不育症(習慣性流産)の症例

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

薬石花房 幸福薬局(東京 帝国ホテル内)の漢方薬で 無事出産に至った例  
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■症例1(31歳)胎嚢確認後に流産「これまで2回流産しています。胎嚢(たいのう)確認後、心拍が確認できず、ともに稽留流産(けいりゅうりゅうざん)でした」
(胎嚢とは、受精卵(胚)が子宮内膜に着床してできる赤ちゃんの袋のこと)

31歳です。流産のあと、2回とも手術をしました。不育症の検査を受けると抗リン脂質抗体症候群とのことで、血液が固まりやすいので不育症になっていると診断されました。子宮内膜症があり、生理痛がひどく、小さなチョコレート嚢胞(のうほう)があります。舌には紫赤色の斑点(瘀斑:おはん)が付いています。

この人の証は、「血瘀(けつお)」です。血流が鬱滞しやすい体質です。精神的ストレスや、冷え、生理機能の低下などにより、この証になります。子宮内膜症、生理痛がひどい、チョコレート嚢胞、舌に紫赤色の瘀斑がある、などは、この証の特徴です。肩こり、頭痛、生理不順などの症状を伴う場合もあります。

この証の人に対しては、血行を促進する漢方薬を使います。代表的な処方は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。この人は桂枝茯苓丸を服用し始めてから生理痛が劇的に改善し、5か月後に再び妊娠しました。その後も流産予防の目的で、安定期に入るまで漢方を飲み続け、流産することなく、無事出産しました。

■症例2(41歳)高FSH 低AMH「41歳で不妊治療を受けています。これまで体外受精で3度妊娠しましたが、全部初期で流産しました。最近の検査では閉経が近いと言われ、焦っています」

結婚して7年、不妊治療を始めて2年になります。検査の結果、FSH(卵胞刺激ホルモン)値が高く、AMH(抗ミューラー管ホルモン)値が低く、閉経が近いかもしれないと言われました。若いころから虚弱で、初潮は遅めで高校に入ってからでした。寒がりで、手足が冷えます。舌は白っぽい色をしており、湿っぽい白い舌苔が付着しています。

この人の証は、「腎陽虚(じんようきょ)」です。腎の陽気(腎陽)が不足している体質です。腎は五臓のひとつで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどる臓腑です。陽気は気と同じことです。腎陽が虚弱になると、性機能や内分泌機能が衰え、この女性のように不育症になります。腎の機能低下は、受精卵の染色体異常や黄体機能不全と深い関係にあります。

このような体質の場合は、漢方薬で腎陽を補い、不育症に対処します。代表的な処方は、八味地黄丸(はちみじおうがん)です。この処方を飲み続けたところ、検査値が少し改善したところで妊娠し、翌年出産しました。漢方薬は出産するまで飲み続けました。

■症例3(42歳)二人目不妊「42歳です。二人目を希望していますが流産を繰り返し、なかなか妊娠が継続できません」

一人目は36歳で出産しました。37歳で断乳し、ほどなく生理が安定して来るようになりました。一人目は妊娠を希望してすぐ授かりましたが、二人目はなかなか妊娠しませんでした。一昨年にようやく2度妊娠しましたが、流産しました。子育て中でもあり、疲れを感じます。頭がぼーっとし、めまいや耳鳴りがあります。手足のほてりも感じます。舌は赤く、舌苔はほとんど付着していません。

この人の証は、「腎陰虚(じんいんきょ)」です。腎の陰液が不足している体質です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液・精を指します。出産により腎陰を大きく損傷したのち、過労、加齢などにより腎陰がじゅうぶん補われず、妊娠や妊娠の継続ができにくい体質になっています。頭がぼーっとする、めまい、耳鳴り、手足のほてり、赤い舌、少ない舌苔などは、この証の特徴です。のぼせ、口渇、寝汗などの症状を伴う場合もあります。

この場合は、漢方薬で腎陰を補い、不育症の改善を目指します。代表的な処方は六味地黄丸(ろくみじおうがん)です。服用を始めて8か月目に妊娠が確認され、翌年出産しました。

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症例で扱った証以外には、貧血、子宮内膜が薄い、などの症候を伴う「血虚(けっきょ)」証もみられます。四物湯(しもつとう)などで血を補い、流産しにくくしていきます。疲れやすい、元気がない、など気虚の症状もあれば、「気血両虚(きけつりょうきょ)」証を治療する十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、不正出血を伴うようなら芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)などを使います。

ストレスの影響で流産しているようなら、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにする四逆散(しぎゃくさん)がいいでしょう。いらいら、頭痛などの熱証も伴う「肝火(かんか)」証なら、加味逍遙散(かみしょうようさん)を用います。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。

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自分に合った漢方薬に出会うには

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そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

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