不快なべっとり汗、緊張を漢方で克服
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、緊張で出る不快な汗や、ストレスによる不眠の悩みを解決したOLの物語です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■緊張して出る不快な汗■■
職場で緊張してドキドキすることが多い。美緒は、いまの部長がどうも苦手である。部長の前にいくと表情が硬くなり、不快な汗をかいてしまう。
部長が嫌いなわけではない。よく仕事のできる人で、尊敬している。でも部長の積極的な仕事の進め方に美緒はうまくついていけないでいる。
たとえば自分なりに考えて進めてきた仕事でも、部長の考えに合わないと受け入れてもらえず、「だめだよ、これじゃ。もっとこういう角度から掘り下げてくれないと」と大きな声できつく言われてしまい、最初からやり直さなくてはならなくなる。
仕事なんだし、自分はまだ若いんだから、そんなこと当たり前、とはわかっている。しかし頭ごなしに否定されているように感じてしまい、落ち込んでしまう。
これが会社のストレスってやつなんだろうな、と美緒は思う。
若いうちは、こういうこともいい経験だ、やり手の部長から仕事をおぼえるいいチャンスだ、と割り切って部長に食らいついていく根性の部員もいるが、美緒にはそれができない。
美緒は子どものころから緊張しやすいタイプで、学校の日直や委員会活動でクラスの前でしゃべるだけでも心臓が口から飛び出るくらいドキドキしていた。発表中は手がふるえることもあったし、発表が終わると汗をねっとりとかいていた。
それが今も変わらないのである。
出張や会議で部長が職場にいないときにはリラックスして仕事ができる。しかし部長が席にいる日は緊張して表情が硬くなる。肩がこる。また何か注意されはしないかと臆病な気持ちになってドキドキしてしまう。実際に部長に呼ばれて指示を受けるときには顔が引きつってしまう。じわっと出た汗が顔や背中にべとついて不快になる。手が小刻みにふるえることもある。
仕事が終わって家に帰ってからも、会社のことをついつい考えてしまう。あしたは大丈夫かしら、と考えると不安になり、布団に入っても目がさえて眠れなくなる。朝起きると寝汗をかいていることもある。
先日、夜中に息が苦しくなった。さすがに、このままではまずいと思い、病院に行った。精神安定剤と睡眠薬が処方された。
先輩の千鶴が心配して美緒の相談に乗ったことがある。
「美緒ちゃん、体調はどう?」
「ありがとうございます。どうも調子がすぐれないので病院に行ったら精神安定剤を出されました。ストレスでしょうって」
「部長は、自分の部が一丸となって業績を上げていくようなやり方がお好きなのよね」
「仕事の進め方が自分と違う部下がいると、やりにくいみたいですね。わたしみたいな異分子は排除したいのかもしれませんね」
「それは考えすぎよ。いつもちゃんと指導してくださっているじゃないの」
「でも部長と一対一で話すときって、また何かきつく言われるんじゃないかって、いつもビクビクしちゃって、いやな感じの汗をかいてしまうんです」
「美緒ちゃんは繊細でデリケートだからね」
「最近は眠れない日も多くて、睡眠薬も処方されました」
「部長は、部長がやりたい方法で仕事を進めたいのよ。だからどのスタッフに対しても同じように、部長の仕事の進め方を浸透させているのだと思うわ」
「それはわかっています。でもきつく言われると緊張してしまって」
「そういえば、わたし、PMS(月経前症候群)を漢方で解消した話したっけ。生理前の緊張やイライラがすっかり楽になったわ。美緒ちゃんも漢方、試してみたらどうかしら」
美緒はさっそく千鶴が通っていた漢方薬局に相談に行くことにした。
■■漢方で過剰な緊張を緩和■■
漢方薬局では漢方の先生がたっぷり時間をかけて美緒のカウンセリングをした。どういうときに汗をかくかということだけでなく、食生活や便通、生理のことなども詳しく尋ねることにより、患者の体質を把握していく。
