不眠症
眠りたいときに眠れないこと自体が大きなストレス
当薬局では不眠症の漢方治療のご相談をお受けしています。
漢方による不眠症治療の症例は こちら
ひつじが一匹、ひつじが二匹・・・。眠りたいのに眠れぬ夜をすごした経験はどなたにでもあるでしょう。しかしこれが毎日のように訪れてくると体調に差し障ります。
また集中力の低下やいらいら、あせりなど精神面、心理面での悪影響も出てきます。昼間に居眠りをしてしまう症状なども含めると、睡眠障害に悩む人は五人に一人ともいわれています。
眠らなくても死ぬことはないといわれますが、当人にとっては眠りたいときに眠れないこと自体が大きなストレスです。昼間の集中力や思考力の低下など精神面への影響も気になります。
細胞レベルでの老化が進み、高血圧や糖尿病などの慢性的な病気が悪化する可能性があるという報告もあります。免疫機能も低下して、かぜをはじめさまざまな病気にかかりやすくもなります。一日の肉体疲労と精神疲労の回復には、すこやかな睡眠が不可欠です。
不眠症の原因
眠症の原因にまずあげられるのは精神的ストレスです。転勤や転職など大きな生活環境の変化だけでなく、仕事や家庭でのトラブルによる緊張や興奮、不安やいらいらなどが引き金となって、眠れない夜は容易に訪れてきます。
不規則な生活も不眠の大きな要因のひとつです。人間の体内には体内時計のようなものがあり、昼と夜、つまり活動と休息の時間が周期的に繰り返されるようになっています。
ところが夜更かしすることがたびたびあったり昼近くまで寝ている日がときどきあったりすると体内時計に狂いが生じ、寝て休むべき時間に目がさえたりします。
それ以外には仕事のし過ぎ、疲れ過ぎなどによって起こる自律神経系とくに交感神経の緊張が引き金となって眠りにくくなる場合や、ホルモンバランスの乱れ、あるいは神経症などの精神的な要因が関係してくる場合もあります。不眠がうつの初期症状として現れることもあります。
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◆不眠症に対する西洋医学と漢方のちがい
西洋医学では
睡眠薬として現在は主としてベンゾジアゼピン系睡眠薬が用いられます。中枢神経に作用して不安や緊張をやわらげ、眠りに誘います。
超短時間作用型のハルシオン、短時間作用型のレンドルミンやデパスをはじめ、長時間にわたって睡眠作用が持続するものなどさまざまな睡眠薬があり、患者の状態に合う薬物が処方されます。
ベンゾジアゼピン系以外にはバルビツール酸系のものなどがあります。こちらも中枢神経の働きを抑えて眠りに導きます。また抗不安剤や精神安定剤が処方されることもあります。
睡眠薬には、翌朝への眠気の持ち越しや、健忘などの副作用があります。また薬物の連用による依存性や、量を増やさないと効かなくなってくる耐性なども表れます。
漢方薬では
漢方では睡眠を陰陽のバランスの中で大きくとらえています。一日の中で陽にあたる日中は精神活動が活発になり、意識も清明になります。一方、太陽が沈んで陰気が盛んになる夜は意識も落ち着き、穏やかになります。人の体はもともとこのようにできているのです。
実際に不眠の人をみると、夜なのに陽気が必要以上に盛んであったり、日中の陽気を夜間まで引きずりこんでいたりということがよく見られます。こういう場合に漢方薬で夜間の過剰な陽気をしずめたり、陰気の不足を補ったりして陰陽のバランスを整え、自然な睡眠が得られるように向かわせるのが漢方です。
このように人間本来に備わったバランスを取り戻す後押しをするのが漢方薬なので、副作用や依存性の心配はなく、体質改善できれば服用をやめても大丈夫です。ひとつの例をお話します。
不眠症に悩む33歳の女性がいました。仕事が忙しく寝る時間が不規則なのが原因かもしれませんが、寝つきが悪いのが悩みの種です。
寝ようと思って部屋の電気を消しても目がさえてなかなか眠れません。ひどいときには布団に入ってから2、3時間も眠りにつけません。おまけに眠りが浅いようで、夢をよくみます。おかげで逆に昼間に眠くて頭が重く、仕事の効率が上がりません。
