厄介な鼻水・鼻づまりを漢方でスッキリ
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、慢性鼻炎に悩んでいた女性が漢方で回復していく話です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■慢性鼻炎が悩みの種■■
お久しぶり(^^)
たまには会わない?
景一からメールが来たのは、景一がこの店を辞めてから一か月ほどが経ったころだった
ここは都内のイタリア料理店。今日子がホールスタッフとして働きだして2年になる。名の知れたオーナーシェフが率いる比較的大きな店だ。景一はここの厨房で7年間働いたあと、先月退職した。独立して自分の店を持つという。
数日後、ふたりは居酒屋で会った。しばらく雑談を話したあと、景一が用件を切り出した。
「あのさ、今日子。今度おれがオープンする店、手伝ってくれないかな」
「いいわよ。でも休暇とれるかしら。景一が辞めてから人数が少ないままで営業しているし、なんか休みを取りにくいのよ、このところ」
「いや、そうじゃなくて、一緒に働いてほしいんだよ、うちの店で」
今日子は驚いた。景一の店に来いってことか。
いまの店はシェフが有名だから、もうしばらく働きたい。でも店の立ち上げから関わるのも楽しいかも。少し考えてみることにした。
それにしても、どうして景一は誘ってきたのだろう。彼女いないのかな。いや、そんなの関係ないしな。でも、もし彼女がいたとして、景一とその彼女と三人で毎日一緒に働くのはイヤだな。この点は、今度はっきり聞いておこう。
もうひとつ、今日子には悩みがあった。今日子は慢性鼻炎なのだ。年じゅう鼻水やくしゃみが出たり鼻がつまったりする。いまの店なら厨房の隅かクロークで鼻をこっそりかめばいい。しかし小さな店ならそんなスペースあるかどうか。ましてやオープンキッチンなんてことになれば、もうどうしようもない。鼻水をたらしながらお客さんにメニューの説明をするウエイトレスなんて、日本初かもしれない。そんな日本初にはなりたくない。
鼻炎カプセルを飲めば鼻水はおさまる。でも今日子の場合、胃が気持ちわるくなり、眠気・だるさに襲われる。だから極力飲まないようにしている。飲み続ければ具合わるくなるに決まっている。
鼻水が出てくれば鼻をかめばいいだけだ。これが今日子の考えだ。でも景一の店に入るとなると、そうも言ってられない。
はたして景一に彼女はいるのだろうか、そして鼻水の問題はどうすればいいのか。小さいようで大きな悩みがふたつ、立ちはだかった。
ある日、高校の同窓会があった。懐かしい友人たちが一堂に集まり、会場はにぎやかな雰囲気に包まれていた。そのなかに、前回は欠席だった亜矢子の姿があった。育児ストレスでうつ病になったと噂されていたけど、にこにこ元気そうだ。よかった。
「亜矢子、お久しぶり」
「あ、今日子じゃない。元気でやってる?」
「わたしは元気よ。そっちはどうなの。前回欠席だったから、心配してたのよ」
亜矢子はにっこりして「噂に聞いてるかもしれないけど、わたし、うつ病で引きこもっていたの」と答えた。やっぱり、うつ病だったんだ。
「もう大丈夫なの?」
「うん、漢方薬で治ったの」
「漢方薬?」
「そう。漢方薬で体質改善」
「わたしの慢性鼻炎も、漢方で治るかしら」
「試す価値はあるわよ、絶対」
さっそく漢方薬局に行ってみることにした。
■■鼻炎に効く漢方■■
漢方薬局では最初にカウンセリングを受けたあと、漢方の先生が鼻炎の説明をしてくれた。
「鼻炎などアレルギーの原因は、ホコリや温度変化、花粉、乾燥など外界からの刺激からからだを守る機能が弱い体質にあります。粘膜系や皮膚が弱くて過敏な体質です」
たしかに今日子の場合もホコリや温度変化ですぐ鼻水が出る。
「鼻炎の場合、さらに体内に余分な水分がたまっている体質も関係してきます。鼻水やくしゃみだけでなく、今日子さんの足のむくみや、重い頭痛、立ちくらみなども、みんな余分な水分のせいです。鼻づまりも、鼻の穴の粘膜がむくんで通路が狭くなって生じています」