カウンセリングが一通り終わったあと、不快な汗をかきやすい体質について先生が説明した。不快な汗の体質的な原因は、おもに四つあるという。
一つ目は、気が不足して汗が漏れ出るタイプ。
二つ目は、体内に水分が過剰に停滞している体質。
三つ目は、過剰な緊張やストレスの影響で気の流れがわるいタイプ。
四つ目は、体内の熱と水のバランスが不安定な体質。
美緒の場合は緊張すると汗をかくこと、ストレスで寝つきがわるくなっていること、それに冷え症で生理が不安定、おなかをこわしやすいことなどから、「美緒さんの体質は、二つ目がメインで、一つ目との混合型でしょう」と先生が説明した。
美緒は漢方に興味があるので「わたしは冷え症もあるので、処方に配合されるのは全部からだを温める生薬ですね」と先生に尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。
「いえ、そうではありません。からだを冷やす作用の強い生薬もひとつ入っています」
美緒は心配になり、先生に「それで冷え症が悪化して体調を崩すことはないのですか」と尋ねたところ、先生は次のように答えた。
「漢方の処方は、目的の方向とは逆の性質の生薬を少し配合することにより、全体の薬効をより高めていく場合があります。同じような性質の生薬ばかりを混ぜて処方を組んだところで、切れ味に欠けることもあるのです」
甘い和菓子を作るときに塩をほんの少量、加えるのと似ている。
「異分子ともいえる生薬を配合することにより、処方の切れ味が格段に上がります。
先生の説明に美緒はすっかり納得し、さっそく、気の流れをよくしつつ気を補う漢方薬を飲むことになった(漢方道の必殺技③と①)。
薬局からの帰り道、美緒は"異分子"ということばを思い出し、いまの部における自分のことのように感じていた。自分は部長のお気に入りではないけれど、会社の役には立っているはずと思うと、少し自信が出てきて足取りが軽くなった。
■■からだも仕事も伸び伸びと■■
漢方を飲み始めてから少しずつ、眠りやすくなってきた。3か月目には睡眠薬を飲まなくても自然に眠れるようになった。不快な汗も気にならなくなり、精神安定剤も必要なくなった。漢方薬が美緒の心の中の緊張の糸をゆるめてくれているように実感できる。
その翌月、人事異動があり、美緒が苦手としていた部長に変わって、新しい部長が着任した。
新しい部長は、おおらかなタイプだ。部のまとめかたも前の部長とは異なり、若い部下の仕事のやり方が自分と違っていても、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と相手を受け入れてくれるところがあり、美緒にとってはホッとする上司となった。
着任の挨拶でも「俺の気に入った奴らばかりの組織なんて、つまんない。いろんな個性を組織のなかで伸び伸びと活用し、社会に生かして行くことこそ、俺の仕事だ」と言っていたことを思い出した。みなを自分の色に染めて突き進むタイプではなく、異分子を大切にするタイプのようだ。
ただ単にやさしいだけではなく、今度の部長は仕事の納期が短い。「あしたまでにここまでやってくれ」という指示も多く、千鶴も美緒も忙しそうに走り回り、汗ばんで仕事をしている。しかし、こういう自然な汗なら気にならない。べとつく汗ではなく、さらっとしている。
資料室で会ったときに千鶴が「美緒ちゃん、体調よさそうね」と言ってくれた。
「おかげさまで、漢方が効いてくれたみたいです」と美緒は千鶴に礼を言った。
「よかったわ。それにしても部長になるようなかたは皆、どこかしら厳しい一面があるけど、頑張ってついていかないとね」
数か月前までは緊張のしすぎによる汗や不眠で悩んでいた自分が懐かしく思えた。自分の未熟さのせいで前の部長にはご迷惑をかけたかな、とも思った。でもこれからは仕事もからだも伸び伸びとやっていけそうだ。
(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)
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