は、尿の貯留と排泄をつかさどります。
腎と膀胱は密接な関係にあり、両者の連携により、体内で不要となった廃液が膀胱にためられ、尿として排泄され、排尿がコントロールされています。コントロールの主役は腎であり、尿がむやみに体外に漏れ出ないように、膀胱での尿の貯留と排泄を調節しています。腎が衰えると、この膀胱の貯留排泄機能が低下し、夜間頻尿になります。
したがって漢方では、おもに五臓の腎や膀胱の機能をととのえることにより、夜間頻尿の治療を進めます。
(症例紹介ページもあります)
よく使われる漢方薬
漢方では、患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決めます。同じ夜間頻尿という症状でも、体質や病状が違えば効く漢方薬も異なります。一般には八味地黄丸などが使われることがあるようですが、だれにでも効くわけではありません。以下に、夜間頻尿に使われることの多い漢方薬を、みられることの多い体質とともに紹介します。患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。
- ①六味地黄丸
加齢に伴って生じる夜間頻尿で、のぼせ、手足のほてり、寝汗などの熱証を伴うようなら、漢方でいう「腎陰虚(じんいんきょ)」という体質です。五臓の腎が充実していない体質です。加齢や過労によって腎が弱るとこの体質になり、腎の排尿コントロール機能が失調し、尿を保持することができなくなり、夜間頻尿が生じます。この体質の場合は、六味地黄丸(ろくみじおうがん)など、腎を補う漢方薬で夜間頻尿を治します。
- ②牛車腎気丸、八味地黄丸
同じく加齢による夜間頻尿で、冷え症、寒がりなどの寒証を伴うようなら、漢方でいう「腎陽虚(じんようきょ)」という体質です。五臓の腎の機能が低下している体質です。加齢や、生活の不摂生、過労などによって人体の機能が衰え、冷えが生じるとこのような体質になります。この体質になると、膀胱の貯留排泄機能が低下し、夜間頻尿になります。昼間は逆にむくみやすく、尿量はむしろ少なめです。牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)など、腎の機能を補う漢方薬で夜間頻尿を治療します。
- ③五淋散、竜胆瀉肝湯、猪苓湯
尿意促迫や排尿痛がみられる場合は、漢方でいう「膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)」という体質です。過剰な熱や湿気(湿熱邪といいます)が膀胱に集まり、膀胱の機能を障害している状態です。アルコール類の日常的な摂取過多や、細菌の尿路への侵入、脂っこいものや味の濃いものの嗜好などにより、この体質になります。湿邪により頻尿や尿意促迫が起こり、熱邪により排尿痛や排尿時の尿道灼熱感が生じます。五淋散(ごりんさん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、猪苓湯(ちょれいとう)など、膀胱の湿熱邪を除去する漢方薬で、夜間頻尿の治療をします。
- ④清心蓮子飲
自律神経系の失調と関係が深そうなら、「心火(しんか)」という体質です。心(しん)は五臓のひとつで、自律神経系と深い関係にあります。この心に、過度の心労、思い悩み過ぎ、過労、ストレスなどにより負担がかかり、自律神経系が亢進しやすくなると、この体質になります。この体質の人の脳や自律神経系の興奮が、リラックスしたときなどに急に緩和されると、急に副交感神経が優位になり、夜間頻尿が生じます。清心蓮子飲(せいしんれんしいん)など、心火を冷ます漢方薬で、夜間頻尿を治療します。
- ⑤当帰四逆加呉茱萸生姜湯
冷えて夜間頻尿がひどくなるようなら、漢方でいう「寒凝(かんぎょう)」という体質です。冷え症である場合はもちろん、冷たい飲食物の摂取、寒冷の環境での仕事や生活、ファッション重視の薄着などにより、過剰な冷えが体内に侵入すると、この体質になります。冷えが腎や膀胱の機能を乱すことにより、夜間頻尿が生じます。当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)など、体内を温めて血行を促進する漢方薬で、夜間頻尿を治していきます。
ほかにも夜間頻尿にみられる体質はたくさんあります。体質が違えば薬も変わります。自分の体質を正確に判断するためには、漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることが、もっとも確実で安心です。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の体質を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで処方しています。
予防/日常生活での注意点
日常生活では、寝る前に水分をとりすぎないように心がけましょう。アルコールやカフェイン、塩分の取り過ぎにも注意してください。規則正しい生活も大切です。就寝前にむくみをとっておくと夜間頻尿が改善される場合もあるので、就寝前に足のマッサージをするなどして、むくみをとるのも効果的なようです。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI:ドラッグインフォメーション)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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