なるほど、たしかに自分の体質は水っぽいとは思っていた。梅雨どきに体調を崩しやすいのも関係あるのだろう。それにしても立ちくらみも余分な水分のせいだとは知らなかった。
「さらにその原因が呼吸器や耳鼻科系の機能低下か、精神的なストレスか、冷えかなどにより、処方が違ってきます」
漢方の先生によると、鼻炎の人の体質は大きく4つあるという。
一つ目は耳鼻科系などの機能が弱い体質。疲れやすい人に多い。漢方薬で機能を高めて鼻炎を治す。
二つ目は過剰な水分がたまっている体質。水っぽい鼻水やくしゃみの連発が特徴。漢方で余分な水分を捨てるとよい。
三つ目は気血の流れがわるい体質。ストレスや緊張に弱い人に多い。漢方薬で流れを改善して鼻炎を治していく。
四つ目は冷え症体質。水分をめぐらせる力が弱い。からだを温めて機能を高める漢方を使う。
「先生は知識が豊富ですね」
「知識が豊富な人はほかにもたくさんいます。わたしはそれを行動に移しているだけです。実際に知識を使うことで、患者さんに少しでも貢献できるのではないかと思って仕事をしています」
今日子は、余分な水分を捨てる(漢方道の必殺技②)漢方薬を飲むことになった。
■■知識だけでなく行動も■■
漢方薬は苦かった。でも頑張って鼻炎を治そうと思い、飲み続けることにした。まだ飲み始めて2週間だが、調子がいいような気がする。
今日子は、ふと思った。これまで何年も放ったらかしにしておいた鼻炎を真剣に治そうとしている。これって、景一の店で働きたい気持ちの表れかもしれない。
とにかく鼻炎の悩みは漢方薬で解決できそうだ。さて、もうひとつの悩み、景一に彼女がいるのかどうかについても解決しないといけない。今日子はそれとなく景一にメールを打った。
お店のスタッフ、
何人の予定なの(・・?)
すぐ返事が来た。
お前とふたりだよ。
それより返事まだぁ (´-`;)
やった。これで決まった。
2か月後、すでに今日子は店を辞め、景一と行動をともにするようになっていた。不動産は、運よくいい物件がすぐにみつかった。鼻炎も順調によくなってきている。鼻がつまることが、ほとんどなくなった。むくみも軽くなった。くしゃみの連発も減った。体内にたまっていた余分な水が、はけているのが実感できる。
新しい店の場所が決まると、次は設計、内装、食器選びなど、やるべきことがたくさんあった。毎日のように景一とふたりで人気店に食べに行って研究したり、少しずつ食器を買いそろえたりした。店は景一の希望でオープンキッチンとなった。鼻炎の改善を進めておいてよかった。
それから3か月。内装工事が終わり、テーブルや椅子がホールに配置され、厨房では料理の試作が繰り返された。メニューはふたりで考えた。朝は築地にも一緒に通った。夜は店で遅くまで景一が試作するフライパンや鍋の音がしていた。
オープン間近になると、知り合いを呼んで実際の練習をした。前の店のスタッフも食べにきてくれた。オーナーシェフまで一緒に来てくれて、自分が若いころ使い込んで短くすり減った包丁を開店祝いにくださった。
「知識に頼るな。おれたちは料理研究家ではない。料理人だ。知識だけでなく、行動することが大事だ。それがお客さんの幸せにつながる。この包丁はそういう意味だ。これからはライバルとして頑張ろう」
前の店のスタッフたちの拍手と歓声が店内に響いた。景一が包丁を受け取ったとき、目頭が熱くなった。
開店の日が迫り、ご近所への挨拶を済ましたころには内装建材のにおいも消え、料理のにおいが、店内に染み付き始めている。鼻炎の調子がすっかりよくなった今日子の鼻に、景一が作る料理のにおいが心地よい。漢方のおかげで頭痛や立ちくらみもなくなり、休みなく働ける自信もついた。
いよいよ明日、景一の店がオープンする。
(幸井俊高執筆 「VOCE」掲載記事をもとにしています)
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