物忘れ(健忘)・認知症予防

◆「物忘れがひどくなった」と感じたら、漢方で認知症予防を



当薬局では物忘れ(健忘)や認知症が心配な方の漢方治療のご相談をお受けしています。

認知症が心配な状態が漢方で回復した症例は こちら


物忘れは、誰もが経験することであり、人の名前などの固有名詞がなかなか出てこない、ちょっとしたことが思い出せない、など多少の物忘れなら、特に心配することはない症状です。

物忘れをすることは当然、年齢とともに増えますが、これはごく自然なことですし、若いときでも物忘れをすることは、普通にあります。

物忘れのことを、健忘ともいいます。健忘の健は、「程度が非常に強い」という意味です(「健闘」など)。「健康」のように、体が丈夫である、という意味とは違います。

物忘れ(健忘)の程度が増えると、認知症ではないかと心配する人が多くいますが、物忘れ(健忘)と認知症とは別物です。加齢に伴う物忘れの増加は、脳の機能の老化による自然な現象であり、認知症とは異なる症状です。

しかし、急に物忘れ(健忘)がひどくなった場合や、周囲の人と比べて物忘れがひどい場合など、加齢とは別の要因で物忘れが増えた場合は、何らかの体調の悪化があるかもしれません。

同じ年代の他の人よりも物忘れの頻度や程度が高いといえる場合は、軽度認知障害とも呼ばれます。

記憶には段階があります。それは、

(1)覚える
(2)保持する
(3)思い出す

という3ステップです。

物忘れ(健忘)」は、このうち、例えば先月くらいに会ったことは覚えているけれどもその人の名前が思い出せない(3ステップのうち(3)の機能が低下している)状態がで、

認知症」は、会ったことさえ覚えていない(3ステップの(1)から(3)までの機能が全て低下している)状態がです。

 

◆認知症予防には「腎・心・肝」・・・早めの対策がカギ


漢方では、脳の機能と関係が深い五臓の(じん)、(しん)、(かん)の機能を調整することにより、物忘れ(健忘)を改善し、認知症の予防につなげています。

は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。「水、骨、納気をつかさどる」臓腑として、体液の代謝全般の調節、骨や形成、呼吸、特に吸気をつかさどるほか、脳とも深く関係しています。

は、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動をつかさどる臓腑です。大脳新皮質など高次の神経系と深く関係しています。

はストレス性の物忘れ(健忘)と深い関係にあります。肝は、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。

これらの機能が失調すると、脳の機能が低下し、物忘れ(健忘)が生じます。そしてこれらの機能を調えておくことが、認知症の予防に役立ちます。

物忘れ(健忘)と認知症とは別物だとはいっても、軽度認知障害の人が認知症になる確率が高いというデータもあります(一般高齢者がアルツハイマー型認知症になる確率が年間1~2%であるのに対し、軽度認知障害の人の場合は10~15%とされます)。

物忘れが気になるようでしたら、そのまま放っておかず、漢方薬で体質改善をするなどして、将来認知症になるのを予防しておくといいでしょう。

 

◆物忘れが多い人の6つのタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方では証(しょう)といいます>

(1) 加齢で多い腎陽虚(じんようきょ)証


腎の陽気が不足している体質です。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます

加齢だけでなく、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。脳の機能低下と関係がある証と思われます。

腎陽を補う漢方薬で物忘れを解消し、アルツハイマー型などの認知症を予防します。

腎陽虚で出やすい症状
腰・膝がだるい、冷え症、頻尿、嗜眠、ふらつき、耳鳴り、むくみ、白く湿った舌と舌苔 など

 

(2) 加齢でほてりを伴う腎陰虚(じんいんきょ)証

同じく加齢による物忘れで、のぼせ、手足のほてり、寝汗などの熱証を伴う場合です。陰は陰液のことで、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精を指します。この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。

加齢だけでなく、過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによっても腎陰が減ってこの証となり、物忘れがひどくなります。脳そのものの衰えと関係がある証と思われます。陰液の不足により相対的に陽気が亢進するため、熱証が表れます。

腎陰を補う漢方薬で物忘れを減らし、アルツハイマー型などの認知症を予防します。

腎陰虚で出やすい症状
のぼせ、手足のほてり、寝汗 など

 

(3) 心労や過労の人に多い心血虚(しんけっきょ)証


五臓の心の機能(心気)を養う心血が不足しているのが、この体質です。

過度の心労、思い悩み過ぎ、過労が続くことなどにより心に負担が掛かり、心血が消耗してこの証になります。加齢によりこの証になる場合もあります。心血の不足により神志が不安定になり、物忘れ(健忘)が生じます。

漢方薬で心血を潤し、物忘れを解消し、認知症を予防します。

心血虚で出やすい症状
頭がふらつく・ぼーっとする、動悸、夢が多い、舌が白っぽい など

 

(4) 心血虚にほてりを伴う心陰虚(しんいんきょ)証


上の心血虚に加え、のぼせ、手のひらや足のうらのほてり、口渇、焦燥感などの熱証もみられる場合です。心の陰液が不足している体質ですので、心が十分潤わず、物忘れが生じています。

些細なことで緊張することが多いタイプです。

漢方薬で心の陰液を補い、神志を安定させて物忘れを減らし、認知症の予防をします。

心陰虚で出やすい症状
のぼせ、手のひらや足の裏のほてり、口喝、焦燥感 など

 

(5) ストレスが強い人に多い肝陽化風(かんようかふう)証


ストレスによって自律神経や情緒と関係の深い肝が影響を受けた結果、肝の機能が抑制できなくなり、熱が上に上る肝陽上亢という証になります。さらに進行、または長期化すると内風(肝風)と呼ばれる体内の風が生じてこの証になります。

頭痛、のぼせ、怒りっぽい(以上は肝陽上亢でもみられる症状)、さらに肝風の影響で、めまい、ふらつき、ふるえ、引きつりなどの症状が表れます。肝風が脳を上擾すると、物忘れが生じます。

肝陽を落ち着かせて肝風を和らげる漢方薬で治療や予防をします。

なお内風とは、体内で生じる風邪(ふうじゃ)で、揺れ動くような症状を引き起こす病邪です。血虚や陰虚がベースにあり、気の流れの制御ができなくなると内風が生じます。

肝陽上亢・肝陽化風で出やすい症状
頭痛、のぼせ、ふるえ、引きつり、怒りっぽい、紅色の舌 など

 

(6) 脳血管性認知症につながる恐れの血瘀(けつお)証


高血圧動脈硬化などの持病があると、将来、脳血管障害(脳卒中)となり、脳血管性認知症となることも考えられます。この場合、血流が鬱滞しやすい体質の血瘀(けつお)証の悪化予防が大切です。

精神的ストレスや、寒冷などの生活環境、不健康な食生活、運動不足、体内の水液の停滞、生理機能の低下などによって生じます。疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になる場合もあります。

血瘀で出やすい症状
便秘、下肢の冷え、肩こり、顔色がどす黒い、舌が紫っぽい など

血行を促進する漢方薬を用いて脳血管性認知症の予防をします。

脳の血管が心配な方はこちらをご覧ください → 脳の病気

***

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。

ご予約はこちらから

関連ページ・症例・エッセイなど


更年期障害男性更年期障害(LOH症候群)

自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

カウンセリングスタッフ紹介