更年期障害
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
◆更年期障害の背景と症状
当薬局では更年期障害に関する漢方治療のご相談をお受けしています。
更年期障害の漢方治療の症例は こちら
更年期障害は、女性の更年期に、内分泌(ホルモン)の機能低下や自律神経機能の失調にともなって表れるさまざまな精神的症状や肉体的症状のことです。更年期は、閉経年齢の50歳を中心に、45歳から55歳くらいまでの期間をさしますが、更年期障害の症状は、早ければ30歳代から表れることもあります。
若年性更年期障害についてはこちらをご覧ください → 若年性更年期障害
更年期障害の原因には、卵巣の加齢などによるエストロゲンというホルモンの分泌低下を中心に、自律神経系の失調、心臓血管系 の障害などが含まれます。また30歳代後半から40歳代にかけて生じる、消化器系や腎臓膀胱系、皮膚や筋肉などの機能低下も関係し てきます。社会的なストレスや老後への不安感などが要因となる場合も多く見られます。
更年期障害の症状は多種多様であり、とくに不定愁訴が多く、また愁訴が変化しやすいのも特徴です。よく見られる具体的な症状 は次のように多岐にわたります:
頭痛、頭重、物忘れ、冷え症、情緒不安定、憂鬱感、いらいら、のぼせ、熱感、多汗、肩こり、動悸、不眠、便秘、肥満、下腹 部痛、腹痛、腰痛、過多月経、不正出血、膀胱症状 など
◆更年期症状に対する西洋医学と漢方の違い
西洋医学では、エストロゲン、アンドロゲン、男女混合ホルモンなどのホルモン剤による治療が主流になります。また向精神薬や 精神安定剤、自律神経薬を用いて自律神経の失調を改善させることもあります。
薬が作用している間は、ホルモンバランスが調節さ れ、自律神経失調による不定愁訴も緩和されますが、あくまで対症療法です。
また過多月経や肝機能障害、胃腸障害、嗜眠傾向、男 化徴候、がん化の問題など、副作用も無視できません。
一方、中医学(中国の医学)では、更年期を中心に起こるさまざまな体全体の不調(アンバランス)を調えることにより、更年期 障害の諸症状を緩和します。とくに漢方薬にはホルモンのバランスや自律神経系を調整する働きが強くあります。
中医学では、「心 身一如」といって、精神と肉体を切っても切れない関係ととらえる考え方が根本にありますので、更年期障害の諸症状には効果的で す。
◆更年期症状が出やすい3つのタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方では証(しょう)といいます>
(1) 「腎陽虚(じんようきょ)」証
女性ホルモンと関係が深い五臓の「腎」機能の低下とともに、その他の機能の低下を伴います。冷えを伴う症状が多く、胃腸や泌尿器科系の機能低下も多くみられます。
更年期障害というとホットフラッシュなど熱感を伴う場合が多いようですが、このように冷えに悩まされるケースも少なくありません。
◎腎陽虚で出やすい症状
冷え(特に腰から下)、生理の量が少ない、不正出血、頻尿、失禁、むくみ、髪の質の低下・脱毛・健忘、骨量の低下、血圧の上層、動悸、息切れ、舌が白っぽくぽっちゃりしている など
(2) 「腎陰虚(じんいんきょ)」証
女性ホルモンの低下とともに、体液などの基礎的物質の減少に伴う相対的な機能亢進がみられます。水分の減少によって相対的に熱が過剰になり、熱証が生じます。
◎腎陰虚で出やすい症状
ホットフラッシュ、汗、手足のほてり、便が固い、便秘、痔、関節痛、耳鳴り、めまい、舌が赤い など
(3) 「肝気鬱結(かんきうっけつ)」証
自律神経系や情緒の安定と関係が深い「肝」の機能が乱れます。肝の機能は、精神的なストレスなどで乱れますが、ホルモンバランスの急激な変化にも影響を受けます。ひどくなると熱を帯びます。
◎肝気鬱結で出やすい症状
いらいら、怒りっぽい、憂鬱、不安、感情のコントロールができない、動悸、便秘と下痢を繰り返す、頭痛、肩こり など
◆更年期障害によく使う漢方薬
更年期障害には、その人の体質により、さまざまな漢方薬が使われます。おもな漢方薬は以下のとおりです。
八味地黄丸、牛車腎気丸、五積散、温経湯、当帰芍薬散、杞菊地黄丸、六味地黄丸、知柏地黄丸、滋陰降火湯、四逆散、半夏厚朴湯、逍遙散、加味逍遙散、竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、女神散、黄連解毒湯
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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