イライラ
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
病気とみなされない「イライラ」は、漢方で改善できる
イライラすることは、別に病気でも何でもなく、ほとんど誰もが経験することです。
しかし、できればイライラしないで過ごしたいものです。イライラばかりしていては、気分が落ち着かず、自分が楽しくないだけでなく、他人にも不快な思いをさせます。
じっとしていられなくて、仕事や趣味に集中できません。眠れなくなったり、自己嫌悪に陥ったりすることもあるでしょう。
実際、すぐにイライラしてしまうことで悩んでいる方は少なくありません。またイライラしやすい家族の性格が何とかならないか、困っているという話もよく聞きます。
このようなイライラは西洋医学では治療の対象となりませんが、漢方では改善が可能です。
当薬局ではイライラするタイプだった方が、漢方薬を服用するうちに体質が変わり、イライラを感じなくなった例は珍しくありません。
イライラの背景にある体質的な要因を見極め、その問題点を改善することで、イライラの出にくい体質に変えることができるのです。(症例紹介ページは こちら)
たとえば同じようなストレスがかかっても、すぐイライラする人もいれば、ぜんぜんイライラしない人もいます。
また、生理前や更年期でイライラしてしまう、疲れているのでちょっとしたことでイライラする、などということもあります。ストレスの強弱だけでなく、体質的な要因で、イライラしやすかったり、あまりイライラしなかったりするのです。
別の治療目的で漢方を飲み始めた患者さんが、体質改善の結果、イライラしやすかった性格の方もすっかり穏やかになったという例もよくあります。
漢方では、イライラは熱邪の仕業と捉えています。心神が火熱によってかき乱されると、イライラが生じます。
◆イライラが出やすいタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「心火(しんか)」証
心神をつかさどる五臓の「心(しん)」が燃えさかっている状態です。じっとしていられず、あせりを感じ、落ち着きません。心火を冷ます漢方薬でイライラを鎮めます。
(2)「肝火(かんか)」証
情緒や自律神経系をつかさどる五臓の「肝(かん)」に過剰な熱がこもっています。怒りっぽい、すぐかーっとなる、ヒステリー、といった症状がみられます。漢方薬で肝にこもる火邪をさばきます。
(3)「肝鬱(かんうつ)」証
五臓の「肝」の気の流れが鬱滞しているため、小さな刺激に対しても敏感になっており、イライラしやすくなっています。肝気の鬱結を和らげる漢方薬で、イライラしやすい体質を改善していきます。
(4)「陰虚火旺(いんきょかおう)」証
火熱を冷ますのに必要な陰液が不足している体質です。ふつうならイライラしない些細なことにも反応しやすくなっており、いら立ちます。漢方薬で陰液を補います。
***
心火と肝火は、イライラの種がどんと大きくのしかかったときや、いくつかのイライラの種が積み重なって大きくなったときにみられやすい証です。
肝鬱と陰虚火旺は、ちょっとしたことに対しても慢性的にすぐイライラしやすいタイプの証です。
以上の証のほかに、体内の過剰な水液が熱をもった「痰熱(たんねつ)」証、肝の陰液が不足して肝の機能が失調して内風が生じる「肝陽化風(かんようかふう)」証なども、よくみられます。
◆イライラに効果的な漢方
黄蓮解毒湯、三黄瀉心湯、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯、四逆散、加味逍遙散、大柴胡湯、六味地黄丸
***
漢方薬による体質改善をして“あまりイライラしない体質”に変身していくのと並行して、ものの考え方を少し変えることも有効です。
漢方の考え方のひとつに「現状を甘受する」というのがあります。まず現実を受け止める、という漢方思考です。高い理想を目指し、そこから自分はどれくらい劣っているかと考えるのではなく、まず現状を甘受し、そこからできることを一歩ずつ進めていきます。
力にまかせて物事を解決するのではなく、快不快といったおのれの感情を判断基準にするのでもなく、自分自身もこの自然界の一員に過ぎないという、これも漢方思考の一つですが、そういう視点で日常の些事と付き合っていくのも楽しいものです。
***
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
関連する記事を読む
自律神経失調症|精神症状一般|
月経前症候群(PMS)|更年期障害|若年性更年期障害|
- イライラが改善した症例 (改善症例)