バセドウ病

バセドウ病に効く漢方薬

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

バセドウ病の漢方治療について解説します。ときどき芸能人が公表して話題になることもある病気です。一般には抗甲状腺薬が処方されますが、なかなか治らないことや、薬を飲み続けなくてはならないことも多いようです。漢方薬が使われることもあるようですが、患者さんの体質に合っていなかったり、対症療法に過ぎなかったりするケースが多いように見受けられます。当薬局では、患者さん一人一人の体質に合わせて漢方薬を処方し、バセドウ病の根本治療を進めています。

*目次*
バセドウ病とは
症状
原因
一般的な治療
漢方薬による治療
よく使われる漢方薬
予防/日常生活での注意点

症例紹介ページもあります)

バセドウ病とは

バセドウ病は、甲状腺の病気です。甲状腺では、新陳代謝を盛んにする甲状腺ホルモンというホルモンが作られていますが、この甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまう病気(甲状腺機能亢進症といいます)の代表的なものが、バセドウ病です。バセドウは、この病気を研究発表したドイツ人医師の名前です。同じく甲状腺の病気の橋本病と同様、女性に多い、自己免疫疾患のひとつです。

症状

甲状腺は首の前の部分、のど仏のすぐ下の、唾を飲み込むときに動くあたりにあります。バセドウ病になると甲状腺が腫れるので(甲状腺腫といいます)、首が太くなったようにみえます。そして新陳代謝が必要以上に活発になり、おとなしくしているときでも、体がどんどんエネルギーを必要以上に消費する状態となります。それは、じっとしているのに、走っているときと同じような体の状態です。その結果、以下のような甲状腺機能亢進症特有の症状が表れます。

まず、いつも走り続けているような状態なので、疲れやすくなります。また、そのために多くの酸素が必要となるため、動悸、息切れが生じます。当然、暑がりで、汗をかきやすくなります。手指の震えも生じます。精神的にも、いらいらしやすく、興奮しやすく、眠りにくくなります。エネルギー消費が多いので、食欲があるのに痩せることもよくあります。高血圧、高血糖、かゆみ、月経期間の短縮、経血の減少などの症候も生じます。バセドウ病の特徴のひとつとされる眼球突出は、5人に1人くらいの割合でみられます。

原因

甲状腺ホルモンの量は、脳の視床下部がコントロールしています。血液中の甲状腺ホルモン量が足りないと、下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌して甲状腺の活動を活発にし、甲状腺ホルモン量を増やします。逆に甲状腺ホルモン量が多すぎると、TSH分泌量を減らして甲状腺の活動を抑え、甲状腺ホルモン量を減らします。これらの機能が失調して甲状腺の働きが活発になりすぎ、甲状腺ホルモンが過剰に作られるようになったのが、バセドウ病です。

一般的な治療

西洋医学的には、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬チアマゾール(商品名メルカゾール)やプロピルチオウラシル(商品名チウラジール、プロパジールなど)で甲状腺ホルモン量をコントロールするのが基本です。ほかに甲状腺の細胞を放射線で減らす放射性ヨウ素治療(アイソトープ)や、甲状腺を外科的に切除する手術などの方法で治療にあたります。手術やアイソトープ治療を行うと甲状腺の機能が低下するので、やがて甲状腺ホルモン薬を飲まなくてはならなくなります。

漢方薬による治療

漢方では、バセドウ病は癭病(えいびょう)と呼ばれる病気に含まれます。精神的なストレスや、飲食の習慣の不摂生などの影響で、体の基本的な構成成分である気・血(けつ)・津液(しんえき)の流れが滞り、首の前に腫れ物ができることにより、バセドウ病になります。癭気(えいき)、癭瘤(えいりゅう)とも呼ばれます。

したがって漢方では、滞っている気・血・津液の流れを潤滑にすることにより、バセドウ病の体質的な根本治療を進めます。

症例紹介ページもあります)

よく使われる漢方薬

漢方では、患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決めます。同じバセドウ病という病名でも、体質や病状が違えば効く漢方薬も異なります。以下に、バセドウ病に使われることの多い漢方薬を、バセドウ病にみられることの多い体質とともに紹介します。患者さん一人一人の体質や病状に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

  • ①四逆散、逍遙散

胸苦しい、情緒変動で症状が出やすい、などの症状がみられるようなら、漢方でいう「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という体質です。ストレスや、緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で気の流れが停滞し、バセドウ病になります。甲状腺腫は軟らかめなことが多いようです。四逆散(しぎゃくさん)や逍遙散(しょうようさん)など、気の流れをスムーズにする漢方薬で、バセドウ病を治療します。

  • ②柴胡加竜骨牡蛎湯、竜胆瀉肝湯

汗がよく出る、のぼせる、暑がり、感情の起伏が激しい、興奮しやすい、不眠、眼球突出、手指の震え、口が苦い、などの症状が強いなら、「肝火(かんか)」という体質です。上記の①の体質プラス、体内に熱がこもっている体質です。柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)など、気の流れをスムーズにしつつ熱証を鎮める漢方薬で、バセドウ病を治していきます。

  • ③桂枝茯苓丸

甲状腺の腫れが硬いようなら、「血瘀(けつお)」という体質です。血流が滞りやすい体質です。精神的ストレスや冷えなどにより、この証になります。血の流れが停滞することにより、バセドウ病になります。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)など、血行を促進する漢方薬を用いて、バセドウ病を治療します。

  • ④香砂六君子湯、温胆湯

腫瘤(はれ、できもの、しこり)ができやすい体質であるために、この病気になる人もいます。「痰湿(たんしつ)」という体質です。痰湿というのは、体内にたまった過剰物のことです。この痰湿が甲状腺腫を形成すると、バセドウ病になります。上記①の体質と合わせてみられることも多く、その場合は、「気鬱痰阻(きうつたんそ)」という体質です。上記③と合わさると、「痰結血瘀(たんけつけつお)」という体質です。香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)や温胆湯(うんたんとう)など、痰湿を取り除く漢方薬で体質を改善し、バセドウ病を治していきます。

  • ⑤炙甘草湯、杞菊地黄丸

動悸、不整脈、胸部のざわざわとした落ち着かない不安感(心煩:しんはん)などの症候が強いなら、「心肝陰虚(しんかんいんきょ)」という体質です。上記④の体質に熱証が加わった状態です。炙甘草湯(しゃかんぞうとう)や杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などの処方で、バセドウ病の治療を進めます。

ほかにもバセドウ病にみられる体質はたくさんあります。体質が違えば薬も変わります。自分の体質を正確に判断するためには、漢方の専門家のカウンセリングを受けることが、もっとも確実で安心です。当薬局では、漢方の専門家が一人一人の体質を的確に判断し、その人に最適な処方をオーダーメイドで処方しています。

予防/日常生活での注意点

日常生活では、心身への負担やストレスを軽減するために、生活のリズムをつくり、規則正しい生活を心がけ、睡眠不足にならないように睡眠時間をじゅうぶんとりましょう。心臓に負担がかかるような激しい運動は控えたほうがいいでしょう。たばこは厳禁です。アルコールもほどほどに。海藻類は適量でしたら普通にいただいてかまいませんが、栄養士の指導を受けているようなら、そちらのアドバイスも参考にしてください。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の一般向けの健康情報サイト「日経グッデイ」や、医師・薬剤師向けの情報サイト「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて長年にわたり漢方コラムを担当・執筆、好評連載中。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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