舌痛症(口腔内灼熱症候群)(症例)
舌痛症(口腔内灼熱症候群)が漢方で治った症例
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
漢方薬で舌痛症(口腔内灼熱症候群)が治った成功例を紹介します。当薬局では、痛みや不快感の根本原因を漢方薬で除去することにより、舌痛症(口腔内灼熱症候群)の治療を進めます。
漢方では、患者一人一人の証(しょう)に合わせて、処方を判断します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。
(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら)
症例1 舌のチリチリとした痛みを解消
「舌全体に痛みを感じます。チリチリとした痛みです。口の中にねばねばとした不快感があります」
唾液が少なく、口の中が乾燥しています。しゃっくりが、よく出ます。口臭が気になります。食事をしているときは、痛みを感じません。舌は紅く乾燥しており、舌苔はほとんど付着していません。
この人の証は、「胃陰虚(いいんきょ)」です。胃の陰液(胃陰)が不足して舌に痛みが生じているようです。口の中のねばねば、少ない唾液、口中の乾燥、しゃっくり(吃逆)、口臭、紅く乾燥した舌、少ない舌苔などは、この証の特徴です。
この証の場合は、胃の陰液を補う漢方薬を用い、舌痛症の治療にあたります。この患者さんには、麦門冬湯(ばくもんどうとう)を服用してもらいました。服用を始めて3か月間は変化がみられませんでしたが、そのあと徐々に痛みが軽減し、5か月ほどで痛みを感じなくなりました。
症例2 焼けるような痛みが消えた
「舌の左右の側面に、ヒリヒリと焼けるような痛みを感じます。口の中が苦いことがよくあります」
なにか忙しく働いているときや、友だちと話をしているときなどは、痛みを感じません。舌のほかに、頭も痛みます。いろいろと憂鬱で、いらいらします。舌は紅く、黄色い舌苔が付着しています。
この患者さんは、「肝火(かんか)」証です。からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ五臓の肝の機能(肝気)が鬱滞し、熱邪を生んでこの証になり、舌に痛みを生じたのでしょう。
この体質の場合は、肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、肝火を鎮める漢方薬を用い、舌痛症を治療します。この患者さんには、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を服用してもらいました。1か月後、口の中の苦みを感じなくなりました。痛みはまだ感じましたが、2か月後には痛みもほとんど気にならなくなりました。
症例3 ピリピリする痛みを解消
「舌の先端がピリピリ痛みます。舌癌ではないかと不安でたまりません」
病院で診てもらいましたが、まったく異常はなく、舌癌ではありませんでした。でも何かほかの病気かもしれない、と不安は消えません。寝つきがわるいのですが、寝ているあいだは痛みません。毎晩のように夢をみます。喉がよく渇きます。手足がほてりやすく、よく布団から足を出して寝ています。舌は乾燥して厚みがなく痩せており、舌苔はほとんど付着していません。
この患者さんの証は、「心陰虚(しんいんきょ)」です。五臓の心の陰液が不足し、舌に痛みが生じているようです。不安感、不眠、夢をよくみる、喉の渇き、手足のほてり、乾燥して痩せた舌、舌苔がほとんど付着していない、などは、この証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で心陰を補い、舌痛症を治していきます。この患者さんには、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)を服用してもらいました。2か月後くらいから不安が弱まってきました。それに伴って痛みが軽減してきました。その後は痛みがまた強くなったり弱くなったりと波がありましたが、6か月後には痛みも不安も感じなくなりました。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。
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