不眠・漢方で考え方も変化、自然な眠りへ
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は自分を追い込んでいた責任感の強い女性が不眠を漢方で改善した物語です。眠りだけでなく考え方にも変化があり、気持ちが楽になりました。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■あれこれ悩んで眠れない■■
美穂は最近、寝つきがよくない。夜になって布団に入り部屋の明かりを消して目を閉じると、さまざまなことを思い出してしまい、目がさえてくる。寝たいのに眠れない。
最近とくに悩んでいるのはボランティア活動のことである。なにか人の役に立ちたいと思って飛び込んだNPO法人ではあるが、自分が納得のいく活動をできていないと感じている。
上司は、この業界ではちょっと名の知れた女性。行動力があり、ぐいぐいと組織を引っ張る。部下の面倒見もいい。しかし、美穂の提案が受け入れられることは、あまりない。せっかく一所懸命考えた企画も、受け入れられない。それが美穂の悩みである。
同僚で先輩の香奈恵に相談してみたことがある。
「香奈恵さん、このNPO法人、なんか変じゃありませんか」
「どうして?」
「だって、わたしが正しいと思う提案を、部長はなかなか採用してくれないんです。わたしがボランティア活動のことを思って組んだ企画なのに、理解してもらえなくて」
香奈恵は美穂の話を聞いて大きくうなずいて言った。
「なるほど、それで美穂ちゃん最近、暗い顔をしているのね」
「え、分かりますか」
「それに、寝不足なんじゃないかしら」
5歳年上の香奈恵は、美穂の体調をお見通しだった。美穂は寝不足で赤い目をしていた。
「いい、美穂ちゃん、自分が正しいと思うかどうかで物事を単純化して割り切ってはダメよ。思いつめちゃうと、自分の考えが正しくて、相手は間違っているとさえ考えてしまうから」
「でも、わたしなりに、ちゃんとしたデータや根拠に基づいて提案してるんですけど」
「たしかにそうかもしれない。でも組織とか人間とか仕事というものは多様性に富んだもので、しかもどんどん変化していくものでしょ。データや根拠といったって、どのデータや根拠に基づくかによって、結論は変わってくるし。だから、これが正解、これが絶対に正しい、というものはないと思うのよ」
「わたしもそれは理解できます。でもどうしても納得できなくて」
「わかるわ。でも自分の考えと現実とがずれているときに、現実が間違っている、人はわたしを理解してくれない、と勘違いして、自分を追い込むだけよ。気分転換をして、こだわりを捨ててしまえればいいんだけどね」
香奈恵の言うことはよく理解できた。
しかし美穂の不眠症は改善されなかった。
数週間後、相変わらず赤い目をして暗い顔の美穂に、香奈恵が言った。
「美穂ちゃん、漢方を試してみたら?」
「漢方ですか」
「漢方薬には、気持ちを落ち着けてくれる作用もあるみたいよ」
美穂はさっそく漢方薬局に行ってみることにした。
■■不眠に効く漢方■■
美穂は漢方薬局で、なかなか眠りにつけない現状や会社でのストレスについて、機関銃のように漢方の先生に話しまくった。不眠以外に、げっぷ、おなかの張り、便秘、イライラなども感じていることを訴えた。
美穂の体調について一通り話を聞いたあと、漢方の先生が話し始めた。
「漢方では“気”の流れを重視します。“気”が充満しすぎると、しなやかな思考ができなくなり、物事にこだわりすぎるようになります。なんでもきちんと仕事をする人や、責任感が強い人にみられることがあります。ひとりで根をつめて仕事をしてしまい、“気”を過剰に充満させてしまう場合もあります 」
「わたしの場合は、そのあたりを改善していけばいいのですか」
「逃げ道のなくなった“気”を捨ててあげると気持ちが楽になります。その結果、眠りに入りやすくなると思います」
「漢方は、酸棗仁湯という処方になりますか」
「いえ、別の処方です」
美穂はあまり納得がいかないような表情で、漢方の先生に訴えた。
