脱毛・抜け毛には生活習慣と体質の改善を!

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(東京 帝国ホテル内の漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方ストーリー

以下は、久しぶりに再会したら髪が薄くなっていた昔のボーイフレンドに漢方をすすめる女性の物語です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)


■■髪は健康のバロメーター■■


友香里の結婚式で十数年ぶりに木村君に会って、びっくりした。ぱっと彼の顔を見て、すぐには「木村君、久しぶり」って素直に思えなかった。だって、髪の毛が……。

木村君は、私の高校時代のボーイフレンドだ。でもそのころ彼は部活のゴルフに熱中していて恋愛に関しては二の次のように見えた。それに卒業後は別々の世界に進んだこともあり、なんとなく別れてしまった。

それが急にまた木村君と会うことになったのは、私の大親友・友香里のフィアンセである後藤さんが、木村君のゴルフ仲間だったからである。私も木村君も、友香里たちの結婚式に招待され、きょうここに来たってわけだ。

木村君が私に声をかけてきたのは、披露宴が始まる少し前だった。

「よう、明菜、お久しぶり」

木村君も、私がきょう来るのを後藤さんから聞いていたのだろうか、とくに偶然見かけて驚いた様子も見せずに話しかけてきた。昔のように穏やかに笑っているが、すっかり髪が薄くなってしまっている。

「元気だった? 明菜、昔とぜんぜん変わらないね」

――あら、そうかしら。30歳になって、すっかりおばさんになってきたつもりだったのに。あいかわらず気をつかっちゃって、やさしいところがあるわね。

私も何か言わなきゃ。でも、「木村君も昔とぜんぜんぜんぜん変わらないね」とは言えないし。よく見ると、おでこが広くなって、それに頭のてっぺんも薄くなっている。

「なんだ、後藤から聞いてなかったのか。就職してから仕事が忙しくて食生活もめちゃくちゃで、まだ若いつもりなのにこんなにはげてきちゃってさ」

「は、はげてなんかいないわよ」

しまった。声が少し大きかった。私の声に反応して、私たちの周りの人たちの視線が集まるのがわかった。ごめん、木村君。

「まったくそういう純粋なところも、昔とぜんぜん変わってないじゃないか」

怒りもせず、あわてもせず、木村君は、にこやかにそう言った。

「ごめんなさい。でも、ちょうどいいあいさつが浮かばなくて、ちょっとあせっちゃってたみたいで」

「いいんだよ、そんなこと。ねえ、何か食前酒でももらおうか」

バーカウンターでベルモットのソーダ割りをもらい、ウェイティングルームの入り口から少し離れた静かなところの椅子に腰掛けた。

「ま、とりあえず、再会に乾杯」

木村君に恥をかかせてしまったことに動揺してカラカラに乾いた私ののどに、ソーダの気泡が気持ち良くしみた。少し、落ち着いた。

「久しぶりに会うやつは、みんなびっくりするんだよ。きょうも明菜が来るって後藤から聞いたときには、やっぱり髪のことが一番気になっちゃってね。でもせっかくだし、それに後藤の結婚式だしな、来ることにしたんだよ」

そうか、私もおなかの膨満感とガスの悩みできょうの再会をちゅうちょしていたけど、彼も悩みがあって迷っていたのか。

「ねえ木村君、漢方薬、試してみたら?」

「漢方薬? あ、興味あるんだよ、おれ。髪は健康のバロメーターって、雑誌に書いてあるのを見たことがあってさ」

「そう、漢方って体質改善にいいわよ」

そのあと少し漢方の話をしたところで披露宴の時間となった。私自身が深刻なガスの悩みで漢方を飲んでいたことは言わなかった。彼も聞いてこなかった。

その日はそのままあまり話をするタイミングもなく、近いうちに食事をしようということにして、別れた。


■■髪を「血余」という■■


久しぶりのデートは、木村君おすすめの焼き鳥屋の座敷だった。相変わらず素朴だと思った。薄い座布団の上に、ちょっと楽な感じの正座ですわった。

久々の再会に焼き鳥屋が不満なわけではない。でも、せっかくの再会なのに、木村君は私に漢方の話ばかりを聞いてきた。

私も自分の体調が漢方でよくなってから漢方に興味がわき、本を何冊か読んでいたので、ある程度話ができた。

「漢方っていうのはね、体質改善をする薬よ。からだの内側からじっくり改善していく感じ」

木村君はつくねをほおばって口をもごもごさせながら、うなずいて聞いていた。

「薬に頼って薬で治そうというのではなく、木村君の場合だと、じわじわと抜け毛が多くなった体質を、改善するわけ。そのためには、なにか体質が悪化した原因となりそうな生活習慣や環境があるでしょ、そういう生活習慣や環境をまず見直すのよ。そして、すでに悪化してしまっている体質は、漢方薬で改善していくっていうやり方ね。心当たり、あるんじゃない?」

