漢方で毛穴を小さく目立たなく

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(東京 帝国ホテル東京内漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方エッセイ


■■過剰な皮脂を漢方でコントロール■■

 食品メーカーの研究所に勤める26歳の女性の悩みは毛穴の開きです。てかてか光る顔の皮膚に毛穴が目立ちます。

 もともと皮膚は脂性で、若いころはにきびもよくできていました。最近ではにきびは減ったものの、小鼻のまわりを中心に、毛穴が目立ちます。

 洗顔を丁寧にしているつもりではいるのですが、顔を洗ってもすぐに皮脂が出てきて顔が脂っぽくなります。脂とり紙を使いますが、効果があるのはそのときだけです。毛穴をかくすようにお化粧をするのですが、化粧品もうまくのってくれません。化粧くずれも悩みの種です。

 ――何とかならないかしら、私のオイリースキン。

 私たちのからだは、皮膚に包まれています。肌が乾燥しやすいか、あるいは脂っぽいかは、皮膚、とくにその一番外側の層である角層に含まれる水分量と、角層の表面に広がる皮脂の量、このふたつの要因で決まります。角層内の水分量が減少した状態が乾燥肌(ドライスキン)、そして冒頭の女性のように皮脂の分泌量が過剰になった状態が脂性肌(オイリースキン)です。

 皮脂は、角層から水分が蒸発していくのを防いでくれます。しかし多すぎると肌が脂っぽくなり、顔全体、とくに額から鼻にかけてのTゾーンが光り、毛穴が開きます。にきびの原因にもなります。

 さらに皮脂の分泌が過剰になると、毛穴が大きくなり、目立つようになります。肌のきめも粗く見えるようになります。皮脂の影響で肌がてかり、赤みが生じることもあります。

 肌の乾燥状態や皮脂の量は、ちょっとした疲れや睡眠不足、食事の不摂生、精神的なストレス、ホルモンバランスのくずれなどによって変化します。漢方では、漢方薬を用いて内臓の機能や心身のバランス、ホルモンの状態や体調そのものを調整することにより、肌の調子を整えます。からだの内側から肌の状態を改善することになります。

 冒頭の女性の場合は、皮脂の分泌を漢方で調整していくことになります。過剰な皮脂を捨てる(漢方道の必殺技2)漢方生薬を中心に、ホルモンバランスを調える(必殺技4)生薬を一緒に煎じて服用してもらいました。

 効果は比較的早く現れました。初めのうちは漢方薬を飲んでいないと皮脂のコントロールがうまくいきませんでしたが、10カ月後には漢方薬を飲まなくてもすべすべの肌を維持できるようになりました。もちろん毛穴も目立たなくなり、脂性の悩みからも開放され、お化粧を楽しめるようになりました。


■■毛穴の黒ずみ対策■■

 旅行会社で添乗員をする31歳の女性の場合は、黒ずんで目立つ毛穴が悩みです。小鼻のまわりを中心に、毛穴が目立ちます。

 エステに通いましたが効果は一時的でした。皮膚科にも行き最新の治療法といわれるものを試しましたが、肌への負担が大きくて逆に炎症を起こし、また痛みもあったので途中でやめました。からだの内面から改善していく必要性を感じました。

 仕事がら屋外で紫外線を浴びることが多く、その影響もあるとは思っていますが、何とか毛穴の黒ずみを目立たなくしたいと思っています。

 ――少しでも目立たなくなればいいんだけど。

 毛穴の中に過剰な皮脂が放置されると、角栓とよばれる皮脂のかたまりができあがります。ここにほこりや汚れが混ざると、さらに固まりやすくなります。そして時間がたつと、皮脂は毛穴の中で酸化して、黒くなってきます。これが、毛穴が黒ずむ原因のひとつです。

 さらに酸化した皮脂や紫外線の影響で毛穴付近の皮膚が疲れ、そこにメラニン色素が沈着するようになります。こうなると、黒ずみはますます目立つようになります。

 漢方では皮膚の代謝を改善することにより、毛穴の黒ずみを改善していきます。皮脂のかたまりである角栓が黒ずんでいる場合は、もちろん洗顔など肌のお手入れをしてそれを取り除く必要があります。しかし皮膚自体の疲れや色素沈着に対しては、からだの内側からきれいにしていく必要があるでしょう。そういうとき、漢方が有効です。

