漢方で「うつ病になりにくい体質」に変身!
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
明るい後輩が異動してきたことから心身に不調が出て軽いうつ病と診断された秘書の女性が漢方薬で立ち直っていく話です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■うつ病、と言われても■■
「由加さんは、軽いうつ病ですね」
診療所で医師にそう言われたときは、びっくりした。
「うつ病といっても、よく“うつ病は心のかぜみたいなもの”と言われるように、そんなに深刻に考えることはないですよ」
先生のことばに少しはなぐさめられた気もしないではないが、こんなに落ち込んでいるわたしが“うつ病”なんて言い切られると、ますます落ち込んでしまう。
「まあ、軽いうつ病の薬を出しておきますから、しばらく飲んでみてください」
それは小さな白い錠剤だった。こんなちっぽけなものでわたしの心が晴れるのかと思うと、どうにも割り切れない思いがした。人の心まで、こういった薬でコントロールしてもいいのかしら、と、精神的に滅入っているわりには冷静に考えることができた。
わたしは、ある上場企業の役員秘書をしていた。
仕事は忙しかった。もちろん入社数年目のわたしが、会社の経営方針を決めていく役員に意見を求められることなどなく、ただ言われたことをきちっとしていればよいのであるが、ミスのないようにスケジュール管理をしたり、資料の準備を前もってしたり、役員が仕事をしやすいように細かいところにも気を配ったりと、かなり神経を張りつめて仕事をする必要があった。
昼休みも役員のスケジュールに合わせて不都合のない時間にとらねばならず、他の部署の同期の友だちとお昼を一緒に食べられるのは、役員が出張している日くらいであった。
それでもわたしは秘書の仕事が好きだった。会社の中枢にいる気がしていたし、仕事をひとつひとつ丁寧にこなしていくわたしの性格に合っていると思っていた。学生時代の友だちと会って話をしても、「由加、かっこいいわね」とか「その仕事、うらやましいわ」と言われることが多かった。
ところが名古屋工場長が昇格して東京本社の役員になってから、事態が急変した。
その役員は、秘書の女性をそのまま名古屋から連れてきた。その女性は明るく元気で、年はわたしよりも若かった。その日から一緒に秘書室で仕事をすることになった。
■■”こころ”にも漢方は効く■■
その女性は仕事をするのが速かった。要領よく、大事なことから済ませていった。こつこつと仕事をするわたしにとって、それは勉強になったがストレスにもなった。
たとえば整理整頓や清掃は、その女性にとって後回しにされる仕事だった。でもきれい好きのわたし自身にとって、それは優先順位の高い仕事だった。結局、公共部分の整頓や掃除はわたしばかりがすることになった。
朝、給湯室に入ると、雑然と散らかったままのことが多くなった。役員応接室の椅子がきっちりそろっていなくても、名古屋から来た秘書の子はまったく気にならないようだった。
そのうち、体調がわるくなってきた。食欲がなくなり、吐き気を感じやすくなった。ふらふらとめまいがすることが多くなった。
家に帰ってもぼうっとしてすごす日が多くなった。いろんなことに対して気力がわかなくなった。
さらに毎朝、出かけようとするときに急に激しい吐き気に見舞われるようになった。乗らなければならない電車に乗ろうとすると、めまいがして足がすくみ、動けなくなった。とうとうときどき遅刻をするようになってしまった。
いまのわたしは、本来のわたしではないように思った。上司に相談し、社内の診療所に行った。そこで軽いうつ病と診断されたのである。そして総務部への異動の辞令があった。
総務部ではストレスが少なく、薬もきっちり飲んでいたので気分的には楽になった。でもうわさは広まっていたようで、仲良しの友子が心配そうに話しかけてくれた。
「ねえ由加、だいじょうぶなの?」
「うん、たいしたことないわよ。ありがとう」
由加は最近のことを友子に話した。
