橋本病

漢方は橋本病に至った根本原因に働きかけ、甲状腺機能の改善を目指す

こちらのページでは、橋本病の漢方治療について解説します。当薬局では、橋本病に至った根本原因に漢方薬で働きかけることにより、甲状腺の機能を改善させ、橋本病の根本治療を進めます。

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

*目次*
橋本病とは
症状
原因
治療
治療(橋本病の漢方治療)
体質別の漢方治療方針
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点

症例紹介ページもあります)

橋本病とは

橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。最初に論文発表した日本人の名前から、この名があります。男性よりも女性に多く、成人女性の20人に1人にみられるとの報告もあります。慢性甲状腺炎とも呼ばれています。

甲状腺は、新陳代謝を盛んにするホルモン(甲状腺ホルモン)を作る臓器(内分泌器官)です。首の前の部分、のどのあたりにあり、気道を抱き込むようにくっついています。

私たちのからだは、新陳代謝により常に古い細胞が新しい細胞に入れ替わることにより、健康や若々しさを保っています。皮膚も内臓も、骨も子宮もそうです。そこで重要な役割を果たしているのが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンは、成長や発育、元気な日々の日常活動には欠かせないホルモンです。

症状

橋本病になり、甲状腺に慢性的な炎症があっても、甲状腺ホルモンの合成に異常がない場合もありますが、一般には、炎症の影響で甲状腺ホルモンがじゅうぶん分泌されにくくなっています(甲状腺機能低下症)。私たちのからだの細胞は、毎日どんどん新しいものと入れ替わることにより、常に新しい細胞が活動し、健康を保つようにできていますので、この状態になって新陳代謝が衰えると、心身の活力が低下し、甲状腺機能低下症特有の症状が表れます。

まず、甲状腺がはれて大きくなっているので、首が太く見えることがあります。また、甲状腺ホルモンの量が少なくなると、活力が低下し、元気ややる気がなくなり、眠気が強くなり、うつ症状が表れます。むくみが生じ、手指がこわばり、肌が乾燥します。胃腸機能が低下するので、便秘がちになります。熱を作る機能が低下するため、体温が下がり、寒がりで、汗をかきにくくなります。心臓の機能も低下し、脈拍が遅くなります。食欲が減退して食べる量が減りますが、消費カロリーも減るので太ります。コレステロールの代謝機能も下がるため、血中コレステロール値が高くなる場合もあります。不妊や流産の原因となることもあります。

原因

橋本病の原因は、自己免疫の異常にあります。免疫は本来、ウイルスや細菌から人体を守るための機能ですが、その働きが失調して自分の身体を攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といい、橋本病はその自己免疫疾患のひとつです。

免疫異常により甲状腺に炎症が起きると、甲状腺ホルモンを作る働きが弱まることがあり、その結果、甲状腺ホルモンが不足して甲状腺機能低下症になると、さまざまな症状が表れます。どのような理由で自己免疫に異常が生じるかは、明らかになっていません。

治療

さまざまな治療法がありますが、大きく分けて、甲状腺ホルモンを薬として服用することにより甲状腺ホルモンを補充して血中の甲状腺ホルモン値をコントロールしたい場合は西洋医学、橋本病に至った根本原因に働きかけて甲状腺の機能改善を目指したい場合は漢方が適しています。両者を併用することもできます。

西洋医学では、サイロキシン製剤(商品名チラージンS)などの甲状腺ホルモン薬を使い、甲状腺ホルモンを補充することにより治療にあたります。炎症の改善など根本的な治療ではありませんが、体内の甲状腺ホルモンが増えるために活気が戻り、諸症状が緩和されていきます。

治療(橋本病の漢方治療)

漢方では、甲状腺の機能や免疫系に働きかけることにより、甲状腺機能の低下を改善していきます。働きかけ方は、一人一人の体質により異なります。表面的には活力が衰える「気虚(ききょ)」証ですが、その気虚の奥にある証を治療していくのが漢方治療のポイントです。次の「体質別の漢方治療方針」をご覧ください。

