多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
漢方薬で「自力で安定した排卵ができる体質」に
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方治療の症例は こちら
当薬局では、多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome = PCOS)でご相談にいらっしゃるかたが増えています。
不妊症や生理不順、無月経などでお悩みのかたが婦人科に行き、「検査をしたら多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)だと言われました」「このままでは妊娠しにくいと言われました」というケースです。
こういう場合、病院ではホルモン剤を使って治療するのが一般的ですが、当薬局では、ホルモン治療で人工的に排卵させたり生理周期をつくったりするのではなく、漢方薬を使って排卵しにくい体質そのものを改善し、「自力で安定した排卵ができる体質」に向けて漢方治療をしています。
体質を改善し、安定した生理周期で自然に排卵させる力を身につけると、丈夫で元気な卵子をつくることができます。
大事なのは、「自力で安定した排卵ができる体質」になることです。
ご興味があるようでしたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
「薬石花房 幸福薬局」の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方治療
当薬局では、以下の方針で多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方治療をしています。
- 方針A 排卵障害のない健全な卵巣をつくる
- 方針B 自力で排卵できる元気な卵をつくる
安定した排卵が自然に繰り返されるためには、まず母体となる女性の心とからだの健康が必要不可欠です。方針Aのためには、女性の心身の健康と安定に向けて体質を改善していく漢方薬を使います。
また、方針Bのためには、エネルギー(漢方で「気(き)」といいます)や栄養(漢方で「血(けつ)」といいます)がしっかりと卵胞や卵に届くようにする漢方薬が重要な役割を果たします。
当薬局では時間をかけてカウンセリングをして多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因をつきとめ、お一人お一人の体質に合わせて最適な処方を考えていきます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは
卵巣内には原始卵胞がたくさんあり、月経のたびに、そのなかのひとつが成熟して大きくなり、排卵日になると卵胞のなかの卵子が卵巣の外に排出されます(排卵)。この卵子が精子と出会い、結合して受精卵となり、分割を繰り返して胚となり、子宮内膜に着床すると妊娠が成立します。
排卵の際は卵胞の表面が破れ、卵胞のなかから卵が放出されます。しかし、もし卵巣の表面が硬く肥厚していると、卵が放出されにくくなり、排卵が困難になります。
排卵が行われないと、卵胞がそのまま卵巣内に残ります。この結果、卵巣内に卵胞がたくさん滞留(多嚢胞化)してしまいます。これが多嚢胞性卵巣(Polycystic ovary = PCO)という状態です。
エコー(超音波検査)画像で見ると、卵巣の表面に沿って卵胞が数珠(じゅず)つなぎに並んで見えます(ネックレスサイン)。多嚢胞性卵巣(PCO)は、女性の数%にみられるといわれています。
西洋医学的には、黄体形成ホルモン(黄体化ホルモン:Luteinizing hormone = LH)値が高いのが原因のひとつと考えられています。卵胞刺激ホルモン(Follicle stimulating hormone = FSH)は正常範囲内でもLHが高いため、ホルモンバランスがLH>FSHという状態です。男性ホルモン値の高値(高アンドロゲン血症)、高プロラクチン血症、血中インシュリン濃度の上昇、肥満などとの関連もあるようです。
多嚢胞性卵巣(PCO)になると、月経異常や不妊などの症候が生じやすくなります。これが「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」という病気です。排卵がうまく行われないために生理周期が延長したり(希発月経)、ときには無月経になったりします。排卵しなければ、自然に妊娠することはありませんので、不妊症になります。不正性器出血がみられる場合もあります。男性ホルモン値の上昇により、多毛、にきびなどの男性化症状が現れることもあります。
不妊の原因には、卵子の質がよくない、排卵がうまくできていない(排卵障害)、卵管が通りにくい、受精卵(胚)が着床しにくい、などがあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害のひとつであり、不妊の原因の1~2割を占めるといわれています。また、卵巣に送られてくる栄養を多数の卵胞で分かち合うので、卵の質がよくないともいわれています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方治療
