うつ病(鬱病)

◆抑うつ → 軽症うつ → うつ病のプロセス

当薬局ではうつ病(鬱病)の漢方治療のご相談をお受けしています。

漢方でうつ病が改善した症例は こちら

外に出かけたくない、会社に行きたくない、気分がすぐれない、家事や育児を投げ出したい、なんとなく体調が悪い、人に会いたくない--このように感じるときって、だれにでもありますよね。でもそれが何週間か続いたり日常生活に支障をきたしたりするようになると、ちょっと心配です。

気分の落ち込みや無気力、憂うつ感はだれにでもある感情の動きで、抑うつとよばれます。心身の活力やエネルギーが低下している状態です。

軽い程度の場合はうつ状態あるいは軽症うつ病とよばれ、これが数週間以上続くような場合がうつ病です。近年では、軽症うつ病の人が増えています。軽いうつ状態に対して気分障害とよばれることもあります。

精神的にはうつ状態ですが頭痛や動悸、めまい、食欲不振などの身体症状が同時に現れて、本人がうつ状態であることに気がつかない場合もあり、これは仮面うつ病とよばれます。いろいろな科に行きますが検査をしてもとくに異常が見つかりません。この仮面うつ病も最近、増加傾向です。

うつ病といえば昔は会社の倒産や離婚、親しい人との急な死別など悲観的な背景がある場合が多かったのですが、最近では職場や学校、家庭でのストレスが引き金になっている場合が圧倒的に多いようです。うつの人は、軽症の人も含めると人口の約5%いるといわれています。

うつ病を放置すると重症化し、最悪の場合、自殺を考えるようになります。うつ病で自殺をする人は交通事故の死亡者数より多く、年間に1万人以上いるとされています。早めに手を打つのがいいでしょう。

最近パニック障害のかたも増えています。理由がはっきりしないまま、突然、動悸や息切れ、手足の震え、息苦しいなどの症状が現れる病気です。救急車で病院に運び込まれることもありますが、検査をしても異常は見つかりません。

さらに一度この発作を経験すると、また同じような発作が起こりはしないかと不安になり、外出もままならなくなります。この場合もうつの改善と同じような方法で対応することにより精神の安定が取り戻され、自然に回復していくことが多いので、ここに追記しておきます。

 

◆うつになりやすい人


うつ病になるのは責任感が強くまじめなかたが多いようです。仕事の失敗を自分だけのせいにして抱え込んだり、人知れずがんばり続けたりしているうちに、精神の身動きがとれなくなっていきます。

几帳面で完璧主義な人柄は仕事のできる有能な社会人といえますが、一方ではストレスをためこみやすく、うつになりやすいタイプでもあります。

人間だれしも継続的な過度のストレス状況に置かれると心身ともに衰弱し、自分を肯定する気持ちも弱くなるそうです。そうなると自分の存在意義や生きる目標などもわからなくなり、自分に自信がもてなくなり、なにごとに対しても無気力になっていきます。

長期にわたる疲労が累積して心身が弱り、その結果うつ状態になる場合もあります。ほうっておくと過労死なんてことにもなりかねません。ちょっとした疲れが慢性疲労そして過労ということになる前に対処してください。

詳しくは「疲労倦怠感」の項も参考にしてください。

 

◆うつ病に対する西洋医学と漢方の違い


西洋医学では

うつ病やうつ状態にはおもに抗うつ剤が使われます。抗うつ剤は脳神経を直接刺激して神経伝達物質の量を増やし、精神活動や感情を薬でコントロールします。

副作用がありますが、最近では特定の神経伝達物質にのみ働きかける抗うつ剤もあり、副作用は軽減されています。

デプロメール、ルボックス、パキシルなどの選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)やトレドミンなどのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)がそれです。

ただし吐き気や眠気などの副作用や、効き目が十分でない例も少なくないようです。なお抗うつ剤は効果が現れるのに約2~3週間かかります。

漢方では

漢方では二つの角度から治療を進めます。一つはストレスに対する抵抗性の高めていく漢方薬です。ストレスに対する許容量を大きくして、強い刺激によって心が折れる危険を和らげます。

二つ目は、心身の活力を充実させることです。心身が弱っていると、通常であれば特に気にならない程度のストレスにも敏感に反応し、落ち込みや抑うつ状態が表れます。

弱った心身に活力とエネルギーを与える漢方薬により、うつ状態から回復させたり、刺激に対していい意味で鈍感にしたりします。

うつに大きく関わるのは五臓のの(かん)です。肝は、身体の諸機能を調節する臓腑で、自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。

このの機能が失調したり、弱ったりすると、精神的なコントロールがうまくできなくなり、抑うつ状態となります。

心配、不安、怒り、思い悩みなどの感情の起伏が限度を超えると気の流れが滞り、それが気血や臓腑に影響を及ぼし、うつ病となるのです。ことが思いどおりに運ばない、思いが遂げられない、ということが引き金となる場合もあります。

