心不全の症例
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
◆薬石花房 幸福薬局 の漢方薬で心不全が改善した症例
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■症例1「10年前より高血圧です。近年は階段や坂道を登ると息切れがするようになりました(労作時呼吸困難)。痰がよく出ます。近ごろ夜間に咳が続くようになり、レントゲン検査で心肥大が認められ、心不全と診断されました。利尿剤を処方されていますが、あまり効きません」
痩せ型の70歳の女性です。足がむくみます。食欲があまりなく、軟便ぎみです。舌は白く、ぽってりとふくらんでおり、その上に湿った白い舌苔が付着しています。
この女性の証は、「脾腎陽虚(ひじんようきょ)」です。腎と脾の両方の陽気が衰えている状態です。津液が停滞し、希薄な水液が三焦にたまり、肺からあふれ、白くて薄い痰が出ます。
高血圧、息切れ、多痰、咳嗽、むくみ、食欲不振、軟便、ぽってりとふくらんだ白い舌、湿った白い舌苔などは、この証の特徴です。冷え症、手足がだるい、頻尿などの症状がみられることもあります。
この証の人に対しては、脾と腎を温めて機能を回復させる漢方薬を用いて心不全を治療します。服用を始めて3か月後にはふつうの生活が送れるようになりました。
■症例2「40歳代から息切れしやすく、心肥大と不整脈を指摘されています。10年ほど前に拡張型心筋症による心不全と診断された」
太りぎみの65歳の男性です。かぜをひいたときや疲れたとき、階段を登ったときなどに、息切れがひどくなり、喘鳴が生じます。足のむくみが顕著です。舌は白っぽく、白い舌苔が付着しています。
この男性の証は、「肺失宣粛(はいしつせんしゅく)」です。肺の、気と津液を全身のすみずみに散布し(宣発:せんぱつ)、呼吸を調えて津液を次第に下方に押し進める機能(粛降:しゅくこう)が失調している体質です。
この肺の宣発・粛降機能が阻害され、水道の通調が機能不全となって水湿が停滞し、ベースの気虚とあいまって、水腫(浮腫)、息切れ、喘鳴などが生じています。
この体質の場合は、気を補い水腫を利する漢方薬で、心不全を治していきます。この患者さんには服用を始めて1か月後くらいから浮腫が減ってきました。半年後には坂道でも息切れしなくなりました。
■症例3「胸苦しさが続いており、心不全と診断されています。高齢のため、手術は難しく、利尿剤は脱水症状をきたしかねないなど、西洋薬の使用も制限されています」
87歳の男性です。痰がからみ、たくさん出ます。腹満があります。舌には白い舌苔がべっとりと付着しています。
この男性の証は、「肺気逆(はいきぎゃく)」です。呼吸を調えて津液を次第に下方に推し進めるという五臓の肺の粛降(しゅくこう)機能が失調している体質です。
肺から痰飲が上逆し、上気道に鬱滞し、上気道が狭まります。胸苦しい、痰が多い、べっとりとした白い舌苔などは、この証の特徴です。咳嗽、のどの不快感などの症状を伴う場合もあります。
この場合は、肺気を降逆して上気道に鬱滞する痰飲を除去する漢方薬で、心不全を治療します。この患者さんは服用して2か月ほどで痰がからまなくなりました。8か月ほどで胸苦しい不快感がすっかりなくなりました。
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
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