下肢静脈瘤
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
当薬局では下肢静脈瘤の漢方治療のご相談をお受けしています。
下肢静脈瘤の漢方治療の症例は こちら
◆下肢静脈瘤の症状
下肢静脈瘤は足の血管が膨らみこぶのように浮き出る病気です。太くみみず腫れのように盛り上がったり、細い血管が蜘蛛の巣のように目だって見えたりします。
外見の異常以外に、次の症状を伴うこともあります。
・足のむくみ、重だるさ。
・血流が滞って鬱血したことによる痛み、痒み。
・こむら返りなど足がつりやすい。
・湿疹や色素沈着。
◆下肢静脈瘤はなぜ起こる?
足の静脈には、心臓に戻るべき血液が重力によって逆に足先の方へ下がっていく(逆流する)のを防ぐための弁が内側に付いています。
この弁が正常に働かなくなると、足の静脈内に血液がたまり、静脈が膨らみ、下肢静脈瘤が生じるのです。
◆下肢静脈瘤になりやすい人の背景
・男性よりも筋力が弱い女性に多い。
・妊娠を契機に発症する場合も。
・美容師、理容師、調理師、看護師、客室乗務員、教師など、立ち仕事を長時間する人。
・運動不足や肥満。
・加齢。
◆下肢静脈瘤になりやすいタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「血瘀(けつお)」証
この疾患のベースにある、血流が鬱滞しやすい体質。
血瘀証は、精神的ストレスや、冷え、体内の水液の停滞、生理機能の低下などによって生じます。疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になる場合もあります。妊娠、出産によっても生じます。
→ 血行を促進する漢方薬を用います。
(2)「血虚血瘀(けっきょけつお)」証
血瘀に加えて、血(けつ)が不足している証。
足のしびれや痛みを伴うようなら、血瘀だけでなく血虚すなわち血(けつ)の不足状態にもなっていると考えられます。血は、血液や、血液が運ぶ栄養を意味します。血瘀と相まって足が血虚状態となり、しびれや痛みが生じます。
→ 血流を改善し、血を補う漢方薬を用います。
(3)「寒湿(かんしつ)」証
寒湿(体内に滞留する寒邪と湿邪が結合した病邪)に犯された状態。
下半身の冷えやむくみを伴うようなら、このタイプが考えらえます。
湿気が多くて寒い環境に長期間滞在することなどによって発生した寒湿邪が足に停滞し、下肢静脈瘤を生じます。長時間の立ち仕事によって生じることも少なくありません。
→ 体を温めて湿気を取り除く漢方薬を用います。
(4)「腎陽虚(じんようきょ)」証
腎の陽気が不足している体質。
加齢とともに生じた下肢静脈瘤なら、最も考えられるのはこのタイプです。
腎は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。
腎陽虚の陽は陽気を指します。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。
加齢だけでなく、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。
→ 腎陽を補う漢方薬を用います。
◆下肢静脈瘤に効果的な漢方薬
桂枝茯苓丸、桃核承気湯、疎経活血湯、苓姜朮甘湯、桂枝加朮附湯、八味地黄丸、牛車腎気丸
また、下肢静脈瘤の原因として肥満が背景にある場合は肥満の改善を目指します。
漢方ダイエットについてはこちらをご参照ください。 → ダイエット・肥満
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(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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