漢方には七情内傷といって感情があるレベルを超えたときに心身がバランスを失い病気になることがある、という考えが昔からありますので、うつに対して効果を表すことがよくあります。

の失調以外には、人間の意識や思惟など、高次の精神活動をつかさどる五臓の(しん)や、消化吸収をして気血を生成する(ひ)の機能失調とも深い関係にあります。

当薬局では、個人個人の内部でこれらの心身の機能などがどのように失調しているかを注意深く見極めたうえで、それに対する最も適切な漢方薬によって治療をすすめます。

 

◆うつの6つのタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>

(1)「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証

ストレスの影響などで肝の気(肝気)の流れが悪くなっている状態。うつ病の初期に多い。

肝鬱気滞で出やすい症状
憂うつ感、吐き気、脇痛、腹部膨満感、残便感、便秘と下痢を繰り返す、赤い舌 など

→ 肝気の鬱結を和らげてストレス抵抗性を高める漢方薬を用います。

(2)「肝火(かんか)」証

ストレスや感情の起伏が激しい、または長期化したため(1)の肝鬱気滞が極まり熱を帯びた状態。

肝火で出やすい症状
(1)の肝鬱気滞の症状に加えて 怒りっぽい、胸苦しい、吞酸、口渇、口が苦い、頭痛 など

→ 熱をさまし、肝気の鬱結を和らげてストレス抵抗性を高める漢方薬を用います。

(3)「気滞痰飲(きたいたんいん)」証

ストレスなどで生じた肝鬱が消化吸収を担う脾の機能(脾気)を停滞させた状態。

その結果生じた痰飲(体内に停滞する異常な水液)が上逆して気鬱を引き起こす。

気滞痰飲で出やすい症状
吐き気、吃逆、噯気、咳嗽、べっとりとした白い舌苔 など

→ 痰飲を取り除く漢方薬を用います。

さらにこんなケースも
さらに不眠、動悸などがあり、舌苔が黄色くべっとりしていれば「痰熱(たんねつ)証」なので、熱をとる作用もある漢方薬を用いる。


(4)「心血虚(しんけっきょ)」証

心の機能を養う心血が不足して、心の精神活動が不調になった状態。長引いているうつ病に多い。

過度の心労や、思い悩み過ぎ、過労が続くことにより心に負担がかかり、心血が消耗してこの証になる。

心血虚で出やすい症状
驚きやすく、すぐ泣く、寝つきが悪い、不安感が強い、めまい など

→ 心血を潤す漢方薬を用います。

(5)「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」証

過労や思い悩み過ぎが原因で心血と脾気が損傷している体質。心の栄養不足に加え、脾の失調で元気が失せてやる気がなくなりうつ病を発生。

心脾両虚で出やすい症状
倦怠感、不眠、夢をよく見る、軟便、白っぽい舌の色 など

→ 心血と脾気を補う漢方薬を用います。

(6)「陰虚火旺(いんきょかおう)」証

人体を構成する陰液(血や体液など必要な水分)が消耗し、相対的に熱邪が旺盛になった状態。

慢性的な体調不良や過労、生活の不摂生、緊張の連続などが原因。

陰虚火旺で出やすい症状
めまい、動悸、怒りっぽい

→ 陰液を補う漢方薬を用います。

 

◆うつに効果的な漢方薬

上記のようにうつのタイプによって治療法が異なるため、使われる漢方処方も数多くあります。

複数のタイプが混合している場合や上に挙げた以外の要因が強い場合など、個人差は千差万別なので、実際には時間をかけて問診し、じっくりと体質を見極めたうえで慎重に処方を選びます。

自分にベストの処方を知るには、漢方の専門家に相談するのが近道です。

比較的よく使われる処方は以下の通りです:
四逆散、六君子湯、小柴胡湯、大柴胡湯、加味逍遙散、半夏厚朴湯、温胆湯、甘麦大棗湯、酸棗仁湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、帰脾湯、加味帰脾湯

あなたに合った漢方薬ですと、飲み続けるうちに体質が改善され、ストレス抵抗性が高まり、気力が充実し、気分がゆったりしてきます。

病院の薬も少しずつ減っていくことでしょう。うつ体質そのものを漢方薬で改善してみてはいかがでしょうか。

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◆うつ治療における日常生活のアドバイス


日常生活においては、とにかくしっかり休養をとることが重要です。また食事も穀物や野菜、小魚類を多めに、消化のよいかたちでとるようにするといいでしょう。


家族や周りの人も接し方に気を使い、その人の回復をやさしく支えるのが大切です。本人はがんばろうと思ってもがんばれない状況にいますので、あまり励まさないようにしてください。それがまた新たなストレスになってしまいます。

うつ病の人は一見なまけているかのように見えますが、本来しっかりした社会人であることを忘れずに接するようにしましょう。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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