漢方では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という病気になってしまった「体質」そのものを改善していきます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)になった背景には、卵巣の表面が硬くなりやすい体質や、ホルモンバランスが不安定な体質などがあります。人工的に排卵を起こさせたりするのではなく、からだの内側から根本的に体質を改善し、自然に安定的な排卵ができるからだ、つまり「自力で安定した排卵ができる体質」に導いていくのが漢方薬です。
漢方では、女性の体質そのものを良くしていきます。したがって、豊かな栄養が卵巣に送り込まれることになります。この結果、元気で丈夫な卵がつくられるようになります。これも漢方の特徴といえます。
(参考:西洋医学では)
西洋医学では、クロミフェン療法やhMG-hCG療法(ゴナドトロピン療法)など、ホルモン剤で人工的に排卵を誘発する方法がとられます。ただし卵胞が過剰に刺激されるために大きく成長し、卵巣が腫れてしまうことなど(卵巣過剰刺激症候群:Ovarian hyperstimulation syndrome = OHSS)もあるので注意を要します。
腹腔鏡下卵巣焼灼術という、卵巣に穴を開ける手術もあります。半年から1年で元の排卵しにくい卵巣に戻りますが、それまでのあいだは排卵しやすくなるようです。
妊娠を希望しない場合は、ピルや黄体ホルモン製剤、カウフマン療法によるホルモン治療なども行われます。人工的に外部からホルモンが補充されるので卵巣は休息状態となり、治療中は排卵が抑制されます。
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あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。
自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。
漢方薬によって、質の良い卵をつくれる体質に変わっていきます
漢方薬は、人工的に排卵や生理を起こさせる薬ではなく、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という病気になってしまった体質そのものを改善する薬です。からだに無理な負担がないので、質のよい卵ができます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)になった背景には、紹介した4つの症例のように、さまざまな「排卵しにくい体質」が根本にあります。その体質そのものから改善していくのが漢方薬です。からだの内側からじっくり根本的に健康になり、元気になりたい、丈夫な卵をつくりたい、とお考えのかたに、漢方薬は適しています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者さんにみられやすい体質や、使われることの多い処方には、たとえば以下のようなものがあります。
1 ストレスの影響で生理周期が乱れやすい場合は、柴胡、芍薬など、ストレス抵抗性を高める生薬を使った漢方処方(四逆散、逍遙散など)で、ストレスに強い体質を作っていきます。
2 血行を改善して排卵しやすい体質をつくりたい場合は、芍薬、牡丹皮など、血行を促進する生薬配合の漢方処方を使います(桂枝茯苓丸、芎帰調血飲など)。タバコは血行改善の大敵である点も、お忘れなく。
3 体内にたまった余分な体液、脂肪、不要なたんぱく質などを捨て去りたい場合は、半夏、蒼朮など、体内の過剰な不要物を捨て去ってくれる生薬を配合した漢方薬が有効です(二陳湯、平胃散など)。
4 ホルモンバランスを調えて生理周期や排卵を安定させたい場合は、地黄、桂皮など、内分泌系の機能を調整する生薬を使った漢方薬がいいでしょう(八味地黄丸、牛車腎気丸など)。夜更かしは控え、十分な睡眠・休養をとり、規則正しい生活も心がけてください。
5 排卵する力を強めるため、体力をつけたい人には、人参、大棗など、胃腸機能を高める生薬配合の処方を用います(四君子湯、六君子湯など)。食生活の改善も必要でしょう。
6 冷えが関係している場合もあります。その場合は、人参、当帰など、体内のエネルギーを高めて体の芯から温めてくれる生薬配合の漢方薬を使います(人参湯、当帰湯など)。
あなたの体質に合った漢方薬ですと、飲み続けるうちに体質が改善され、次第に「自力で安定した排卵ができる体質」になっていきます。からだの内側から、体質そのものを漢方薬で改善してみてはいかがでしょうか。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにしてください。
不妊症、高齢不妊の漢方治療については、それぞれ「不妊症」サイトや「35歳からの漢方不妊治療」サイトを参考にしてください。
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(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。
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