 先の女性の場合は、升麻や大青葉などの生薬を使ってメラニン色素をサラサラ流して(必殺技3)皮膚から捨て去り(必殺技2)、また胡麻などの生薬で皮膚の元気や活性を補い(必殺技1)、順調に少しずつ若々しい素肌を取り戻していきました。


■■乾燥肌にも要注意■■

 いまの時代は、湿度が低い秋冬だけでなく、夏もエアコンの影響で室内の湿度が下がっており、その結果、肌は乾燥した空気にさらされ続けることになります。実は毛穴は、肌の乾燥によっても目立つようになります。皮脂だけが毛穴の悩みの原因ではありません。

 まず皮膚の一番外側にある角質が、乾燥により硬くなります。かさかさしてきます。そして肌全体が潤いを失い、しっとり感が消えていきます。その結果、毛穴が目立つようになります。

 角質が硬くなるということは、同時に毛穴の出口も硬くなるということです。さらに開いた毛穴が開きっぱなしになります。そうなると毛穴はますます目立つようになります。

 肌の乾燥は、毛穴の開きもさることながら、敏感肌の大きな要因となります。肌荒れや肌の赤み、かゆみ、そして後ほど紹介する大人のにきびの原因にもなります。

 年齢とともに失われていく肌の潤いは、化粧品などで外側から補給することも重要ですが、同時に漢方で、からだの内側から水分を補給できる若々しい体質を維持するのも手でしょう。水分を角質までしっかり運んでくる体質を漢方薬で維持し、やわらかく滑らかな肌を保つことができれば理想的です。


■■悪化して大人のにきびへ■■

 家電メーカーで研究職にある29歳の女性の悩みはフェースラインにあるにきびです。額から小鼻まわりのTゾーンは脂っぽく、ほほからあごにかけてのUゾーンは乾燥しており、にきびはこのUゾーンにできています。とくに、こめかみから耳の前あたりに多く、あごの線に沿っても少しあります。はえぎわにも点在しています。にきびの色は、若いころのように真っ赤にならず、くすんだ色をしています。にきび跡も消えにくく、いつまでも残っています。

 ――乾燥肌に、どうしてにきびができるのかしら。

 そもそも、にきびは毛穴に皮脂がたまり、そこで慢性的な炎症が生じている状態です。したがって、脂性肌の人のほうがにきびができやすいと思われがちですが、意外と乾燥肌の人にもにきびはみられます。

 乾燥肌の人の多くは、角質が硬くなっています。その結果、毛穴から皮脂が出にくくなっており、それがにきびの原因になっています。

 年齢とともに乾燥するようになった肌に、エアコンや紫外線の影響が追い討ちをかけて毛穴が硬く狭くなり、乾燥した肌で大人のにきびができやすくなるのです。

 漢方道では、こういう場合、皮膚の乾燥を取り除くような処方をして、からだの内側から乾燥肌を改善し、にきびも根治していきます。
肌の潤いを補う(必殺技1)漢方生薬としては、熟地黄などがあります。消えにくいにきび跡に対しては、などサラサラ流す(必殺技3)生薬が効果的です。この女性も、このような生薬を煎じて服用し、約9カ月で乾燥肌と同時に、にきびを解消していきました。

 以上、漢方による毛穴対策を紹介しましたが、漢方による美肌効果は、化粧品のようにすぐ効果が出るわけではありません。しかし漢方ですので、その場しのぎで毛穴の開きをかくすのではなく、毛穴が目立たないハリのある皮膚を自然に取り戻していくような改善法になります。漢方で体質改善ができたならば、毛穴をかくす化粧品のお世話になることも減るでしょう。

 ただし一日でも早くきれいになりたい、もとのように戻りたい、というのが乙女心。とにかく目立つ毛穴をかくすのも大切です。結局、自分にあった化粧品と、漢方による体質改善、この両方をうまく併用していくのがいいかもしれません。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

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★ 漢方道・四つの必殺技 ★

「補う」・・・ 足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
「捨てる」 ・・・体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
「サラサラ流す」 ・・・漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
「バランスを調える」・・・内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス - 漢方の得意技はバランスの調整にあり。

自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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