高血圧の症例

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

薬石花房 幸福薬局 の漢方薬で高血圧が改善した症例

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■症例1 「最近、疲れを感じるようになったと思っていたら、今年の健康診断で高血圧だと言われ、降圧薬を飲むようになりました。頭が痛みます。もともと胃腸は丈夫なほうではありませんが、このところ食欲があまりありません」

40歳代の男性です。頭痛はかなりつらいようで、早朝に締め付けられるように痛むことがあるようです。疲れがひどいときには、ふらつきや耳鳴りもあるとのことです。

この男性の場合、頭痛、ふらつき、耳鳴りなどの症状から、風邪(ふうじゃ)の存在が考えられます。ただし、かぜなどの感染症のように体外から風邪が侵入したわけではなく、からだの中で発生する風邪によるものです。これを「内風(ないふう)」といいます。

さらに疲労の蓄積による自律神経系の不調があるようですが、これは風船を持つ手に力が入らずに、風船がふわりと上昇して風に揺れ動いているような状態です。この証を「肝陽化風(かんようかふう)」といいます。肝陽とは、自律神経系や情緒の安定を意味する五臓の「(かん)」の機能です。これが失調して内風となり、体内をふわふわとうろついているのが肝陽化風です。

この証の場合によく用いられるのは、ふわふわと揺れ動く風船(肝陽)を捕まえて、もとの場所に戻してくれる漢方薬です。この男性も漢方薬を服用して3か月くらいで締め付けられるような頭痛はなくなり、ふらつきも消えました。血圧も安定してきました。

同じように高血圧で頭痛がするが、締め付けられる痛みというよりは重い痛みがあり、めまいが頻繁にして、吐き気、食欲不振などの胃腸症状があるというタイプもあります。

めまい・ふらつきについてはこちらをご覧ください → めまい・ふらつき


■症例2 「5年くらい前から血圧が高くなりました。上が160〜170で、下が90くらいです。それ以来、降圧薬をずっと飲んでいます。薬を飲んでいれば、血圧は正常範囲内です。慢性的に肩凝りがあります」

顔色がやや赤いので聞くと、のぼせやすいとのことです。目も少し赤く充血しています。イライラしやすいほうで、寝つきがあまりよくないとのことです。ほかに、便秘ぎみで、便は硬いそうです。舌を見ると、赤い色をしており、黄色い舌苔がついていました。

この方の場合、顔色が赤い、のぼせやすい、目の充血などの症状があるので、体調不良には熱邪の影響があるようです。さらに、イライラしやすい、寝つきがよくないなど、自律神経系を調整する五臓の「」で熱証が現れているので、この場合の証を「肝火(かんか)」といいます。

こういう場合は、肝の機能を改善し、熱を冷まし、さらに便秘を改善する作用がある漢方薬を使います。

この方には、2種類の漢方薬を服用してもらいました。3か月後には顔の赤みや目の充血がなくなり、夜も眠りやすくなってきたようです。5か月目には血圧が下がってきたので降圧薬が半量になり、それから6か月後には廃薬(薬を飲まなくなること)となりました。

漢方薬は最終的に、約1年間服用ののち廃薬しましたが、その後も血圧は安定しているようです。


■症例3 「年齢とともに血圧が少しずつ上がり、60歳前後からとうとう降圧薬を飲むようになりました。血圧のせいか、ふらふらしやすく、ときに耳鳴りもします」

ほかの自覚症状としては、若いころよりも冷えを強く感じるようになり、とくに足腰が冷え、だるさを感じます。気持ちが落ち着かないことも多く、わけもなくイライラすることがあります。舌は白っぽい色をしていました。

この方の証は「腎陽虚(じんようきょ)」です。五臓の「」は成長・発育・生殖をつかさどる臓腑ですが、これが加齢により徐々に弱まり、腎陽虚証になります。耳鳴りやふらつき、足腰のだるさや冷えのほかに、めまい、腰痛、脱毛、健忘、排尿異常などの症状が現れます。

このかたは腎陽虚証を改善する漢方薬を1年近く服用し、血圧を正常範囲内にまで下げることができました。

* * * 

日本人の場合、原因がはっきりとは分からない本態性高血圧が大部分です。本態性高血圧の場合、以上の症例のように漢方治療により心身全体のバランスを調えることによって高血圧症が改善することが期待できます。

もし何かはっきりとした原因がある二次性高血圧の場合は、その原因となる疾患の治療が重要です。

ほかの病気と同様、高血圧の場合もひとりひとりの証によって、使う漢方処方が異なります。自覚症状があまりない病気ですが、当薬局では自覚症状があればそれを丁寧にすくいとり、なければ他の症状をしっかり聞き取って、正確な処方を出すようにしています。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

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(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

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