男性不妊症(症例)

(こちらの記事の監修:中医師 幸井俊高

「丈夫で元気な正常精子」 − 男性不妊症の漢方治療の成功例

こちらは、男性不妊症を漢方で治療した症例を紹介するページです。当薬局では、「丈夫で元気な正常精子」をつくることができるようになるように漢方薬で体質改善を進め、男性不妊症を治療します。このページでは、いくつかの成功例を紹介します。

漢方では、患者一人一人の証(しょう)に合わせて、処方を判断します。証とは、患者の体質や病状のことです。患者一人一人の証(体質や病状)に合わせて処方を決め、治療を進めるのが漢方治療の特徴です。

(こちらは症例紹介ページです。解説ページはこちら

症例1 「男性不妊です。検査の結果、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)と診断されました。手術をすすめられていますが、いまの時点では少し抵抗があります」

精子の濃度や運動率、奇形率の検査値がよくなかったので調べたところ、精索静脈瘤がみつかりました。痛みや違和感、腫れなど自覚症状はまったくありませんでした。

とくに大きな体調不良も感じませんが、血圧が少し高めで、肩こり、頭痛、便秘があります。舌をみると、舌の表面に紫色の斑点がみえます。

この男性の証は、「血瘀(けつお)」です。血流が鬱滞しやすい体質です。精神的ストレスや、冷え、生理機能の低下などにより、この証になります。血流がよくないために、精索静脈瘤が生じています。

血圧が高め、肩こり、頭痛、舌の表面の紫色の斑点(瘀斑:おはん)などは、この証の特徴です。顔色がどす黒い、冷えのぼせ、舌の裏の血管が太く紫色に盛り上がっている、などの症状がみられる場合もあります。

この証に対しては、血流を改善する効果のある漢方薬を用いて治療に当たります。この男性には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を使用し、2か月後の精液検査で早くも濃度、運動率、奇形率ともに改善がみられ始め、8か月後に自然妊娠が確認されました。手術はせずに済みました。

むくみがあるようなら、五苓散(ごれいさん)を併用するといいでしょう。

この症例では、精索静脈瘤に桃核承気湯を使いましたが、精索静脈瘤に桃核承気湯が効く、という意味ではありません。精索静脈瘤の人の中には血瘀証の人がいて、今回の症例の患者さんは血瘀証だったので、血瘀証に効く処方のひとつである桃核承気湯が効果的だった、という意味です。精索静脈瘤の人なら誰にでも桃核承気湯が効くわけではなく、他の病気や症状でも同じですが、しっかりと患者さんの証を見極めてから処方を判断するのが基本です。


症例2「結婚して4年になりますが子宝に恵まれません。検査をしたところ、精子の運動率があまりよくないと言われました」

42歳の男性です。検査の結果、妻にはとくに異常はありませんでした。精子の運動率については、精子無力症というほどではないが、不妊の原因はおそらくそのあたりにあるのではないかと言われています。

とくに大きな体調不良はありませんが、寒がりで、手足が冷えます。舌は白っぽい色をしており、湿っぽい白い舌苔が付着しています。

この男性の証は、「腎陽虚(じんようきょ)」です。生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である「精(せい)」を貯蔵し、生殖をつかさどる五臓の腎の陽気(腎陽)が不足している体質です。

腎陽が虚弱になると、性機能や内分泌機能が低下し、この男性のように精子の運動率の低下がみられることがあります。腎の機能低下は、精子の機能低下と深い関係にあります。

このような体質の場合は、漢方薬で腎陽を補い、男性不妊症に対処します。この男性は牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を飲み続け、4か月目に自然妊娠しました。精液検査の検査値も改善していました。

頻尿を伴う場合は、八味地黄丸(はちみじおうがん)を使います。

症例3「二人目の子どもを希望するようになって3年になりますが、妻がなかなか妊娠しません。夫婦で検査を受けたところ、精子の数が少ないと言われました。体外受精を勧められており、悩んでいます」

36歳の男性です。精液検査の結果、乏精子症というほどではないが、精子の数が少ないとのことです。その原因となることが多い精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は認められないため、精巣の働きがあまりよくないのかもしれないが、はっきりとした原因は不明、と言われています。

仕事はたいへん忙しく、残業が多く、いつも疲れており、よく頭がぼーっとします。めまいや耳鳴りがあります。手足のほてりも感じます。目は充血しやすく、疲れています。舌は赤く、舌苔はほとんど付着していません。

この男性の証は、「腎陰虚(じんいんきょ)」です。生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である「精(せい)」など、五臓の腎の陰液が不足している体質です。過労、加齢などにより腎陰がじゅうぶん補われないため精が減り、精子の数が少なくなっているようです。

この証の場合、陰液の不足により熱っぽくなり、熱証が生じます。頭がぼーっとする、めまい、耳鳴り、手足のほてり、赤い舌、少ない舌苔などは、この証の特徴です。のぼせ、口渇、寝あせなどの症状を伴う場合もあります。

この場合は、漢方薬で腎陰を補い、男性不妊の改善を目指します。この男性は、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)を服用し始めて9か月目に奥さまの妊娠が確認され、その翌年、第二子が誕生しました。

杞菊地黄丸は、腎陰虚を治療する代表処方の六味地黄丸(ろくみじおうがん)に枸杞子(くこし)と菊花(きくか)を配合した処方です。枸杞子にも腎陰を補う作用があり、菊花には眼精疲労を改善する働きがあります。

(こちらの記事は「薬石花房 幸福薬局」幸井俊高が執筆・監修しました。日経DIオンラインにも掲載)

*執筆・監修者紹介*

幸井俊高 (こうい としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。帝国ホテルプラザ東京内「薬石花房 幸福薬局」代表。薬剤師・中医師。『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』『漢方治療指針』(日経BP)など漢方関連書籍を20冊以上執筆・出版している。日本経済新聞社サイト「日経グッデイ」「日経DI(ドラッグインフォメーション)」にて漢方コラムを好評連載中。中国、台湾など海外での出版も多い。

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