脂性肌に漢方を試したら、便秘や口臭も改善

脂性肌や毛穴の悩みを解決! ー 漢方で体質そのものから根本的に改善します

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

こちらのページでは、脂性肌や毛穴の悩みを漢方で解決した症例をご紹介します。筆者が実際に経験した漢方治療例をもとに、物語風に描きました。 「脂性肌が漢方で治った」「毛穴の悩みを漢方で解決できた」など、脂性肌や毛穴の悩みに漢方薬が使われることはよくあります。参考にしていただければ幸いです。

漢方解説ページもあります)

■■オイリー肌が悪化する夏■■


「美津子、はい、おみやげ」

友だちの佐和子が京都旅行のおみやげに買ってきてくれたのは、かわいらしい和紙のケースに入った脂とり紙だった。

わたしがしょっちゅう脂とり紙を使って顔のてかりを取っているのを、佐和子はよく知っていた。わたしは、脂とり紙がなくては生きていけないほどの脂性だった。

脂性がひどくなったのは、思春期のころからだ。高校時代には、にきびがたくさん出て悩まされた。

いまは、そのころと比べるとにきびは少なくなった。でも先が白く小さいにきびが口のまわりやあごに出やすい。

でも脂性は、そのころとあまり変わらない。

とにかく肌がてかる。顔を洗っても、しばらくすれば皮脂でべとべとしてくる。気になるので、すぐに脂とり紙をつかう。

一日につかう脂とり紙の枚数は、半端じゃない。

とくに夏はたいへんである。洗顔しても、すぐにてかって、べたついてしまう。化粧くずれもひどいし、夕方になると、油をぬったようにてかてかしてくる。汗をかいているわけではないのに「美津子、汗かいてるね」なんて人に言われると、がくっときちゃう。

――なんとかならないかしら、わたしのオイリー肌。

鏡を見ていると、毛穴も気になってくる。毛穴が開いて目立つような気がする。

「美津子、洗顔はきちんをしているわよね」

わたしほどではないにしろ、脂性を気にしていた佐和子が、京都の脂とり紙を渡しながら言った。

もちろん、洗顔はしっかりしていた。毎朝、毎晩、丁寧に洗顔しているつもりだった。美容液でのお手入れも欠かさなかった。

でも脂性は治らなかった。

むしろ洗顔すると、かえって皮脂の分泌が増える気さえした。

洗顔を一日一回にしてみた。

するとてかりは少しばかり落ち着くように思えた。でもなんだか、鼻のまわりの毛穴が黒っぽく見える気がして皮膚科にいってみた。皮膚科の医師は、わたしの悩みに対して抗真菌薬を処方した。

――それって水虫とかの真菌(カビ)につかう薬じゃないの?

ちゃんと洗顔しているのに、自分の顔にカビが生えていたなんて、ショックだった。洗顔の回数を減らしたからじゃないか、と医師に言われた。洗顔を一日二回にもどし、しばらく抗真菌剤を続けてが、あまり効果がなかった。

佐和子の脂性は、このところすっかり影をひそめていた。

「漢方薬を飲んでから、脂性もよくなったみたいなの」

「え? 便秘体質の改善のために漢方薬を飲んでたんじゃなかったっけ?」

佐和子は慢性的な便秘を改善するために漢方を飲んでいた。

「そう。でも、気がついてみると、便秘だけじゃなく、脂性も改善されていたの」

「いいなあ、それ」

「うん。漢方って、便秘なら便秘だけを改善する薬じゃなくって、その原因になっている体質そのものを改善していくわけ。だから、体質が改善されると、便秘だけじゃなくって、ほかの部分にも改善がみられるってことみたいよ」

「じゃあ佐和子の場合は、同じ体質の悪化から、便秘と脂性の両方が出てきていたっていうこと?」

「そう、なんか、からだの中に余分なものがたまっていて流れがわるい感じがしていたんだけど、そういうのが便秘とか脂性とかいうかたちで表面化していたみたいね。でも漢方のおかげで、いまではすっきりした感じよ」

わたしも漢方を試してみることにした。


■■皮脂の分泌と漢方的体質■■


「先生、わたし、顔の脂性が悩みなんです。てかりがひどくて、そのことばかり考えてしまいます。なんとか漢方で、すっきりと皮脂の出ない体質に変えることはできないでしょうか」

さっそく漢方薬局にカウンセリングに行って、相談してみた。

「皮脂というものは、わたしたちのからだにとって必要なものです。それを完全になくすことはできませんし、そうなると乾燥してたいへんなことになります。ただし皮脂の分泌が多すぎる場合は、漢方で体質改善することにより、肌の調子がよくなることがあります」

漢方の先生は、にこやかに話し始めた。

「わたしたちのからだは、皮膚に包まれています。肌が乾燥しやすいか、あるいは脂っぽいかは、皮膚、とくにその一番外側の層である角層に含まれる水分量と、角層の表面に広がる皮脂の量、このふたつの要因で決まります。角層内の水分量が減少した状態が乾燥肌(ドライスキン)、そして皮脂の分泌量が過剰になった状態が脂性肌(オイリースキン)です」

