前立腺肥大症


漢方では前立腺肥大症の背景にある体質を改善

 

前立腺肥大症は男性特有の疾患で、膀胱の出口にある前立腺が50歳頃から次第に肥大して尿道を圧迫するようになり、排尿障害をもたらすものです。

中医学では「癃閉」といい、古くから中高年男性を煩わせてきたことがわかります。

当薬局(東京・帝国ホテル内 薬石花房 幸福薬局)では前立腺肥大症の漢方治療のご相談をお受けしています。

(症例紹介ページは こちら

◆前立腺肥大症にみられる症状
尿の勢いがわるくなる、
尿が出始めるまでに時間がかかる、
尿が出終わるまでに時間がかかる、
排尿の途中で尿が途切れる、
頻尿、とくに夜間頻尿、
会陰部の不快感、尿意切迫感、残尿感、
排尿直後の尿もれ(排尿後尿滴下)、尿失禁
最悪の場合、尿がまったく出なくなる(尿閉)

◆前立腺肥大症の原因
加齢、男性ホルモン分泌量の変化、肉食に偏った食生活やアルコール多飲の習慣、肥満などのほかに、脂質異常症、高血圧症、糖尿病などの疾患も関係しているといわれていますが、詳細は明らかではないようです。

西洋医学では

α1遮断薬などの薬物療法や、内視鏡やレーザーによる手術などが行われます。
参考:日本泌尿器科学会編集 男性下部尿路症状・前立腺肥大症 診療ガイドライン

漢方では

症状が表れるに至った根本原因としての体質に対して治療を行うことで、症状が出なくなっていくことを目指します。

背景にある体質によって療法つまり用いる漢方薬が大きく異なるため、体質を見極めることが、前立腺肥大症の治療のポイントとなります。

体質の具体例は次項で説明しますが、体質の見極めおよび適切な漢方薬の選定には熟練が必要なので、信頼できる専門家に相談することをお勧めします。

 

◆前立腺肥大症によくあるタイプ・・・あなたはどれ?

(1) 「膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)」証

排尿困難や、尿意促迫、排尿痛、排尿時の灼熱感などがみられる場合はこのタイプです。

湿熱の邪(湿邪と熱邪)が膀胱の機能を障害している状態です。湿邪はからだの不調を引き起こす水分や湿気、熱邪は不調を引き起こす熱気のことです。

湿熱邪が膀胱に凝集し、前立腺を肥大させています。湿邪により頻尿や尿意促迫が、そして熱邪により排尿痛や排尿時の灼熱感が生じます。

→ 膀胱の湿熱を除去する漢方薬を用います。

(2) 「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証

尿の出が突然わるくなる、緊張や憂鬱で症状が悪化する、腹部膨満感などの症状がみられる場合は、このタイプです。

からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働きを持つ臓腑である五臓のの機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。

肝は自律神経系と関係が深い臓腑で、一般に、精神的なストレスや、緊張の持続などにより、この証になります。

からだの調節機能の失調が水液排泄機能に及び、前立腺肥大症の症状が悪化します。

→ 肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにする漢方薬を用います。交感神経の緊張による前立腺の収縮を緩和する働きもあると考えられます。

(3) 「血瘀阻塞(けつおそそく)」証

尿の勢いが弱い以外に、尿線が細い、下腹部の膨満感や痛みなどの症状もみられるようならこのタイプです。

血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。血管の微小循環障害や、流動性の異常、精神的ストレス、寒冷などの生活環境、寒冷刺激、不適切な食生活、運動不足、水液の停滞、生理機能の低下などにより、この証になります。

疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になることもあります。

血の鬱滞が塊を形成して前立腺を肥大させ、尿道を塞(ふさ)いでいます。

→ 血瘀による鬱結を分散させて水道を通利させる漢方薬を用います。

(4) 「腎陽虚(じんようきょ)」証

尿の勢いがない、腰と膝がだるい、寒がりなどの症状がみられる場合はこのタイプです。

陽気が不足している体質です。

は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖をつかさどる臓腑です。また「水、骨、納気をつかさどる」臓腑として、体液の代謝全般の調節、骨の形成、呼吸(とくに吸気)をつかさどる機能もあります。

陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。

腎陽虚は加齢とともに生じやすい証ですが、加齢だけでなく、過労、生活の不摂生、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。加齢に伴う前立腺肥大症によくみられる証です。

→ 腎陽を補う漢方薬を用います。

(5) 「脾気虚(ひききょ)」証

排尿時になかなか尿が出始めない、尿失禁、疲れやすい、息切れ、声が小さい、などの症状がみられるようならこのタイプです。

消化吸収や代謝をつかさどり、気血(エネルギーや栄養)の源を生成する五臓のの機能(脾気)が弱い体質です。

がじゅうぶん生成されず、体内の気が不足します。気の機能のひとつに、人体に必要なものが体外に漏れ出ないようにコントロールする働きがありますが、気虚になるとこの力が弱まり、尿がもれ出ます。

また脾は六腑の胃とともに飲食物の消化吸収をつかさどりますが、食べたもののうち人体に有用なものを吸収して持ち上げ、残りのかすを下に降ろす機能が失調すると、尿が出にくくなります。

加齢、過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより脾気を消耗すると、この証になります。

→ 脾気を強める漢方薬を用います。

◆前立腺肥大症に効果的な漢方薬

牛車腎気丸、八正散、五淋散、四逆散、補中益気湯

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あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。

自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
どうぞお気軽にご連絡をください。

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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