自信喪失からの「うつ」、漢方で回復へ
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、仕事と育児の両立が限界となり「うつ病」診断を下された女性が漢方で自分を取り戻していく話です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■何ごとにも自信がなくなり、うつ病に■■
育児というものが、こんなにたいへんなものだとは知らなかった。
亜矢子には女の子がひとりいる。夜泣きがひどく、寝ているあいだに何回も起こされる。おねしょもよくするので早朝から洗濯機を回す。そしてすでに疲れきった状態で出勤する。朝、夫婦のどちらかが保育園に子どもを預けて出勤している。さらに病気がちな子なので、急に病院に連れて行かなくてはならないことも多く、育児ストレスはたまる一方である。
当然、会社にも迷惑をかけていることになる。子どもが小さいうちは仕方ないよ、と上司や仲間は言ってくれるが、亜矢子はそんなことで会社に甘えたくない。周囲の心遣いには感謝しつつ、頑張るつもりでいた。今年で20代最後。まだまだ体力はあると思っていた。
しかし正社員としての会社勤務と子育ての両立は、亜矢子の体力と気力をじわじわと奪っていった。仕事中に強烈な睡魔に襲われることが多くなり、集中力が欠けてきたのか、平凡なミスでしかられることが増えた。先日は退社後に保育園に子どもを迎えにいったあと帰宅してお茶でも飲もうとお湯を沸かしはじめたところでソファでうとうとしてしまい、ハッと気がついたときにはガスのつけっぱなしで部屋のなかが異様な蒸し暑さになっており、変なにおいが充満していて、あせった。やかんをひとつ駄目にしただけで済んでよかった。夜遅く帰宅した夫は、黒こげになったやかんを見て心配そうにしていた。
ある夏の暑い日、子どもを乗せて車の運転中にめまいに襲われた。あわてて路肩に車を止めて休んでいるうちに落ち着いたが、それ以来、怖くて運転ができなくなった。そんなことが続くなかで食欲もなくなり、あっという間に体重が3キロ減った。体重が急に減ったせいで体力が低下し、仕事も家事も頑張れなくなっていった。
こうして少しずつ、何ごとに対しても自信喪失の状態になっていった。
やる気や意欲がわかない。車の運転どころか、とうとう洗濯も掃除もできない状態になった。やらなきゃと思っても、からだが動かない。台所には、夫が帰ってきて洗ってくれるまで、朝ご飯を食べたあとの食器がそのまま、残っている。
朝も起きられない。出かけようと玄関まで行っても、靴が履けない。いままでふつうにできていたことが、何もできなくなった。ひとりで外出することもできなくなった。
夫と一緒に病院に行き、うつ病と診断された。会社はしばらく休職させてもらうことにした。
最後に会社に挨拶に行ったとき、親しい先輩の千里が漢方薬をすすめてくれた。
「漢方薬、ですか」
「そう。わたしの場合は漢方薬で血流を調えて子宮内膜症を改善したけど、心とからだのバランスを調える漢方もあるみたいよ」
心とからだのバランスか。自分にはぴったりかもしれない。
亜矢子も漢方薬局に行ってみることにした。
■■うつ病に効く漢方■■
亜矢子は夫に連れられて家族三人で漢方薬局を訪れた。カウンセリング室で、最初は緊張してうまく話せない亜矢子だったが、漢方の先生がやさしく話を聞いてくれるせいもあり、15分もすれば自分の気持ちを話せるようになった。いまは何をするにも自信がないことや、家事や子育てなど、やらなきゃいけないとわかっているけど、からだが動いてくれないことなどを話した。
カウンセリングの最後に「舌をみせてください」と漢方の先生に言われ、舌を出した。舌の表面についている苔状のものが部分的にはがれていた。
「亜矢子さんの場合、仕事や子育てに相当頑張りすぎたせいで、簡単には復旧できないくらいにまで気力が落ち込み、五臓六腑のバランスが崩れてストレスに対する抵抗性が下がってしまったようです。その結果、心とからだのバランスがわるくなってしまったのでしょうね」
漢方の先生は、五臓六腑の資料などを示しながら、そう説明してくださった。しかし、漢方の先生がおっしゃる気力の落ち込みのせいか、難しい話はなかなか頭に入ってこなかった。
「こういう場合、漢方ではまず五臓六腑のバランスを調えることにより、心身のバランスを元気な状態に戻し、うつ病を改善していきます」
漢方の先生がおっしゃるには、漢方薬でうつ病を治療する場合、おもに二つのアプローチがあるという。ひとつは心身の活力を補って元気にしていく方法(漢方道の必殺技①)であり、もうひとつは五臓六腑のバランスを調えてストレスに対する抵抗性を上げ、心身を安定させていく方法(必殺技④)だそうだ。
亜矢子の場合はその両方が必要だが、まずは心身のバランスを調えるべく、その日から五臓六腑のバランスを調える漢方薬を飲むこととなった。
■■漢方薬で心身のバランスが安定■■
夫は亜矢子とは別の会社の総務の仕事をしていたが、先日、憧れの営業に異動となった。自宅からさほど遠くない営業所勤務である。亜矢子たちが住む町の特産品を全国に販売する会社である。毎日、汗びっしょりになって帰ってくる。あまりに汗をかいているので聞くと、営業所の倉庫で在庫管理の仕事をしているという。
「あら、営業のお仕事ではなかったの」
「まずは倉庫番だそうだ」と夫はさわやかな口調で答えつつ、冷蔵庫からビールを取り出した。
あんなに営業の仕事をしたかったのに、営業所に配属されたと思ったら、仕事は営業所の倉庫番だったとは。
ちょっと気の毒な気持ちで夫を見ると、夫は満足そうにビールを飲み干している。まあ、本人が気に入っているならいいか、と思い、その話はそれで終わった。
亜矢子のほうは、会社を休職し、家事や子育ては全面的に夫にバックアップしてもらいつつ、漢方薬を服用する日々が続いていた。
会社を休職したころには、この先どうなるのだろうかと周囲の人たちも心配していたが、4か月ほど経ったころには漢方薬が効いてきたようで、ひとりで外出できるようにまでなった。
ある日、たまたま夫の会社の前を通りかかったとき、夫がてきぱきと商品の入った段ボールを両手で抱え、あちらからこちらへ、そして奥から手前へと運んでいるのが見えた。どんな仕事でも懸命にする夫の姿をしばらく遠くから見ていた。朝アイロンをかけたばかりの白いシャツがすでに薄汚れていたが、亜矢子はうれしかった。
そのとき事務所から営業所長が出てきて夫になにか話しかけた。夫と所長がニコニコと談笑しているのが見えた。
その日の夜、夫は帰宅するなり弾む声で「来週、うちの一番のお得意さんのところに所長と営業に行くことになったよ」と亜矢子に話した。昼間に所長に言われたんだ、と夫は言う。きっとあのときの会話だな、と亜矢子は思ったが言わなかった。 所長からは「ずっと総務畑にいたお前には、営業に出るために必要な商品知識が足りなかった。だから倉庫番をやらせていた。商品の知識を身につけるには倉庫で商品に接し続けるのが一番だからだ。そしてお前は期待どおり商品知識を身につけた。あしたからはおれと一緒に得意先を回るぞ」と言われたそうだ。夫はそんな話をしながら嬉しそうにビールを飲み干した。
亜矢子も頑張る気がむくむくと湧いてきた。漢方を飲み始めて5か月、家事も子育ても昔のように元気にできる。心とからだのバランスは、もとのように安定したと実感できる。仕事に早く復帰したい。
来週、久しぶりに会社に行って、復職について上司に相談しようと思う。
(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)
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