尿失禁(尿もれ)

◆男女ともに意外に多い尿失禁の悩みは漢方で治す


自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう尿失禁(尿もれ)は加齢によって増えますが、40代でも男性の2割、女性の3割以上が尿もれを経験しているという調査結果もあります。

男性の尿道は長くて曲がっているのに対し、女性の尿道は短く真っすぐであるなどの理由により、女性の方が多く尿もれを経験します。若い女性にも尿もれの経験者は少なくありません。

男性の場合は尿道の折れ曲がった部分に尿が残り、それが排尿後に垂れることもあります。

当薬局(東京・帝国ホテル内 薬石花房 幸福薬局)の漢方治療では、個人個人の尿失禁の背景にある原因を見極め、根本原因を改善することによって尿失禁を起こしにくい体質に変えていきます。

(症例紹介ページは こちら

◆尿失禁がおこる背景要因

自律神経の失調

膀胱に十分蓄尿されていない状態では、交感神経の働きにより、膀胱の筋肉が緩み、尿道の筋肉は逆に締まるので、尿が漏れずに膀胱にたまっていきます。

そして尿がたまって尿意を感じ、いざ排尿する段になると今度は副交感神経が優位になり、尿道の筋肉が緩み、膀胱の筋肉が縮むことにより、排尿されます。

この自律神経系が失調すると、尿失禁が生じます。

加齢

加齢によって増える尿失禁には、尿道の周りにあって尿道を締めて排尿をコントロールする筋肉(骨盤底筋)の機能低下(弱まり)や、膀胱弾力性の低下が関係しています。

膀胱の弾力性が失われてあまり蓄尿できなくなっている状態に追い打ちをかけるように、膀胱の出口が緩く締まりが悪くなってしまうため、排尿が我慢できなくなるのです。

その他の要因

膀胱炎、前立腺炎、神経系のトラブル、降圧薬などの副作用、癌、認知症などと関連して起こる尿失禁もあります。

膀胱が十分収縮しなかったり尿道が開かなかったりして排尿時に尿を出し切ることができず、そのために尿がもれるケースも含まれます。

◆尿失禁の種類

腹圧性尿失禁

腹圧の上昇により起こる尿失禁。

くしゃみや咳をするときや、重い荷物を持ち上げるときなどに腹圧が急に上がり、膀胱が押され、尿がもれてしまいます。

排尿をコントロールする骨盤底筋が弱くなり、尿道の締まりが悪くなって生じる尿失禁です。

女性は出産後も骨盤底筋が緩みやすく、このタイプの尿失禁が生じます。

切迫性尿失禁(UUI)

強い尿意切迫感により、排尿をこらえきれず生じる尿失禁。

自分の意志とはお構いなく不随意に突然膀胱が収縮し、トイレに行くまで我慢できず、尿がもれ出てしまいます。

膀胱の筋肉の活動が過剰に活発になり、自分の意志に反して膀胱が勝手に収縮してしまう疾患(過活動膀胱)の主な症状です。

男性の場合は前立腺肥大症とも関連が深く、前立腺肥大症の5~7割に過活動膀胱の症状があるようです。


◆漢方では? 尿失禁に関わる臓腑は「腎・膀胱・肝」


漢方で尿失禁(尿もれ)と関係が深いのは五臓の(じん)や(かん)です。

は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。

尿は六腑の1つである膀胱に貯蔵され、腎の作用によって排泄が調節されます。

腎と膀胱は密接な関係にあり、両者の連携により、排尿がコントロールされます。

または、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ臓腑で、自律神経系を介して排尿の調節にも関与しています。

 

◆尿失禁(尿もれ)によくみられるタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>

(1) 「腎陽虚(じんようきょ)」証

加齢に伴う尿失禁で、冷え症、寒がりなどの寒証を伴うようならこのタイプです。

腎の陽気が不足している体質です。陽気とは気(き)のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。

加齢や、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによって人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。

腎陽が虚弱になると、骨盤底筋の機能や膀胱弾力性が低下し、尿失禁が生じます。腹圧性尿失禁です。

→ 腎陽を補う漢方薬を用います。

(2) 「腎陰虚(じんいんきょ)」証

同じく加齢による尿失禁で、のぼせ、手足のほてり、寝汗などの熱証を伴うようならこのタイプです。

は陰液のことで、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精を指します。腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。

