不妊治療か漢方か?妊娠しやすい体質作りを

幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局(東京 帝国ホテル内の漢方相談薬局)の症例をもとにした漢方ストーリー 

結婚して3年になる「年齢的に若いとはいえない」女性が、不妊治療か漢方か迷いながら、漢方で妊娠しやすい体質を作ろうと決意するまでの過程を物語風に描いています。症例は筆者の経験をもとにしていますが、登場人物は実在の人物とは関係ありません。


■■なかなか妊娠しないのは■■


夫とは社内結婚である。

出会ったのは、社内でも業績がいいことで評判の営業第二部。広島事業所から異動してきた彼と、あっという間に恋に落ち、電撃的に結婚した。 

営業第二部には腕のいい部長がいる。仕事において決して手を抜かない。しかし穏やかで話しかけやすく、人望が厚い。

わたしは結婚して経理に異動となったが、夫は今も営業第二部で、その辣腕部長のもとで鍛えられている。

「あの部長、相変わらず業績いいの?」

自宅で二人で夕食をいただいているときに、聞いてみた。

「うん、この前も残業で一緒に遅くなったときに言っておられたけど、業績がいいのは、自分ひとりの実力ではない。まわりにいる人たちが素晴らしいからだ。そういういい環境で仕事をさせてもらっているんだから、せめて心をこめて仕事をしたいって思ってられるんだって。それが結果的に業績に反映されているんじゃないかって」

仕事において、妥協をしない。自己中心的に考えない。そういうところから強力なエネルギーが生まれ、人々が引きつけられていくのかもしれない。

「景気がいいとか、わるいとか、そういうことに関係なく、仕事ができることへの感謝の気持ちが大事っていうことらしいんだな」

食後のコーヒーを飲みながら、自分にも言い聞かせるように彼が言った。夫はいい上司に恵まれ、人間的にも大きく成長しているようだ。

そんな二人の目下の悩みは、赤ちゃんができないこと。結婚して3年が経ち、そろそろ妊娠したいと思っているのだが、なかなか授からない。

生理は毎月、順調に来ている。基礎体温もちゃんと二層に分かれている。ただ年齢的に、そんなに若くはないかな、ということが気にかかるくらいだ。とりあえず先日、初めて産婦人科に行ってみた。

検査の結果、やはりとくに異状はなかった。ただ年齢的に若いとはいえないので、早いほうがいい、と言われ、不妊治療を勧められた。そして勧められるまま、不妊治療を始めた。

不妊治療には少し抵抗があり、学生時代からの友人の友紀菜に相談してみたことがある。そのとき友紀菜は、 「医学的にみて若いとはいえない、と言われればそれまでだけど、わたしたちの年齢で出産している人もたくさんいるわけだしね 。不妊治療も選択肢のひとつだと思うわ。でも副作用がつらいとか、繰り返し行われる治療に通うことに疲れたとかいう話も聞くから、焦らないで、よく考えて決めるといいと思うわよ」

と言ってくれた。たしかに不妊治療をしても100パーセント妊娠するわけではなく、診察や注射に頻繁に通うのも結構たいへんだ。

先日また友紀菜に会ったとき、興味深い話をしてくれた。

「雪絵、わたし今、漢方を飲んでるの。飲み始めて半年になるけど、あれだけ悩んでいた頑固なニキビが、ほら」

たしかに友紀菜の顔からニキビが消えていた。

「あら、すごいじゃない。よかったわね」

「漢方薬で、ニキビができにくい体質に改善できたみたいよ」

「漢方で体質改善?」

「そう。それで先日、不妊症にも漢方が効くのかどうか、漢方の先生に聞いてみたら、かなり効果があるみたいよ」  漢方の先生がおっしゃるには、"妊娠しにくい体質"というものがいくつかあって、そういう体質を漢方薬で改善していくことにより、自然な妊娠を迎えることができる、とのことだ。とくに検査で異状がないのになかなか妊娠しない場合も、そういう体質を改善すれば"妊娠しやすい体質"に変わることができるそうだ 。

「わたしはどんなタイプかしら」

「ひとりひとりの体質は、わたしの場合もそうだったけど、やっぱり薬局で直接お話を聞かないとわからない、とのことだったわ」

どんな漢方薬を飲めばいいかということも、とにかく漢方の先生に相談しないと始まらないわけね。さっそく友紀菜の通っている漢方薬局に行ってみることにした。


■■漢方で“妊娠しやすい体質”を■■


漢方薬局では、生理の状態だけでなく、食事の好き嫌い、便通、冷え症などについても詳しく聞かれた。どうやら体質を判断するために必要な情報のようだった。

「雪絵さんの場合は、漢方でいう気血の流れが少し良くない体質のようです。気とは、元気・やる気の気ですので、生命力や生命エネルギーのような概念です。そして血は栄養や血液循環を表すものです。それらの流れがわるくなると、卵子にも十分な元気や栄養が行き渡らなくなり、受精しにくくなります。また子宮の血行もわるくなるので、せっかく受精しても着床・妊娠しにくくなります」

