頻尿

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

慢性的な頻尿・・・漢方の視点から原因をみると

尿の回数が異常に多い病態を頻尿といいますが、その症状は様々です。

尿量が毎回多い場合もあれば、そうではない場合もあります。さっき排尿したばかりなのに、すぐにまた尿意を感じるといったこともあります(尿意促迫)。

漢方では、ひとりひとりの頻尿の症状だけでなく、詳しい問診などによってその背景にある体質的な問題点を丁寧に見極めて最適の漢方薬を選びます。

当薬局では頻尿の漢方治療のご相談をお受けしています。

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漢方の判断において頻尿に関係が深い機能は以下のとおりです。

まず六腑のひとつである膀胱です。尿は膀胱に貯蔵されます。五臓のは六腑の膀胱と表裏をなす関係にあり、両者の連携により排尿がコントロールされるため、の機能も頻尿の問題に関わってきます。

また、体の全体の機能を調整する五臓の(かん)や、体液の調整をするの機能も関係してきます。

人体の主な構成成分である気・血(けつ)・津液(しんえき)の中では、人体に必要な正常な体液を意味する「津液」が最も関与します。

 

◆よくある頻尿のタイプ・・・あなたはどれ?

<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>

(1)「腎陽虚(じんようきょ)」証

成長・発育・生殖および水液や骨をつかさどる五臓の腎の陽気が不足している体質です。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて陽気と呼びます。

老化や慢性疾患により人体の機能が衰えて冷えが生じるとこの証になり、特に夜間に頻尿になりやすくなります。

昼間は津液を全身に行き渡らせる機能の低下により津液が停滞し、むくみやすくなり、尿量はむしろ少なめです。

→ 体を温めて腎陽を補う漢方薬を使います。

(2)「腎陰虚(じんいんきょ)」証

腎陽虚と異なり、陰液が不足している体質です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液・精(せい)を指します。精は、腎に貯えられる、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質のことです。

加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良などによって精が減ると、尿を保持することができなくなり、頻尿が生じます。尿の色は濃く、量は少ないです。

→ 腎の精気など腎陰を補う漢方薬で頻尿を治します。

(3)「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証

体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)する臓腑である五臓の肝の気(肝気)の流れが滞っている体質です。

ストレスや緊張が持続すると、この証になります。

肝気の流れの悪化の影響が膀胱に及ぶと、膀胱内の尿量が少なくても尿意を催しやすくなり、頻尿になります。尿意促迫も生じます。

→ 漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、頻尿を治していきます。

(4)「肺気虚(はいききょ)」証

過労や慢性的な体調不良の影響で、水分代謝をつかさどる五臓のの機能(肺気)が衰え、津液が全身に散布されずに膀胱に下降し、頻尿になります。

色の薄い尿が、特に疲れたときなどに多く出ます。

→ 肺気を補う漢方薬で津液の流れを正常化させ、頻尿を治します。

(5)「寒凝(かんぎょう)」証

寒い季節や寒冷な環境、冷たい飲食物の摂取などにより、寒冷の性質を持つ病邪である寒邪(かんじゃ)が体内に侵入すると、この証になります。

そして寒邪が腎や膀胱に下降してその機能を乱すと、頻尿になります。冷えて薄い色の尿が出ます。

→ 体を温めて寒邪を取り除く漢方薬で頻尿を改善します。

(6)「湿熱(しつねつ)」証

湿熱は体内で過剰な湿邪と熱邪が結合したものです。

脂っこい物、刺激物、味の濃い物、生ものやアルコール類の日常的摂取や大量摂取、不潔な物の飲食、あるいは細菌の尿路への侵入などにより、この証になります。

湿熱邪が膀胱に侵入することにより、頻尿が発生します。尿の色は濃く、尿意促迫や排尿痛もみられます。

→ 漢方薬で湿熱を除去し、頻尿を改善していきます。

***

ひとことで頻尿と言っても漢方では、その背景にある体質をこのように詳しく観察し、見極めたうえで、その体質的な問題を改善する処方を用います。

したがって同じ頻尿・膀胱炎でも人によって処方は異なります。病院で膀胱炎を疑われて抗生物質を出されても全く効かない場合がありますが、上のように証をきちんと判断すればその理由も説明できます。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。中国政府より日本人として18人目の中医師の認定を受ける。「薬石花房 幸福薬局」院長。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を25冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社の医師・薬剤師向けサイト「日経メディカル(日経DI)」や「日経グッデイ」にて長年にわたり漢方コラムを担当・連載・執筆。中国、台湾、韓国など海外での出版も多い。17年間にわたり帝国ホテル東京内で営業したのち、ホテルの建て替えに伴い、現在は東京・銀座で営業している。

あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの証(体質や病状)により異なります。自分に合った漢方薬を選ぶためには、正確に処方の判断ができる漢方の専門家に相談することが、もっとも安心で確実です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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