アレルギー
(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高)
根本原因は「アレルギー体質」
当薬局ではアレルギーに関する漢方治療のご相談をお受けしています。
花粉症に悩む人は多いですが、いくら花粉の飛散量が多くても、くしゃみひとつ出ない人もいます。あるいは杉の木に囲まれて大自然の中で生まれ育った人が、杉の林などない都会で生活をするようになって初めて発病することもよくあります。
花粉症に限らず、ほかのアレルギー、たとえば蕁麻疹や湿疹にしても、ふだんは出ないけど寝不足など体調の悪いときに発病するという人も多い。アレルギー性鼻炎も、寝起きにはくしゃみを連発するけど大事な会議中には鼻水ひとつ出ない、ということもあります。
アレルギーは、花粉やダニ、ハウスダスト、あるいは細菌やウイルスなどの抗原が体内に侵入したときに、その抗原から生体を守る、という抗原抗体反応が過剰すぎて障害をもたらすことです。抗原抗体反応が適正ならば免疫として外敵から体を守りますが、過剰だとアレルギーとして体に危害を加えます。
たしかに花粉やハウスダストは、アレルギー反応を引き起こす要因です。しかし、先の例のように、それ以外に、アレルギー症状を発現するときの身体的精神的な体調の不調がベースにあるのです。いわゆるアレルギー体質です。
中医学(中国の医学)では、そのアレルギー体質を改善することにより、各種アレルギーの根治を目指します。少なくとも去年ひどい目にあったのと同じ量の花粉に襲われても症状を発現しない丈夫な体を作ります。
これは、くしゃみ・鼻水や痒みなどの症状を抑える、いわゆる対症療法主体の西洋医学との大きな違いです。
アレルギー体質で一番多いタイプは「脾陽虚」
アレルギー体質になる原因は多種ありますが、比較的よく見られるのが胃腸に過剰な負担がかかってしまったケースです。これを中医学で「脾陽虚」(ひようきょ)といいます。
夏に冷たいものをガブガブと飲み過ぎたり、おいしいおいしいと脂っこいものを食べすぎたりすると、徐々に脾陽虚となり、アレルギー体質になります。
治療には、体を温め胃腸の機能を調えて余分な水分を取り除く働きの強い生薬を用います。たとえば人参・党参・白朮・茯苓・乾姜・五味子などの生薬を配合した処方が使われます。
花粉症によく用いられる小青竜湯は、アレルギー体質改善というよりは、対症療法剤としての性質が強いものです。
アレルギー症状が発現してからではなく、日頃からアレルギーに克つ体質作りに向けて生活習慣の改善や漢方薬の服用を始めてください。「体質だからねぇ」と言われても、あきらめないで!
(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)
*執筆・監修者紹介*
幸井俊高 (こうい としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。
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