「あ、その薬なら同じ部の先輩も飲んでいるわよ。やっぱり同じようにストレスで激しい頭痛に見舞われるようになって、でもその薬を飲んでいると落ち着くらしくて、もう1年以上飲み続けているみたいよ」
「1年以上も?」
「うん、飲まないとまた頭痛に見舞われるんですって」
どうしよう、そんなにずっと、この小さな錠剤に頼って症状を抑えるのはいやだわ、とあせっていると、友子が言った。
「漢方薬で体調を整えてみたら?」
■■基本は、やっぱり体質改善■■
「そうですか、うつ病と言われてしまいましたか」
友子が薦めてくれた漢方薬局で話をすると、先生はにこやかにそう言った。
「しかたないですね、西洋医学では病名をつけないことには治療のやりようがありませんからね」
「漢方では病名がなくても治療ができるのですか?」
「そうですよ。“未病を治す”っていうのを聞いたことはありませんか? 未病というのは半健康状態。つまり病気になってしまう前に改善してしまおう、というのが漢方のいいところです」
「いちいち病気に持っていかなくてもいいわけですね」
「そうです。うつ傾向にある人が“あなたはうつ病です”なんて言われると、ますます落ち込んでしまいますよね。それよりも、うつ傾向がひどくなったり、うつ病が悪化したりしないように、体質を強化すればいいのですよ」
「うつ病になりにくい体質に、ですか?」
「そうです。一時的なストレスによる軽いうつ病なら、環境が変わったりすればそのうち治ります。でも体質を強化しておかないと、また同じようなストレスを感じたときに、同じような抑うつ状態になってしまいます。ところでいまどんな薬を飲んでいますか?」
わたしは診療所で処方された白い錠剤を漢方の先生に見せた。
「あ、これはよく使われる抗うつ剤ですね。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)といって、直接脳神経に作用して人工的に精神活動をコントロールしますが、これまでの薬より副作用が少ないとされています」
「副作用が少ないとはいえ、できれば飲みたくないです」
「漢方では、ストレスに対する抵抗性を高めるという方法で、うつ病を改善することが多いです」
「ストレスに対する抵抗性、ですか?」
「そうです。ストレスが原因となって引き起こされる病気を総じて“ストレス病”とよんでいますが、うつ病はその代表的なものです。いまの場合、ストレスに対する抵抗性を高めることが、すなわち、うつ病にかかりにくい体質づくりになります。まさに体質改善ですね」
わたしの場合、食欲不振や吐き気、めまいのほかに、寝つきがわるい、眠りが浅い、それに不安感などの症状があった。そういうときは当帰や熟地黄などの漢方生薬を用いて “心”を補うことにより、体質を強化するといいそうだ(漢方道の必殺技①)。さっそくきょうから漢方薬を煎じることにした。
総務部に移ってしばらくしたころに、名古屋から来た秘書の子が「ひとくちアップルカップ」を持ってきてくれた。相変わらず明るく元気で、にこにこしながら近づいてきた。そういえば料理が好きだと言っていたっけ。
「由加先輩、お久しぶりです。お元気ですか」
とても素直にまっすぐこちらを向き、その子はそう言った。こちらがうろたえるくらい、まっすぐだった。
わたしは、どうしてこの子を嫌っていたのだろう。ひょっとして、わたしは自分で作ったイメージに縛られていたのではないだろうか。
たとえば、秘書ってかっこいい仕事、名古屋って地方都市、工場って暗い感じ、整理整頓もできないなんてダメな社員……。
今から考えれば、そんなのみんな、わたしが勝手に決めたイメージだったみたい。本当は、どんな仕事も会社にとって、とても大事。どんな人も、会社のために一生懸命に働いている。なんだか自分が恥ずかしくなってきた。
「うん、元気よ。ありがとう」
わたしもまっすぐに彼女の方を向いて、ありがたくお手製のカップケーキをいただいた。よし、きょうからまた元気に仕事をがんばるぞ。
(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)
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