気持ちをゆるめて過敏性腸症候群を緩和
幸井俊高執筆・・・薬石花房 幸福薬局 の症例をもとにした漢方ストーリー
以下は、過敏性腸症候群で悩んでいた完璧主義の女性が漢方で回復していく話です。薬石花房 幸福薬局の実際の症例をもとに、物語風に描きました。
同じようなお悩みでお困りの方は、あきらめず、どうぞお気軽に薬局までお問い合わせください。
(登場人物は実在の人物とは関係ありません。)
■■完璧主義者の弱点■■
淳子はいま結婚して郊外のマンションに住んでいる。通勤に片道1時間半かかる。いまでこそ電車を途中下車することもなく通勤できているが、1年前には考えられなかったことだ。
淳子の悩みは下痢である。とくに大学入試の受験勉強のころから便はいつも軟らかめだった。親や周囲が期待する難関校への合格がプレッシャーだったのかもしれない。とくに試験前や試験中におなかが痛くなって便意を感じることが多かった。
成績はいいほうだった。しかし得意の数学と物理では高得点をとらなくてはという自意識もプレッシャーになっていたのだと思う。
大学は念願の志望校に合格し、学生時代は腹痛と下痢に悩まされることはあまりなかった。しかし就職してから事態は悪化した。 のんきで自由な学生時代とは違い、社会に出ると思い通りにいかないことが多い。神経質でプライドが高く、完璧主義者のわたしにとっては、それが人一倍のストレスとなってのしかかってきた。わたしの考えが会社に受け入れられないのが納得できなかった。 当時、実家から通っていたわたしの通勤時間は、片道1時間弱だった。しかし会社のストレスのせいで、大学時代には治まっていた慢性的な下痢が再発した。とくに電車のなかで急に腹痛に襲われることが多く、途中下車して駅のトイレに行くこともしばしばあった。
最近は地位が上がり、複数のスタッフを使って仕事をすることが多い。そうなると、ますます自分の思い通りにことが運ばなくなる。どうしてあの人は同じようなミスを繰り返すのか、どうしてこの人はわたしの言うとおりにできないのか。いろいろな方法で改善しようとしても、スタッフが思い通りになるとは限らない。おなかの調子はますます悪化していった。
「最近、細かいミスが多いぞ」
ある日、上司にそう言われたときにはびっくりした。わたしは完璧なはずなのに。下痢はさらにひどくなった。
休日は、なんともない。ふつうの便が出る。寝ているあいだも腹痛は起こらないし、便意で目覚めることもない。
これはストレス性の下痢だな、と思い病院に行ってみた。案の定”過敏性腸症候群”と診断された。その後、病院で処方された薬をしばらく飲んでいたが、効果はまったくなかった。
そんなとき、友人の依子が会社の激務でくずした体調と気力低下を回復させた、という話を聞き、相談してみた。彼女は漢方薬で体質改善をしたとのことだった。
わたしもさっそく漢方薬局で相談してみることにした。
■■性格を変える?■■
「その下痢には、性格が関係しているかもしれませんね」
最初のカウンセリングでわたしの話をずっと聞いてくださった漢方薬局の先生が、そうおっしゃった。
「え、わたしの性格が、ですか?」
「そうです。神経質で細かいことが気になるタイプでしょ、完璧主義で」
「ええ、たしかにそうですけど。それに、その完璧主義のおかげで苦労しているのもわかっています。先生は、下痢を改善するためには、わたしの性格を変えるべきだとおっしゃるのですか?」
「いや、性格を変えるのではありません。そのような性格でも過敏性腸症候群になっていない人もいるでしょう。心とからだのバランスを漢方薬で安定させれば、症状は緩和されていきますよ」
わたしの性格を振り返ってみると、まず神経質で几帳面、そして完璧主義。約束の時間に遅れたことはない。まじめで細やかな気が利くといわれる。しかし些細なことにこだわる心配性である。
