卵巣嚢腫
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
卵巣嚢腫は肥大化しやすい ー 漢方で小さく、そして再発予防も
こちらのページでは、卵巣嚢腫の漢方治療について解説します。当薬局では、卵巣嚢腫の肥大化や再発の根本原因を除去することにより、卵巣嚢腫の根本治療を進めます。
卵巣嚢腫(卵巣のう腫)は、卵巣の中に袋状の腫瘍ができ、その中に液体・粘液・脂肪などがたまって卵巣が腫れる病気です。内容物が増えるにしたがい、卵巣嚢腫は肥大化していきます。
初期の自覚症状はほとんどありませんが、肥大化が進むと外側から触れるなどして膨らみに気づいたり、下腹部に違和感を感じたりします。腹痛、腰痛、便秘、頻尿を生じることもあります。
触れると軟らかい卵巣嚢腫はその多くが良性で、固いしこりが触れる腫瘍(充実性腫瘍)には、悪性の卵巣癌などがみられます。
(症例紹介ページもあります)
卵巣嚢腫の種類
漿液性(しょうえきせい)嚢胞 | 卵巣から分泌される透明のさらさらとした水のような液体がたまる | 40~60代に多い |
粘液性嚢胞 | どろっとした粘液がたまる | 閉経後を含む幅広い年代 |
皮様嚢腫 | 卵巣内の胚細胞にできて歯や毛髪などを含む脂肪がたまる | 20~30代に多い |
子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞) | 子宮内膜症が卵巣内に発症し、月経のたびに古い血液がたまり、肥大していく | 20~30代に多い |
(子宮内膜症についてはこちらをご参照ください → 子宮内膜症 )
漢方で卵巣嚢腫の肥大化や再発を防ぐ
漢方では、卵巣嚢腫の形成には、人体の基本的な構成成分である気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)の流れの停滞・よどみが深く関係していると捉えています。
気(き) | 生きるために必要な生命エネルギー |
血(けつ) | 生命活動に必要な血液や栄養 |
津液(しんえき) | 生命活動に必要な体内の水液 |
これらの成分の流れが滞りやすい体質が改善されない限り、卵巣嚢腫は大きくなったり再発したりします。
漢方には手術のように一瞬にして卵巣嚢腫を取り除く力はありませんが、漢方薬で気・血・津液の流れを改善することにより、「卵巣嚢腫ができやすい体質」そのものを改善し、卵巣嚢腫の肥大化や再発を防ぐことができます。
卵巣嚢腫ができやすいタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「痰湿(たんしつ)」証 (津液の滞り)
体内に過剰な水湿(痰湿)がたまりやすい体質。
痰湿がたまりやすく、腫れ、できもの、しこりなど、腫瘤ができやすい体質です。この痰湿が卵巣にたまり、卵巣嚢腫を形成します。子宮筋腫、ポリープ、いぼ、乳腺腫、甲状腺腫、腫瘍などもできやすいタイプです。
体液代謝の失調や低下や、炎症、循環障害、ホルモン異常、代謝産物の体内蓄積、食べ過ぎ、食事の不摂生などによってこの証になります。
→ 痰湿を取り除く漢方薬を用います。
(2)「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証 (気の滞り)
情緒を安定させる働きを持つ肝(かん)の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質・・・気の滞り
ストレスによるいらいら、落ち込み、情緒不安定、月経前の乳房の張りなどが強いならこのタイプが考えられます。ストレスの影響などで気の流れが滞ると、卵巣嚢腫ができやすくなります。
精神的なストレスや、緊張の持続などにより、この証になります。
→ 肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにする漢方薬を用います。
(3)「血瘀(けつお)」証 (血の滞り)
血流が鬱滞しやすい体質。
下腹部痛、頭痛、肩凝り、冷えのぼせが強い、などの症状を伴うならこのタイプが考えられます。下腹部の血流が滞ることにより、卵巣嚢腫ができやすくなります。
寒冷などの生活環境、不適切な食生活、運動不足、体内の水液の停滞、生理機能の低下などによって生じます。疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になる場合もあります。
→ 血行を促進する漢方薬を用います。
ほかにも卵巣嚢腫にみられる証(体質やタイプ)はたくさんあります。証が違えば薬も変わります。自分の証を正確に判断するためには、漢方の専門家のカウンセリングを受けることが、もっとも確実で安心です。
卵巣嚢腫に効果的な漢方薬
四逆散、二陳湯、温胆湯、大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯
ほかにも卵巣嚢腫を治療する漢方薬は、たくさんあります。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の証(体質やタイプ)を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで調合しています。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質やタイプ)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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