「不眠症には酸棗仁湯という処方が効く、とネットに出ていましたが」
「酸棗仁湯もいい処方ですよ」
「では、どうしてわたしのは別の処方なんですか」
美穂の表情を見て、しばらく間をとったあと、漢方の先生が言った。
「漢方は、正しい処方がひとつだけあるわけではありません」
その答えに美穂は少し驚いた。
「正しい処方はひとつではないのですか」
「たとえば、興奮を鎮めることと、眠りを深くすることの、ふたつをする必要がある場合、まず興奮を鎮めてから眠りを深くしていくか、あるいは眠りを深くしてから興奮を鎮めていくか、結果的にはどちらも半年で不眠症の治療ができるとしても、処方は、状況によって違ってきます」
「科学的な根拠付けなどはないのですか」
「人間は精密機械ではありません。どこか調子がわるいときに、電球を取り替えたりペンキを塗り替えたりして元気に若々しくなるわけではありません。人体や体質はひとりひとり違います。多様性に富んでいる存在です。単純に割り切れるものではありません」
「教科書どおりに単純にはいかない、ということですね」
「自分が正しいと考えていることだけに執着していると視野が狭くなり、見落とすことが増え、深い落とし穴に落ちてしまうこともあります」
漢方の先生と話をしているうちに、美穂は、素人の自分がネットで調べた処方より、専門家の先生が判断してくれた処方を飲んでみたくなった。美穂は、漢方の先生が言うとおり、充満しすぎた“気”を捨てる漢方をしばらく飲むこととなった(漢方道の必殺技②)。
■■正解はひとつではない■■
漢方薬を始めるのと同時に、美穂は漢方の先生が薦めたヨガも始めることにした。続けることが大事と言われたので、通いやすい駅ビルのヨガ教室にさっそく申し込んだ。
それから4か月、寝つきはずいぶんよくなってきた。寝ているあいだ、ぐっすり眠っているようで、朝の目覚めもいい。
「漢方を始めて3か月くらいで“気”の滞りがなくなってきたようなので、そのあとは眠りを深くするような処方にしています。いい調子で体質改善が進んでいるようですよ」
「先生、どうしてわたしの体内の“気”の滞りがなくなってきたと分かるのですか」
「先月薬局にいらしたときに、おなかの張りや便秘が解消されてきた、と言っておられましたよね。そういうところに体質の変化が現れてくるのです。便秘なんて不眠症と関係ないようですが、“気”の充満というところでつながっているのです」
からだ全体はひとつにつながっている、そして心とからだも切っても切れない関係にある、という漢方の考え方が、美穂のからだに自然にしみ込んでいった。
「不眠症は中枢神経の病気だから、不眠症の人は睡眠導入剤などで中枢神経の働きを抑制すればいい、という西洋医学とはずいぶん違った考え方ですね」
「漢方の場合は、睡眠導入剤による人工的な睡眠ではなく、自然な眠りです」
会社では香奈恵が美穂に声をかけた。
「最近、よく眠れているんじゃないの。顔色がいいわよ」
うれしそうに、美穂が答えた。
「ありがとうございます。香奈恵さんのアドバイスや漢方のおかげです」
「顔色だけでなく、表情もいいわね」
「わたし、これまでは、これだけ一所懸命に考えたんだから自分は間違っているはずがない、と考えていました。いまでも仕事には前向きに取り組むほうなので、自分の出した結論に自信はあります。でも以前のようなこだわりはなくなりました」
「そうよ、その調子。正解はひとつではないんだから。なにかの偶然やご縁で仕事の方向が決まったら、それが自分が正しいと思っていた方向ではなくても、その方向でまた笑顔で精一杯やっていけばいいのよね」
「仕事や社会や人間の多様性を楽しむって感じですね」
この分だと美穂はますますいい仕事をしていくんだろうな、と香奈恵は思った。
(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)
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