過換気症候群(過呼吸)
過換気症候群(過呼吸)に効く漢方薬
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
過換気症候群(過呼吸)の漢方治療について解説します。一般には抗不安薬などが処方されますが、対症療法ですので、完治せずにいつまでも薬に頼らざるをえなくなることも多い病気です。漢方薬としては加味逍遙散などが使われることがあるようですが、これも体質が合わないと効きません。当薬局では、患者さん一人一人の体質に合わせて漢方薬を処方し、過換気症候群(過呼吸)の根本治療を進めています。
*目次*
過換気症候群(過呼吸)とは
症状
原因
一般的な治療
漢方薬による治療
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点
(症例紹介ページもあります)
過換気症候群(過呼吸)とは
過換気症候群(過呼吸)は、極度の不安や緊張により、息を何度も激しく吸ったり吐いたりする状態です。10〜20代の女性に多く見られます。
症状
よくみられる症状は、息苦しさ(呼吸困難)、呼吸が速くなる、呼吸が荒くなる、いくら息を吸っても治らない、突然胸が苦しくなる、動悸、頻脈、胸痛、手足先のしびれ、口の周りのしびれ、めまい、吐き気、冷や汗などです。発作が長引くと、痙攣を起こしたり、硬直したり、意識を失って倒れたりすることもあります。このような症状が起こると、さらに不安が募り、窒息しそうな恐怖も感じ、過呼吸状態がひどくなり、症状が悪化します。
原因
原因は、不安や緊張、ストレスが引き金となり、脳内の呼吸中枢が過度に刺激されることにあるようです。その結果、呼吸が速く、短くなります。過剰な換気により血液中の二酸化炭素が多く排気されると、血液中の炭酸ガス濃度が下がり、血液がアルカリ性に傾くことにより、呼吸が抑制され、血管が収縮し、さまざまな症状が生じます。几帳面な人や、神経質な人、心配性の人、緊張しやすい人、パニック障害の人などに起こりやすいようです。マラソンなどのスポーツの直後の肉体的疲労や、睡眠不足などからも起こります。
一般的な治療
治療には、発作が起きないように薬物療法によって不安を和らげる対症療法や、心身の体調をととのえて不安や緊張に過敏に反応して過呼吸にならないように体質改善する方法などがあります。
西洋医学では、おもに薬物療法が行われます。抗不安薬などが用いられます。かつては紙袋などを口に当てて呼吸する「ペーパーバッグ法」が良いとされていましたが、この方法では、血液中の酸素濃度が下がりすぎたり炭酸ガス濃度が必要以上に上がりすぎたりする可能性があるため、現在では推奨されていません。
漢方薬による治療
漢方では、心身の体調をととのえることにより、不安や緊張に対して過剰に反応しないように体質を改善していく方法で、過換気症候群(過呼吸)を治療していきます。過換気症候群と関係が深いのは、五臓の心(しん)と肝(かん)です。
心は五臓のひとつで、意識や判断、思惟など、人間らしい高次の精神活動をつかさどります。慢性的な体調不良や過労、強い不安感、思い悩みすぎなどの影響で機能が乱れやすい臓腑です。肝も五臓のひとつで、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持ちます。精神的なストレスや緊張で機能が乱れやすい臓腑です。
これら五臓の心や肝の機能が不安定になると、五臓の肺の機能が失調し、呼吸が乱れ、過換気症候群となります。したがって漢方では、五臓の心や肝の機能をととのえることにより、過換気症候群の治療をします。
(症例紹介ページもあります)
よく使われる漢方薬
漢方では、患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決めます。同じ過換気症候群(過呼吸)という病名でも、体質や病状が違えば効く漢方薬も異なります。一般には加味逍遙散などが使われることがあるようですが、だれにでも効くわけではありません。以下に、過換気症候群(過呼吸)に使われることの多い漢方薬を、みられることの多い体質とともに紹介します。患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。
- ①桂枝加竜骨牡蛎湯
心配性で、日頃から疲れやすいようなら、漢方でいう「心気虚(しんききょ)」という体質です。五臓の心(しん)の機能が低下している体質です。思い悩みすぎなどで心の機能が弱まり、この体質になると、強い不安に耐えきれず、過呼吸が生じます。この体質の場合は、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)など、五臓の心の機能を補う漢方薬で心の機能を強化し、過換気症候群を治療します。
- ②帰脾湯
①の心気虚という体質に加えて、さらに胃腸が丈夫でないようなら、「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」という体質です。脾(ひ)は五臓のひとつで、食べたものの消化吸収や代謝をつかさどり、エネルギーや栄養の源を生成します。この脾の機能が弱いため、心気虚よりさらに弱いストレスでも過呼吸が生じます。帰脾湯(きひとう)など、心と脾の両方を補う漢方薬で、過換気症候群を治療します。
- ③逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯
神経質で几帳面なタイプなら、漢方でいう「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という体質です。五臓の肝(かん)の機能がスムーズに働いていない体質です。強いストレスにより肝の気の流れが停滞すると、この体質になり、過呼吸が生じます。逍遙散(しょうようさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などの漢方薬で、肝の気の鬱結を和らげて肝の機能をスムーズにし、ストレスに対する耐性を高めることにより、過換気症候群を治していきます。
- ④抑肝散
興奮しやすく、神経が高ぶりやすいタイプなら、「肝陽化風(かんようかふう)」という体質です。ストレスなどの影響で五臓の肝の機能が不安定となり、揺れ動くような症状を引き起こす病邪(肝風といいます)が生じると、この体質になります。肝風の影響で興奮が高まることにより、過呼吸が生じます。この体質の人に対しては、抑肝散(よくかんさん)など、肝風を鎮める漢方薬で過換気症候群を治療します。
- ⑤半夏厚朴湯
発作時に喉の締め付け感が強いようなら、漢方でいう「肺気逆(はいきぎゃく)」という体質です。肺は五臓のひとつで、呼吸をつかさどります。この肺の機能が安定しているときは呼吸が整っていますが、肺の機能が失調してこの体質になると、呼吸が荒くなり、上気道が狭まり、喉の違和感や締め付け感が生じ、過呼吸となります。半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など、肺の機能を落ち着かせる漢方薬で、過換気症候群を治療します。
ほかにも過換気症候群(過呼吸)にみられる体質はたくさんあります。体質が違えば薬も変わります。自分の体質を正確に判断するためには、漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることが、もっとも確実で安心です。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の体質を的確に判断し、その人に最適な漢方薬をオーダーメイドで処方しています。
予防/日常生活での注意点
日常生活では、日頃からストレスをためないように、音楽を聴いたり、好きなことをしたりして、リラックスする時間を設けましょう。発作が起きそうな時は、ゆっくりと息を吐いて呼吸を整えましょう。疲労が引き金となる場合も多いので、じゅうぶんな睡眠をとり、あまり無理をしないようにしましょう。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI:ドラッグインフォメーション)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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