不育症・習慣性流産
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
漢方薬で「流産しにくい体質」をつくり、不育症・習慣性流産を克服する
当薬局では不育症・習慣性流産に関する漢方治療のご相談をお受けしています。
近年の晩婚化や、出産年齢の上昇、不妊治療の普及などにともない、せっかく妊娠しても、おなかの中で赤ちゃんが育たず、流産してしまうケースが増えています。
「胎嚢(たいのう)が確認できるところまで育ったのに、そのあと成長が止まった」「不妊治療で着床はするが、そのあと育たずに初期流産になってしまう」「一人目はすぐできたのに二人目がなかなかできない」「病院で、閉経が近い、と言われて焦っている」などのお悩みが多いようです。
漢方では、漢方薬で卵や母体に働きかけ、丈夫な「卵」や、おなかの中の卵をしっかり滋養できる「母体」環境を作ることにより、流産の確率を下げていきます。
大事なのは、「流産しにくい体質」をつくることです。
(漢方で出産に成功した不育症の症例紹介ページは こちら)
不育症とは、妊娠はするけれども継続できず、流産や死産を繰り返す状態です。近年の晩婚化や、女性の出産年齢の高齢化などの社会的な背景に伴い、不育症に悩む人は増えています。
流産や死産の原因には、受精卵や胎児の染色体異常や、ホルモン異常、血液の固まりやすさ、子宮の形の異常、ストレスなどがあります。染色体異常をもつ受精卵の多くは、その後成長し続けることができずに成長が止まり、流産となります。検査をしても原因がわからない不育症も多く、全体の6割以上にのぼります。
「薬石花房 幸福薬局」の漢方不育症治療
漢方では、五臓六腑の腎(じん)を、不育症に最も関連が深い臓腑と捉えています。五臓六腑は漢方の言葉で、人体の機能的単位です。腎はその五臓六腑のひとつで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質(「精(せい)」といいます)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどる機能を指します。
したがって染色体異常を含む受精卵や胚の健康状態、それに黄体ホルモン(プロゲステロン)など性ホルモンの量などは、腎の状態に大きく左右されます。腎が若々しく元気であれば、染色体異常になる確率は低くなります。黄体ホルモンの量も安定します。
また、不育症になる確率は、年齢とともに高まります。高齢出産を目指す場合も、まず大事なのは腎を養うことです。
当薬局では、以下の方法で不妊症の漢方治療をしています。
- 成長し続ける力のある元気な卵(胚)をつくる
- 卵(胚)をしっかり滋養できる母体をつくる
女性の年齢が高くなるにつれ、受精卵の染色体異常が生じる率は上昇します。黄体ホルモンも年齢とともに減少し、妊娠の成立や継続に足りなくなる場合もあります(黄体機能不全)。精子も年齢とともに老化して染色体異常が増えるという報告もあります。腎の機能を高めておくことは、これらの予防に有効です。
腎のほかには、血(けつ)の流れ方や量も、不育症と深い関係があります。血とは、人体に必要な血液や栄養のことです。この血の流れがわるいと、血液が固まりやすくなり、血の流れが停滞し、それが流産の原因となります。また血の量が少ないと、子宮内膜がじゅうぶん厚くならず、そのために流産することもあります。
漢方薬を使って「腎(じん)」を補い、養うことは、方針1のために大切なことです。また「血(けつ)」の流れを改善し、量を増やす漢方は、方針2に向けて重要なものとなります。
当薬局では時間をかけてカウンセリングをして不育症の原因をつきとめ、お一人お一人の体質に合わせて最適な処方を考えていきます。
あなたに合った漢方薬ですと、飲み続けるうちに体質が改善され、次第に妊娠を継続しやすい体内環境がととのい、「流産しにくい体質」に変化していきます。病院の不育症治療との併用も可能です。流産しやすい体質そのものを漢方薬で改善してみてはいかがでしょうか。漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにしてください。
ご興味があるようでしたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
体質によって違う治療法、あなたはどのタイプ?
漢方には、「病気ではなく病人を治す」という基本概念があり、処方は、病名ではなく、その人の体質によって決まります。その人の体質や病状のことを漢方では「証(しょう)」といいます。したがって、不育症にはこの処方、というものはなく、ひとりひとりの証により、使われる漢方処方は異なってきます。
(漢方で出産に成功した不育症の症例紹介ページは こちら)
不育症の患者さんに多くみられる証には、たとえば以下のようなものがあります。
不育症の原因に染色体異常や黄体機能不全が関係しており、冷えが強いようなら、「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎の陽気が不足している体質です。陽気とは生命エネルギーに近い概念で、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて陽気と呼びます。加齢だけでなく、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。腎陽が虚弱になると、性機能やホルモン内分泌機能が衰え、不育症になります。腎陽を補う漢方薬で不育症に対処します。
同じように腎が衰弱する場合でも、冷えとは逆に、のぼせや手足のほてりを伴う場合もあります。「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。腎の陽気ではなく、腎の陰液が不足している体質です。陰液とは、血液や体液、それに前述の「精」のことを指します。過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生、加齢などにより精が減り、不育症になるわけです。陰液の不足により熱っぽくなり、のぼせ、手足のほてりなどが生じます。腎の精気など、腎陰を補う漢方薬で不育症を治します。
血液が固まりやすいようなら、「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質です。精神的ストレスや、冷え、体内の過剰な水液、生理機能の低下などにより、この証になります。病気や体調不良が慢性化して長引いて血流がわるくなり、この証になる場合もあります。血液が固まりやすいと血流が悪化したり血栓ができたりし、胎児にじゅうぶんな栄養が届かなくなり、流産しやすくなります。血行を促進する漢方薬で不育症を治療します。
子宮内膜が薄いようなら、「血虚(けっきょ)」証です。人体に必要な血液や栄養が不足している体質です。偏食など無神経な食生活、胃腸機能の低下、出血、慢性疾患などにより、この証になります。血が不足しているため、子宮内膜がじゅうぶん厚くならず、流産しやすくなります。漢方薬で血を補い、流産しにくくしていきます。
ストレスも妊娠や流産と関係があります。ストレスの影響で流産しているようなら、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。からだの諸機能を調節する臓腑である五臓の肝の機能(肝気)の流れが滞っている体質です。ストレスや緊張が持続すると、この証になります。肝気の流れの悪化の影響がホルモンバランスの失調に及び、流産します。仕事の激務による疲労蓄積や深夜残業による不規則な生活、家族の不理解や家族からのプレッシャーが継続あるいは繰り返して流産してしまう例をよくみます。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、不育症を治していきます。
不育症の検査を行っても明らかな原因がみつからない場合は、検査上は正常範囲内でも体質的にはすでに上記のような証になっていることが多々あります。そのような場合こそ漢方薬で「妊娠しやすい体質」や「流産しにくい体質」に向けて体質改善を進めることにより、いい結果にむすびつくことは少なくありません。
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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