症例紹介ページもあります)

体質別の漢方治療方針

漢方では、患者一人一人の体質に合わせ、橋本病を治療します。以下に、橋本病にみられることの多い証(しょう)と漢方薬を紹介します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

  • ①腎陽虚

甲状腺機能の低下そのものは、「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎は五臓のひとつで、その機能(腎気)は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどることです。その腎の陽気が不足している体質が、この証です。陽気とは気のことです。腎陽が虚弱になると、ホルモン内分泌機能が低下し、橋本病になります。腎陽を補う漢方薬で橋本病に対処します。

  • ②肝鬱気滞

甲状腺の機能低下の原因として、気の流れの停滞もよくみられます。気の流れはさらさらしているのが理想的ですが、ストレスや環境変化により、停滞しやすくなります。ストレスなどの影響で甲状腺機能が低下しているようなら、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。からだの諸機能を調節する臓腑である五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。ストレスや緊張が持続することにより、この証になります。肝気の流れの悪化の影響がホルモンバランスの失調に及び、橋本病となります。仕事の激務による疲労やストレスの蓄積、深夜残業による不規則な生活、家族や周囲との人間関係によるプレッシャーなどが継続、あるいは繰り返すことによっても、この証になります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、橋本病を治していきます。

  • ③気滞血瘀

血流の悪化が関係している場合も少なくありません。多くの場合、上記の気滞が影響しており、気と血(けつ)の両方の流れが停滞している「気滞血瘀(きたいけつお)」証です。肝鬱気滞の影響で血流も鬱滞して「血瘀」証にもなり、この証になります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、さらに血行を促進し、鬱血を取り除き、橋本病を治療します。

  • ④痰湿

腫瘤(はれ、できもの、しこり)ができやすい体質であるために、この病気になる人もいます。「痰湿(たんしつ)」証です。痰湿というのは体内にたまった過剰な水分や湿気のことです。この痰湿が慢性甲状腺炎を形成し、橋本病になります。食べすぎ、食事の不摂生などによっても、この証になります。痰湿を取り除く漢方薬で体質を改善し、橋本病を治していきます。

ほかにも橋本病にみられる証はたくさんあります。証が違えば薬も変わります。自分の証を正確に判断するためには、漢方の専門家のカウンセリングを受けることが、もっとも確実で安心です。

よく使われる漢方薬

  • ①八味地黄丸、牛車腎気丸など

甲状腺機能の低下を改善させたい場合のベースには、たとえば、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)など、腎陽虚(じんようきょ)証を治療する漢方薬を用います。

  • ②四逆散、逍遙散、加味逍遙散など

ストレスなどの影響で甲状腺機能が低下しているようなら、たとえば、四逆散(しぎゃくさん)、逍遙散(しょうようさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)など、肝鬱気滞(かんうつきたい)証を治療する漢方薬を使います。

  • ③芎帰調血飲など

気と血(けつ)の両方の流れが停滞している場合は、たとえば、芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)など、気滞血瘀(きたいけつお)証を治療する漢方薬を用います。

  • ④二陳湯、平胃散など

腫瘤(はれ、できもの、しこり)ができやすい体質の場合は、たとえば、二陳湯(にちんとう)、平胃散(へいいさん)など、痰湿(たんしつ)証を治療する漢方薬を使います。

ほかにも橋本病を治療する漢方薬は、たくさんあります。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の証(体質や病状)を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで調合しています。

予防/日常生活での注意点

規則正しい生活を送ることで心身への負担を減らしましょう。過度のストレスをため込まないような工夫も必要でしょう。適度な運動やストレッチで気や血の流れをよくするのも得策です。昆布などヨウ素を多量に含む食品を食べることで体内のヨウ素が過剰になると甲状腺の機能に影響が出る可能性があるといわれていますが、中医学では逆に海藻類を治療に用いる場合もあります。食事については、そのあたり過度に神経質にならず、旬の食材を中心にバランスよくおいしくいただくよう心がけるのがいいでしょう。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラム好評連載中。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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