心配性だから、失敗したらどうしよう、うまくいかなかったらどうしよう、上司に怒られたら困る、こんなことばかり考えている。なにかトラブルがあっても、それが絶対に自分のせいではないといえるように伏線を張るのに神経をすり減らしている。自分は間違っていない、と言いたいために、メールでも会議でも、くどいくらい長々と説明するタイプである。
仕事では当然ミスをしてはいけないと思っている。仕事がよくできる人だと周りに思われてきたから、ちょっとしたミスもしてはいけない、と自分に厳しくしてきた。そして会社では仕事の仲間にも完璧を求めるようにしている。
しかし会社の仲間は思い通りに仕事をしてくれない。どうしてわたしの言うことが理解できないのか、どうして言われたとおりにできないのか、わからなかった。
「そういう考え方をしていると、ふつうの穏やかな人間関係は続きませんよ。自分ができることは他人もできる、あるいは他人も自分と同じようにしてくれるにちがいないと思ってしまうようですね、完璧主義の人は。他人に対して百点満点を取ることを厳しく求めてしまようです。完璧主義者には、自分の思い通りにことが運ばないと納得できず、我慢できないような自己中心的な人が多いようですよ」
先生に言われてどきっとした。先生は一般論のように淡々とお話になったが、一言一言ぐさりと突き刺さってきた。わたしは自分に厳しい立派な人間のつもりだったのに、他人に厳しいイヤな人間になってしまっていた。
■■漢方で生まれる心のゆとり■■
「完璧主義者の場合、バランスを失いやすいのは”心(しん)”と”肝”です」
「心臓と肝臓ですか?」
「いや、そうではなく、五臓六腑のなかの心と肝です。心というのは、心臓を含む血液循環機能や高次の神経系機能です。思考や判断、意識などは、この心と深い関係にあります。心の機能が衰えると、動悸や不安感、不眠、健忘、のぼせ、疲労倦怠感などの症状が現れます」
「肝はどうなるのですか?」
「肝は、自律神経系や肝臓の機能、情緒活動などをつかさどる機能です。肝のバランスが失調すると、情緒不安定、いらいら、憂うつ感、頭痛、めまい、のぼせ、不眠などの症状が出現します」
「わたしの下痢は完璧主義の性格とも関係が深いとのことですが、その心や肝が完璧主義のせいで調子がわるくなった、ということですね」
「そうです。とくに肝の状態が不安定になり、その影響が”脾”に及んだ結果の下痢です。脾も五臓六腑のひとつで、消化吸収機能などをつかさどります。その脾の機能が衰えたので、下痢の症状が出ているのでしょう。緊張や不安といった、肝に負担がかかりやすい状況で腹痛や下痢が起こるのは、そのためです。これを”肝気犯脾”といいます。さらに完璧主義者は仕事だけでなく家事も同じようなやり方でするため、疲れがたまってますます下痢になります」
わたしは、その肝気犯脾という体質を改善するための漢方薬を飲むことになった。肝の気の流れを調えて(漢方道の必殺技③)、脾の機能をしっかり補う(必殺技①)処方だそうだ。
わたしは漢方薬の服用と同時に、ものの考え方を変えた。まず、自分にも他人にも完璧を求めないようにした。そして他人のミスばかり気にする減点法から、逆に良い点を見つけて楽しむ加点法を習慣づけることにした。
最初のうちは他人のミスを受け流すことができなかった。100点ではなく70点でも良し、というふうには簡単にはいかなかった。でもがんばって完璧を求めないようにした。しばらくはそれがストレスで、腹痛になる頻度が増えたくらいだ。
しかし1ヵ月もしないうちから、腹痛と下痢になることが、どんどん減っていった。3ヵ月くらい経ったころには、不安を感じながら電車に乗ることもなくなった。
上司もうれしそうに言ってくれた。
「ミスもすっかり減ってきたね」
いまから思えば、自分はミスをしていても気づかず、それで他人には百点満点を求めていたころの自分がちょっと恥ずかしかった。でもこれも、完璧を求めない、ということで過去の自分を許してあげようと思った。
(幸井俊高執筆 VOCE掲載記事をもとにしています)
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