木村君は、口の中の焼き鳥を胃に流し込むような勢いで日本酒を飲んでから言った。

「そりゃ、あるさ。まず仕事のストレスだろ、それに不規則な生活。毎晩、帰りが遅いんだよ。あとは食生活」

彼の話によると、毎朝ファストフード店の朝食セット、昼はラーメン、とんかつ、スパゲッティ、コンビニの弁当など。そして夜は飲む機会が多く、さらに仕上げにラーメンを食べて帰ることも多いという。

この食生活が脱毛の原因のひとつであろうことは、素人の私にでもわかった。

「ねえ、髪の毛のことを漢方では『血余 』っていうのよ」

「けつよ?」

「そう、まず血っていうのは、血液という意味だけじゃなくて、血液が運ぶ『栄養』っていう意味もあるの。つまり髪の毛には、その人の栄養状態が大きく反映されるってことね」

「なるほど。だから日頃の食生活が影響してくるってことだな」

「そうよ。もちろん栄養だけが原因じゃなくて、ストレスとか疲労度とかの影響もあるでしょうけどね」

今度は軟骨をぼりぼりとかみ砕きながら聞いてきた。

「ということは、こうやって肉をがんがん食べていればいいってことか。髪の毛はたんぱく質でできているって言うしな」

「違うわよ。木村君も披露宴のときに言ってたじゃない、髪は健康のバロメーターって。つまり全身の栄養状態がいいときに、髪もいい状態になるってことよ。たんぱく質ばかり食べてもだめよ」

「ということは?」

「野菜よ。旬の野菜みたいに、元気な食材 も食べなきゃだめなのよ。ファストフードやコンビニ弁当みたいに、生き生きとしているとはいえないものばかり食べていると、からだが変になるわよ」

木村君は、あわてて追加注文をしたわ。椎茸、ししとう、銀杏、ネギ焼き。

「あのねぇ、木村君、食べすぎもよくないのよ。まったくもう」

「まあまあ、きょうは久々の再会ということで」


■■ストレス過多も脱毛のもと■■


漢方薬局に行ったことがないので心配だからと頼まれて(甘えられて)、後日、私がお世話になった漢方薬局についていった。

漢方の本によると、脱毛は腎虚 や血虚の人が多いようだ。木村君は食事がめちゃくちゃなので血虚タイプだろうな、と予想していた。

カウンセリングが始まるなり、先生は私のほうを向いて言った。

「ボーイフレンドですか?」

まったく余計なことを聞いてくる先生だ。隣にすわる木村君も困っているではないか。でもこの先生、こんなことを言って初対面の相手の緊張をときながら、どんどんと本音を聞き出していくようだ。

ひととおりのカウンセリングが終わってから先生は言った。

「木村さんの場合は、肝 のバランスがわるいようです。肝というのは五臓六腑のひとつで・・・・・・」

えっ、肝? 私は思わず先生の話をさえぎって言った。

「先生、私、木村君は血虚かと思っていました」

「ああ、だいたいそれで合っていますよ。よく勉強されていますね。慢性的にストレスが多い人や、必要以上に気をつかうタイプの人などは、まず肝の機能がその影響を受けます。仕事のしすぎも関係してきます」

「それで、肝なんですね」

「そう、それが慢性化すると、血が被害を受けます。肝は血を蔵す、と漢方ではいいますが、そこが慢性的なストレスや気配りのしすぎで欠乏している状態です」

「脱毛といっても、腎だけの問題とは限らないのですね」

「そうですね。年とともに白髪が増えたり抜け毛が増えたりというのなら腎の問題でしょうが、木村さんの場合はそうではありませんね。
はげ、といえば男性に多いように思われますが、じつは脱毛の悩みは女性のほうが多いくらいです。生理や出産の関係で、明菜さんが言うとおり、女性のほうが血虚の体質になりやすいからでしょうね」

「明菜、ずいぶん漢方にくわしいな」

漢方薬局からの帰り道に木村君が言った。

「そうよ、けっこうおもしろくって。それに、あの先生の言うことが妙に違和感なくからだで理解できるって感じで。それで自分で漢方の本を読んだりしているのよ」

「なるほどね。確かにあの先生の話を聞くと、からだも心も全部つながっていて、体調がよくなったりわるくなったりしているんだっていうのが実感できるよな。
ところで明菜、またちょくちょく飲みに行かないか? まあ、もちろん明菜のほうで都合がよかったり時間に余裕があったりしたら、でいいんだけど」

まったくストレートじゃないわね。そういうふうに気をつかいすぎるところが脱毛の引き金になっているって、先生も言ってらしたとおりだわ。

でもゴルフにしろ、仕事にしろ、この人は目の前にあるものに熱中しすぎるところがあるけど、一方では私を含めて周りの人たちに気をつかってくれるところがあるってことかしら。それは脱毛が実証済みってところね。

「いいわよ。その髪の悩みが解消するまでは付き合ってあげるわよ」

脱毛が気になるのはわかるけど、そんなこと、私にとってはぜんぜんマイナス要因にはならないわよ、木村君。

(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)

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