漢方の先生にカウンセリングをしていただいて気がついたが、若いころより肩こりがひどく、手足の冷えも強く感じる。お尻やおなかも冷えやすい。イライラすることも増えた。これらもすべて、気血の流れと関係があるそうだ。

「漢方は体質改善の薬です。漢方薬で"妊娠しやすい体質"を作っていきます。人工的に排卵を誘発したり女性ホルモンを補充したりするのとは別の方法です」

「気血の流れがよい体質にしていくのですね」

「妊娠できるかどうかは、雪絵さんの体質や体調が大きな鍵をにぎっています。病院の薬や医療技術だけで簡単に妊娠できるものではありません。たとえば栄養不足で疲れきった状態では、だれだって懐妊しません」

言われてみると、これまでの何度かの不妊治療が成功しなかったことについて、妊娠しなかったのは薬や医療技術のせいだと考えている部分があった。自分の妊娠のことなのに、他人事のように考えていた。

「妊娠を阻害する要因はたくさんあります。たとえば肥満体質の場合、そうでない場合と比べて妊娠する確率は3分の1になります。ほかにも"妊娠しにくい体質"は多々あります。雪絵さんの気血の流れがよくない体質もそのひとつです。このような体質的なことを顧みず、妊娠しないと嘆いていても始まりませんよ」

なるほど自分のからだのことなのに、いたわりの気持ちが足りなかった。

「自分自身の体質や体調をよりよい方向にもっていく気持ちが大事です。いま自分に妊娠できる可能性があることに感謝して、自分のからだやまわりの環境に思いをめぐらせる豊かな気持ちも大切です」

ということは、薬や治療に対する感謝の気持ちも大事ってことね。これまで最先端の治療を受けていても、早くなんとかしてくれないかな、早く終わらないかな、副作用がつらいな、と後ろ向きのことばかり考えていた。これからは漢方薬で"妊娠しやすい体質"になっていこう、と思った。

「わたしのからだが、赤ちゃんを授かりやすくなっていくのですね」

漢方薬を服用することにより、ホルモンバランスが整い、生殖機能が高まり、自然に妊娠する確率が高くなっていく。そう思っただけで子宮が温かくなってきたように感じた 。


■■生活全体を感謝の気持ちで■■


「食べ物に対する感謝の気持ちも大切ですよ」

漢方の先生が付け加えられた。

「そうですね、食べ物からエネルギーや栄養をいただいているのですものね」

体外受精を一回するのにかかる費用を考えれば、それと同じくらいの費用で漢方薬を一年間続けることができる。体外受精を何度も繰り返して心身ともに疲れている女性の話も聞く。体外受精の成功確率が約3割ということも考えると、わたしには漢方で"妊娠しやすい体質"を作っていくほうが合っていると思う。

夫の上司も漢方の先生も、大事なのは感謝の気持ち、とおっしゃっている。部長は実際にそれで高い実績をあげておられる。わたしも漢方薬や食事、もちろん夫や会社のみんな、それにいま生きているということにも感謝して過ごしていこうと思う。漢方薬と感謝の気持ちで、なんだか気血の流れがすでに良くなってきている気がしてきた 。

(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。→当薬局top

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自分に合った漢方薬に出会うには

自分の病気を治し、症状を改善してくれる漢方薬は何か。それを判断するためには、その人の自覚症状や舌の状態など、多くの情報が必要です。漢方の場合、同じ病気でも、その人の体質や病状により、使う処方が異なるからです。

 

そのために必要なのが、丁寧な診察(カウンセリング)です。中医師など漢方の専門家がじっくりと話を聴くことにより、あなたの体質を判断し、あなたに最適な処方を決めていくのが、漢方の正当な診察の流れです。

 

そして、その際に最も大切なのは、信頼できる実力派の漢方の専門家の診察を受けることです。
(一般によくみられる、病名と検査結果だけをもとに、漢方が専門でない人が処方を決める方法では、最適の処方を選ぶことができず、治療効果はあまり期待できません。)

 

当薬局では、まず必要十分な診察(カウンセリング)を行い、その人の体質や病状をしっかりと把握し、それをもとに一人一人に最適な漢方薬を処方しています。

 

あなたに最適の漢方薬に出会う秘訣は、信頼できる漢方の専門家の診察(カウンセリング)を受けることです。

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