なるほど。

「皮脂は、角層から水分が蒸発していくのを防いでくれます。だから、皮脂は必要なものですよ」

「わたしの場合は、その分泌が多すぎるということですよね」

「そうです。皮脂の分泌が過剰なので、肌がてかてかと光り、毛穴が開きます。にきびの原因にもなります。肌のきめも粗く見えるようになりますね」

「洗顔は丁寧にきちんとしているつもりなんですけど、脂性は全然よくならないんです」

「からだの外側からのスキンケアはもちろん大切ですが、からだの内側つまり“体質”を改善して、不必要な過剰な皮脂を分泌しない体質にしていくことも必要ですよ。美津子さんの顔の脂は、外から塗ったものではなく、内側から出てきたものなんですからね」

先生のおっしゃるとおりだわ。

「ひび割れて水がもれる壷があるとして、壷の外側から水をふいてばかりいても、水漏れは直りませんよね。大事なのは、壷そのものを直すことでしょう」

先生によると、肌の皮脂の量は、ちょっとした疲れや睡眠不足、食事の不摂生、精神的なストレス、ホルモンバランスのくずれなどによって変化するとのことだ。

こういう場合、漢方では漢方薬を用いて内臓の機能や心身のバランス、ホルモンの状態などを調整することにより、結果的に肌の調子を整えていくそうだ。からだの内側から脂性を改善し、肌の状態を調えていくことになる。

ただし、脂性にはこの漢方薬、というように決まった処方があるわけではなく、ひとりひとりの肌の状態や体質によって薬は違ってくるそうだ。

――わたしに合う漢方薬もあるかしら。

そう思っていると、漢方の先生が質問を始めた。

「美津子さん、脂性だとにきびに悩まされることもあるんじゃないですか?」


■■過剰な皮脂を漢方でコントロール■■


「あ、ええ、昔ほどではないですけど、口のまわりに化膿して先が白くなった小さなにきびがぷつぷつと出ることがあります」

「それって生理前ですか?」

「そうです。生理前に悪化します」

「わかりました。あと、口臭が気になるとか、ありませんか?」

「あ、口臭も気になります。関係あるんですか?」

「ええ、あとは口が渇きやすいとか、便がすっきり出ないとか」

「あります、あります」

なんだか、わたしのからだの中が透けて見られているようでびっくりしていると、先生は教えてくれた。

「それらの症状は全部、美津子さんの体質と関係があります」

「わたしの体質、ですか」

「そうです。熱がこもりやすいような、水や脂の流れがよくないような、そんな体質です」

確かに、とくに上半身に熱がこもるような、のぼせるような感じになることもある。

「今回ご相談の脂性も、同じその体質からきています。ですから漢方薬でその体質を改善すれば、お肌の状態やその他の症状もよくなっていくと思いますよ」

わたしの場合は熱や脂が過剰に滞りやすい体質なので、それらを体内から捨ててバランスを改善する、という働きのある漢方薬が合っているそうだ(漢方道の必殺技②:下記参照)。しばらくそれを飲むことにした。

とくに化学的な作用で皮脂の分泌を抑えるのではなく、体質が改善されれば自然と皮脂の分泌も正常化してくる、とのことだった。わたし自身、熱がこもるような、流れがわるいような、そんな感じを自分のからだに持っていたので、それが改善されるようならぜひ試してみたい、と思った。

苦い漢方薬をがまんして煎じて飲み続けたかいあって、4ヵ月くらい経ったころには、ずいぶん肌の状態がよくなった。脂性はまだあったが、にきびはほとんど出なくなった。

10ヵ月ほど経ったころには、肌のてかりもずいぶんなくなり、お化粧ののりもすっかりよくなった。

「漢方、よく効いたみたいね、美津子」

佐和子が自分のことのようにうれしそうに言ってくれた。

暑い日でも、脂とり紙をつかうことはなくなった。先生の言ったとおり、お通じや口臭も気にならなくなり、からだの中からきれいになったように実感できた。

引き出しの中に、ちょっと買いためておいた脂とり紙がそのまま残っている。京都のきれいな脂とり紙も、まだある。ちょっと整理しようかな。でも佐和子のおみやげの京都の脂とり紙は、おいておこうと思った。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★
①「補う」・・・ 足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
②「捨てる」 ・・・体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
③「サラサラ流す」 ・・・漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
④「バランスを調える」・・・内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス - 漢方の得意技はバランスの調整にあり。

(幸井俊高執筆の講談社「VOCE」連載記事に加筆し仕上げました)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社サイト「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラムを好評連載中。中国、台湾など海外での出版も多い。

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自分に合った漢方薬に出会うには

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そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
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当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

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