脂漏性湿疹(症例)
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
脂漏性湿疹を根本から治療 – 脂漏性湿疹の漢方治療の成功例
こちらは、脂漏性湿疹を漢方で治療した症例を紹介するページです。漢方では、熱邪をはじめとする病邪を漢方薬で体内から除去し、脂漏性湿疹の根本原因を排除することにより、脂漏性湿疹の治療をします。皮膚の病気だからといって皮膚だけをきれいにしようとしても、慢性的な湿疹の場合は、なかなかうまくいかないものです。体の中からきれいに改善されて始めて皮膚の病気も治っていきます。
漢方では、患者一人一人の証(しょう)に合わせて、処方を判断します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。
(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら)
症例1 10年以上にわたる脂漏性湿疹を治療。再発なし
「脂漏性湿疹です。後頭部の髪の生え際によく出ます。頭皮にも少し出ます。ステロイド外用薬を塗ると治りますが、しばらくするとまた出ます」
少し痒みがあり、掻くとぼろぼろと湿っぽい塊が剥がれ落ちます。皮膚は赤くなっています。ステロイドで抑えては、また再発する、ということを10年以上繰り返しています。ほかの部位には出ません。口がよく渇きます。口の中が粘りやすく、口臭が気になります。舌は紅く、黄色い舌苔がべっとりと付着しています。
この人の証は、「湿熱(しつねつ)」です。湿熱が髪の生え際や頭皮に侵入し、脂漏性湿疹が生じているのでしょう。湿っぽい鱗屑、紅斑、口渇、口中が粘る、口臭、紅い舌、黄色くべっとりとした舌苔などは、この証の特徴です。
この証の場合は、湿熱を除去する漢方薬を用い、脂漏性湿疹の治療をします。この患者さんには、茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)を服用してもらいました。湿疹が出ているときはステロイドを併用するよう指示しました。漢方の服用を始めて1か月後、脂漏性湿疹が再発したのでステロイドを併用しました。いつもより早く湿疹が引いたように思います。4か月後、また再発したのでステロイドを併用しましたが、ほとんど悪化することなく治りました。それ以降、ときどき痒くなり、また出そうかな、ということがときどきありましたが、脂漏性湿疹として出ることがなかったので、1年半で漢方の服用を終了しました。その後、脂漏性湿疹は出ていません。
同じような湿熱体質で、胃のつかえ感や膨満感など、胃の症状も強い場合は、脾胃の機能をととのえつつ湿熱を除去する半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などを用います。
症例2 再発を繰り返す脂漏性湿疹を完治
「ときどき頭皮が痒くなり、掻くとポロポロとフケが出ます。フケにしては湿っぽく厚みがある塊が出るので皮膚科で診てもらったところ、脂漏性湿疹と診断されました」
症状は、寝不足が続いたときや、暴飲暴食が重なったときに悪化するように思います。ステロイドのローションを塗ると落ち着くのですが、またすぐ再発するので漢方で体質から治療できればと思っています。かぜをひきやすく、ときどき扁桃腺が晴れます。鼻炎ぎみで、鼻水、鼻づまりがあります。ときどき蕁麻疹が出ます。舌は淡紅色で、白い舌苔が薄く付着しています。
この患者さんの証は、「風湿熱(ふうしつねつ)」です。風湿熱邪が皮膚を侵し、脂漏性湿疹が生じているようです。
この体質の場合は、風湿熱を除去する漢方薬を用い、脂漏性湿疹を治します。この患者さんには、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)などを服用してもらいました。漢方を飲み始めてすぐにまた湿疹が出たのでステロイドを併用しました。その後はずっと湿疹が出なかったので、半年後に漢方の服用を中止しました。しかししばらくしてまた湿疹が出たので、漢方の服用を再開したところ、その後ずっと湿疹が生じなくなりました。1年後に漢方の服用を終了しましたが、その後は湿疹の再発はありません。
皮膚の紅斑や熱感を伴う場合は、消風散(しょうふうさん)や十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)を用います。
症例3 フケのような落屑が全然なくなった
「頭皮と股間部に脂漏性湿疹が繰り返し出ます。ときどき痒くなり、掻くとポロポロと皮膚片がはがれ落ちます」
頭皮の患部は紅く(紅斑)、少し盛り上がっています。何年か前に脂漏性湿疹と診断され、ステロイド外用薬を処方されました。ステロイドを塗るとよくなりますが、しばらくすると再発して一向に治らないので通院しなくなりました。顔面など肌は乾燥ぎみです。目が疲れやすく、ときに充血します。舌は紅く、黄色い舌苔が付着しています。
この患者さんの証は、「血虚血熱(けっきょけつねつ)」です。血の不足と血熱が、皮膚で脂漏性湿疹を引き起こしているようです。皮膚の痒み、紅斑、鱗屑、肌の乾燥、目の疲れ、目の充血、紅い舌、黄色い舌苔などは、この証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で血を補い、熱毒を冷まして脂漏性湿疹を治療します。この患者さんには、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)を服用してもらいました。1か月後、頭皮の盛り上がりがなくなりました。2か月後、頭皮の紅斑が目立たなくなってきました。3か月後、フケのような落屑がほとんどなくなりました。股間部の痒みもありません。状態がいいので6か月後に漢方薬を終了しました。その後、脂漏性湿疹は再発していません。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社のサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は銀座で営業している。
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