気になる口臭が漢方で本当に消えた!

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(東京 帝国ホテル内の漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方ストーリー 

1人の女性が口臭の悩みを漢方で解決する過程を物語風に描いています。症例は筆者の経験をもとにしていますが、登場人物は実在の人物とは関係ありません。


■■気になる口臭の原因は■■


「ねえ、わたし、実は口臭が気になるんだけど」

 思い切って彼氏に聞いてみた。彼はきょとんとした顔で言った。

「え、おれの口、くさい?」

「いや、そうじゃなくて、気になるのはわたしの口臭。あなたは気にならない?」

 また些細なことを気にして、とでも言いたげな、とぼけた顔で、彼が答えた。

「ぜーんぜん」

実際、だれかに言われたことがあるわけではない。でも、自分の口臭が気になる。

口の中が何となくねばねばとしているような気がして、それが不快な臭いを発しているように思えてならない。

最初は口の中から臭いが生じていると思い、懸命に歯を磨き、頻繁にうがいをした。しかし歯磨きやうがいで多少の爽快感はあるものの、口臭がすっかり消えはしなかった。口の中でなく、もっと深い胃の腑あたりから沸き上がってくる息のように思えた。

「口臭の原因には、歯周病が多いみたいよ」

そういえば、友人の真由美がそんなことを言っていた。

気になって歯医者に行ってみた。しかし、わたしには幸い歯周病はなく、口腔内に口臭の原因は見つからなかった。気にしすぎではないですか、と歯科医師は言った。

「気にしすぎだよ、光代」

彼もそう言ってくれる。でも静かなところで彼に顔を近づけると、口臭が気になって緊張してしまう。

デートのときだけでなく、仕事でもそうだ。とくに空調の静かな音しか聞こえないような小部屋で少人数で打ち合わせをしているときなど、議論が盛んになりテンションが上がっても、ふと口臭が気になってくると、わたしだけ急に大人しくなってしまう。気になると議論についていく集中力も低下してしまう。

母にも相談してみたことがある。

「ねえママ、わたし、ちょっと口臭が気になるんだけど、気にしすぎかなあ」

「口臭? そんなの全然気にならないわよ。ま、強いて言えば、赤ちゃんのころから光代ちゃん独特のかわいい匂いがしてるけどね」

親というのはありがたいものである。でも、やっぱり気になる。

「光代も漢方薬を試してみれば?」

ある日、真由美がそんなことを言ってくれた。真由美は歯周病を歯科治療と漢方薬の併用で根治させたばかりなので、いろいろと漢方の話をしてくれた。

「胃腸の調子とか、漢方薬で改善すれば、気になる口臭もなくなるかもよ」

わたしもさっそく真由美が通っていた漢方薬局に行くことにした。


■■脾は口に開竅する■■


漢方薬局では、最初に丁寧にカウンセリングをしてくださった。口臭についても、詳しく話をすることができた。また、口臭とは直接関係がなさそうだけど生理のこととかお通じのことなども、いろいろと聞かれた。

カウンセリングのとき、漢方の先生が口臭の原因について話してくださった。

先生の経験によると、一番多いのは、真由美が言っていたとおり、歯など口腔内の病気によるものだそうだ。歯周病や口内炎、虫歯などが口臭の原因になるとのことだ。口の中の炎症や細菌繁殖、膿などが直接の原因らしい。

それに次いで多いのが、消化器系の病気や不調だそうだ。胃が荒れたり、あるいは消化不良や胃酸過多があったりすると、口臭の原因になりやすいとのことだ。それ以外にも肝臓その他、消化器系の病気が関係する場合が少なくないらしい。

精神的な要因が関係する場合もおおいそうだ。とくに強い口臭ではないのに気になってしまうとか、あるいはまったく正常な範囲内なのに自分には強い口臭があると思い込んでしまっている心身症や神経症の場合も少なくないらしい。

「お母様も、ボーイフレンドも、歯医者さんも、気にしすぎじゃないのか、とおっしゃったわけですね」

「はい、そうです」

「なるほど。たしかに、わたしも、もうかれこれ30分以上光代さんと一緒に話をしていますが、とくに何も臭いませんよ。だとすると、口臭は、あるとしても強いものではないのでしょうね」

「そうかもしれません。食べたものや体調にも左右されるのかもしれません。でも、実際どうしても気になるんです」

「わかりました。では、胃腸の機能を調えて、さらに精神的にも、あまり細かいことを気にしすぎないような、気分をゆったりとさせるような働きのある漢方薬を飲んでみてはいかがでしょう」

わたしは、さっそく漢方薬を飲んでみることにした。

「先生、口臭と胃腸の機能って、やっぱり深い関係にあるのですか?」

「もちろん、そうです。単純に胃の中の臭いが上がってきて口臭となる場合もありますが、消化器官というのは口から始まって肛門までつながっているわけですから、関係がないはずはありません。たとえばストレスで胃が荒れているときに口内炎がたくさんできたり、疲れなどの影響で胃腸が弱っているときに口の周りににきびができたり、ということは、よく見られる症状です。このように消化器系の機能が口に反映されることを、漢方で"脾は口に開竅する"といいます」

脾というのは五臓の一つで、消化吸収や代謝に関する機能を指し、また開竅というのは、表に現れるという意味のことばだそうだ。わたしの口臭も、消化器系の不調がそういうかたちで出てきたものだろうというのが漢方の先生の考えだ。さらに少しの口臭でも、過剰に気にしすぎるという敏感でセンシティブなところが悪影響を及ぼしているだろう、ということだった。

「臭いというものは、味と同じで、ひとりひとりの嗜好の問題です。だから、ある臭いをくさいと思う人もいれば、別になんとも思わない人もいるものです。臭いのない人間なんていませんから、もう少し気楽に考えられるようになるといいですね」

漢方の先生はそう言って、消化器系のバランスを調えて(漢方道の必殺技④)、気分を楽にしていく(必殺技③)漢方薬を調合してくださった。


■■胃腸を調え、口臭を改善■■


わたしが飲むことになった漢方薬には、人参や半夏、黄連などが調合されていた。漢方薬は苦いものだと覚悟していたが、それほど飲みにくいものではなかった。

漢方の先生のカウンセリングを受けて気がついたが、お通じがすっきり出ないとか、お腹が張ってガスがよく出るとか、胃がもたれやすいとか、そういう胃腸のすっきりしない症状が多々あった。不快ではあったが、困るほどではなかったので、そのままにしていた。それが漢方薬を服用するようになって3ヵ月目くらいから少なくなった。なんとなく胃腸の調子がよくなってきたことが実感できた。

口臭がしなくなったと感じるようになったのも、そのころだった。口の中の不快な感じもなくなった。小さな会議室でディスカッションをするときも、口臭のことなど気にならなくなった。

母に聞いてみた。

「ねえママ、わたし、口臭のこと、気にならなくなったわ。胃もすっきりとした感じになって。やっぱり口臭は、胃の調子がわるかったのが原因だったと思うわ」

「あら、それはよかったこと」

「うん、彼も、かわいい匂いになったって言ってくれたわ」

「よかったわね、あなたの口臭の悩みが消えて。でもその代わり、このお鍋に漢方の匂いがついちゃったけどね」

3ヵ月間漢方薬を煎じ続けた小鍋をかかげて、台所の母が笑った。

(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。
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「補う」・・・ 足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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