加齢だけでなく、過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによっても腎陰が減ってこの証となり、尿もれが生じます。腹圧性尿失禁です。

陰液の不足により相対的に陽気が亢進するため、熱証が表れます。

→ 腎陰を補う漢方薬を用います。

(3) 「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証

ストレスの影響が考えられるようなら、自律神経系の失調と関連が深いこのタイプです。

体の諸機能を調節する臓腑である五臓のの機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。

一般に、精神的なストレスや、緊張の持続などにより、この証になります。

全体的な症候として、いらいら、落ち込み、情緒不安定などがみられます。ストレスが軽くなり、ほっとリラックスした瞬間に尿もれが生じます。切迫性尿失禁です。

→ 肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにする漢方薬を用います。

(4) 「心火(しんか)」証

もう1つ、自律神経系と関係が深いのは五臓の(しん)です。

は、心臓を含めた血液循環系と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動をつかさどります。

この心に、過度の心労、思い悩み過ぎ、過労が続くことなどにより負担が掛かり、心の機能(心気)が過度の刺激を受けて亢進すると、「心火(しんか)」証になります。

焦燥感、焦り、落ち着かない、じっとしていられない、不安、強い不眠、動悸、胸苦しい、悶々として目がさえて眠れない、などの症状が表れ、同時にのぼせほてりなどの熱証もみられます。

この証の人の脳の興奮が、リラックスしたときなどに急に緩和されると、急に副交感神経が優位になり、尿もれが生じます。こちらも切迫性尿失禁です。

→ 心火を冷ます漢方薬で尿もれ前の興奮状態を緩和することにより、尿失禁を治療します。

(5) 「寒凝(かんぎょう)」証

冷えにより急に尿意をもよおし(尿意切迫感)、失禁することがあるようならこのタイプです。

冷え症である場合はもちろん、冷たい飲食物の摂取、ファッション重視の薄着、寒冷の環境での仕事や生活などにより、寒冷の性質を持つ病邪である寒邪(かんじゃ)が体内に侵入すると、この証になります。

この寒邪が腎や膀胱に下降してその機能を乱すと尿失禁が生じます。冷たい水で手を洗うと急に尿意をもよおし、尿がもれることもあります。

→ 体内を温めて血行を促進する漢方薬を用います。

(6)「湿熱(しつねつ)」証

湿熱は体内で過剰な湿邪と熱邪が結合したものです。

清潔とはいえない生活環境や、脂っこいもの、刺激物、味の濃いもの、生もの、アルコール類の日常的摂取や大量摂取、不潔なものの飲食、あるいは細菌の尿路への侵入などにより、この証になります。

湿熱邪が膀胱に侵入することにより、尿もれが生じます。尿意促迫や排尿痛もみられます。

→ 湿熱を除去する漢方薬を用います。

(7) 「脾気虚(ひききょ)」証

生命エネルギーを意味する気が不足することにより、尿がもれる場合はこのタイプが考えられます。

脾気虚は、消化吸収や代謝をつかさどり、気血(エネルギーや栄養)の源を生成する五臓のの機能(脾気)が弱い体質であるため、気が十分生成されず、体内の気が不足します。

気の機能の1つに、人体に必要なものが体外にもれ出ないようにコントロールする働きがありますが、気虚になるとこの力が弱まり、尿がもれ出ます。腹圧性尿失禁です。

加齢、過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより脾気を消耗すると、この証になります。

→ 脾気を強める漢方薬を用います。


◆尿失禁に効果的な漢方薬


八味地黄丸、六味地黄丸、牛車腎気丸、四逆散、加味逍遙散、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、四君子湯

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。

自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
どうぞお気軽にご連絡をください。→当薬局について

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気や症状を改善してくれる漢方処方は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要になります。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や体調により、使う処方が違うからです。

 

そのために必要なのが、カウンセリングです。漢方の専門家がじっくりとお話をうかがって、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を決めていきます。

 

当薬局は、帝国ホテル内にあるカウンセリング専門の漢方薬局です。まず薬局でカウンセリングをし、その方のご症状やご体質をしっかりと把握し、それをもとに、おひとりおひとりに最適な漢方薬を調合しております。

 

自分にあった漢方薬に出会う秘訣は、「信頼できる専門家のカウンセリングを受けること」です。しっかりしたカウンセリングを受けて、あなたに最適な漢方薬を見つけてください。

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