半年前に病院へ行って相談したところ睡眠薬が処方されました。薬を飲むとすぐ寝つけますが日中に倦怠感を感じます。現在は薬がないと眠れない気がしてほぼ毎日睡眠薬を飲んでいますが、くせになるのが怖いし、もとのような自然な眠りを取りもどしたいと思い、漢方薬を飲むことにしました。
この女性は、夜間にまで昼間の陽気が影響を残し、陰気が十分充実していないケースです。このような場合は酸棗仁や柏子仁などで夜間の陰気を補って精神活動を落ち着かせ、同時に過剰な陽気をしずめるために黄連や山梔子などを少量用いて改善を進めます。
この女性の場合は漢方薬の服用を始めて2ヵ月後に睡眠薬がまったく必要なくなり、3ヵ月後には陽気をしずめる生薬も不要になり、5ヶ月ほどで漢方薬の手を借りずに自然に眠れるようになりました。
睡眠時無呼吸症候群についても触れておきましょう。これは睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返す症状で、そのせいで睡眠中に十分な休養がとれず、日中ぼうっとしたり眠くなったりします。いびきをかくのが特徴です。
身長169cm、体重85kgの男性で脂肪肝、高血圧、高脂血症で睡眠時無呼吸症候群という男性が、漢方薬を約10ヶ月服用して体重を落とし、すべての症状から回復したりする例もあります。昼間の眠気もなくなりました。不眠ではありませんが十分な睡眠効果が得られない症状を漢方薬で回復させた一例です。
不眠症に効果的な漢方薬
漢方の視点から見ると、不眠悩む人には何種類ものタイプがみられます。
「心火(しんか)」証「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」証「陰虚火旺(いんきょかおう)」証「心胆気虚(しんたんききょ)」証「肝火(かんか)」証「血虚(けっきょ)」証「痰熱(たんねつ)」証 などです。(体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます)
それぞれに応じて漢方薬は異なり、またその程度やどの要因が強いかなど個人差は千差万別なので、当薬局では時間をかけた詳細な問診を行い、本人の状態を丁寧に見極めたうえで最もふさわしい漢方薬を選びます。
比較的よく使われる処方は次のとおりです:
三黄瀉心湯、黄連解毒湯、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯、温胆湯、帰脾湯、四物湯、酸棗仁湯、黄連阿膠湯、六味地黄丸、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、四君子湯、逍遥散、天王補心丹、帰脾湯
あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。
自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。
不眠を改善するための日常生活のアドバイス
日常生活においては、ストレスをためない工夫、心身をリラックスさせる工夫、生活のリズムを作る工夫の三つが大切です。ストレスをためないためには、趣味の時間の充実や運動、週末の気分転換などに積極的に取り組むといいでしょう。
また食事もできるだけゆっくりと楽しく食べ、偏食せずにバランスよく食べるようにしましょう。脂っこいものばかり食べていると気のめぐりが悪くなり、ストレスに対する抵抗性が下がります。
心身をリラックスさせるためには、ぬるめのお風呂に入ったり、アロマテラピーを活用したり、心を落ち着かせる音楽を聴いたりするのもいいでしょう。
生活のリズムを作るためには、起床時刻を一定にするのが一番です。仕事のない日曜日でも、寝る時間が遅かった翌朝でも、いつもの時刻にいったん起きるのがコツです。
睡眠時間は人それぞれです。大人は一日何時間の睡眠が必要、というものはありません。睡眠薬に頼り続けることなく、あせらずに自然な睡眠を取りもどしてください。
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