腰痛
◆漢方が得意とする慢性的な腰痛の改善
当薬局では慢性的な腰痛でお悩みの方の漢方治療のご相談をお受けしています。
腰痛の漢方治療の症例は こちら
腰痛は日本人の約8割が経験するという一般的な症状ですが、その85%は検査してもはっきり原因がわからないものといわれています。
とくに病気やきっかけがないのに腰への負担が積み重なって起こる慢性的な腰痛が増えています。上半身の体重を背骨で支える構造になっている人間の宿命ともいわれますが、不適切な生活習慣、生活・職場環境などによる悪影響が腰への負担を増加しているとも考えられます。
そもそも脊椎には椎間板などクッションの働きをする組織が存在します。しかし20歳代以降はそのクッションの柔らかさが次第に失われていきます。そこに血行不良や筋肉の緊張、長時間のデスクワークなどによる負担がかかると、慢性的な腰痛になります。
西洋医学では
西洋医学ではレントゲンやMRIをはじめとした検査で原因を特定します。
一般には腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症・すべり症、脊柱管狭窄症、骨粗鬆症のほかに腎臓結石や尿管結石、腎臓疾患、子宮筋腫、子宮内膜症、悪性腫瘍などの病気が考えられます。
必要に応じて整形外科、ペインクリニック、内科、心療内科、婦人科などで治療を受けます。手術が効果的な場合もあります。
しかし検査で原因が特定できない場合は治療法がなく、湿布と痛み止めが出るぐらいです。慢性化、悪化、頻発する場合も多く、困っている方は少なくありません。
漢方では
腰痛の原因が特定できない場合、そこには、生活習慣、姿勢、ストレス、不安などの精神面の状態、加齢、脊椎の関節や周囲の筋肉の炎症、神経への負荷、筋肉の疲労、骨量の減少、体重の増加などが関係していると考えられます。
病気と診断されるに至らない程度でも、漢方ではこれらの状態をバランスの乱れととらえ、漢方薬によって正常に戻す方法があります。
腰痛、特に慢性の腰痛に深く関係しているのは、五臓の腎(じん)です。腎は、人の成長・発育・生殖をつかさどり、また体液の代謝全般をつかさどり、さらに骨をつかさどる臓腑です。
そして、腰は「腎の府(ふ)」といわれる部位です。慢性的な腰痛には、多かれ少なかれ腎の機能低下が関係している場合がほとんどです。従って漢方の腰痛治療では腎を強める漢方薬が多く使われます。
実際に使う処方は個人の状態によって異なります。よくある腰痛のタイプを次に説明します。
◆腰痛になりやすいタイプ・・・あなたはどれ?
<体質やタイプを漢方で証(しょう)といいます>
(1)「腎陰虚(じんいんきょ)」証
五臓の腎において陰液(人体に必要な血・津液・精)が不足している体質。腎の精が減って「腎の府」である腰を十分に養うことができず、腰痛が発生。
加齢、過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良などでこの証になりやすい。
◎腎陰虚で出やすい症状
腰の鈍痛、膝のだるさ、力が入らない、疲れるとひどくなる、頭がぼーっとする、めまい、難聴、耳鳴り、老眼、尿漏れ、舌が赤く舌苔はあまりついていない など
→ 腎の精気など腎陰を補う漢方薬を用いる。
(2)「腎陽虚(じんようきょ)」証
腎の陽気(エネルギー)が不足している体質。体の機能が衰えて冷えが生じ、腰痛が発生。
◎腎陽虚で出やすい症状
腰の鈍痛、膝のだるさ、力が入らない、疲れるとひどくなる、冷え、尿量過多、夜間頻尿、舌が白く湿っている など
→ 体を温めて腎陽を補う漢方薬を用いる。
(3)「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証
体の諸機能を調節する肝(かん)の気(肝気)の流れが滞っている体質。肝と関係が強い腎に影響が及び、腰痛が発生。
ストレスや緊張が持続すると、この証になりやすい。
◎肝鬱気滞で出やすい症状
ストレスや緊張で悪化する、全く痛まない日もある、明け方の疼痛、赤い舌 など
→ 肝気の鬱結を和らげて流れをスムーズにし、ストレス抵抗性を高める漢方薬を用いる。
◆ここがポイント
椎間板ヘルニアなどの疾患があって腰痛が起こらない人もいます。同じ疾患で感じる痛みの程度に精神的・心理的なストレスなどが関与している場合は少なくありません。ストレス緩和によって実際に腰痛が軽減することも多いのです。
(4)「血瘀(けつお)」証
血流が鬱滞しやすい体質。腰で鬱血が生じ腰痛が発生。
◎血瘀で出やすい症状
刺すような痛み、痛い場所が定まっている、もむとかえって痛む、頭痛、生理痛、冷え、舌に暗紫色の斑点 など
→ 血行を促進し、鬱血を取り除く漢方薬を用いる。
(5)「寒湿(かんしつ)」証
湿気が多くて寒い環境に長期間滞在したことなどで寒湿(寒邪と湿邪が結合した病邪)が腰に停滞し、腰痛が発生。
◎寒湿で出やすい症状
温めると楽、下半身のむくみ、腰から下の冷え、腰が重い、寝ていても痛い、雨の日にひどくなる、湿っぽい舌 など
→ 体を温めて湿気を取り除く漢方薬を用いる。
(6)「風湿(ふうしつ)」証
湿気の多い梅雨時などに風湿邪が体内に侵入して腰部の気血の流れを阻害し、腰痛が発生。
◎風湿で出やすい症状
下半身のむくみ、腰が重い、雨の日にひどくなる、湿っぽい舌 など
→ 風湿邪を除去して巡りを良くする漢方薬を用いる。
◆腰痛に効果的な漢方薬
上記のように腰痛のタイプによって治療法が異なるため、使われる漢方処方も様々です。
複数のタイプが混合している場合や上に挙げた以外の要因が強い場合など、個人差は千差万別なので、実際には時間をかけて問診し、じっくりと体質を見極めたうえで慎重に処方を選びます。
自分にベストの処方を知るには、漢方の専門家に相談するのが近道です。
比較的よく使われる処方は以下の通りです:
四逆散、加味逍遙散、六味地黄丸、三物黄芩湯、八味地黄丸、牛車腎気丸、苓姜朮甘湯、桂枝加朮附湯、薏苡仁湯、麻杏薏甘湯
◆漢方と生活習慣で腰痛を改善
漢方では、血行を改善したり筋肉の緊張をやわらげたりするほかに、腰痛に対して漢方薬で腎の精を補充して腰を養う、つまり老化防止をすることにより腰痛の緩和に効果をあげています。慢性的な腰痛の根底に老化や過労などの要因が隠されているということでしょう。無理は禁物ですね。
日常での注意点としては、まず姿勢に気をつけることです。正しい姿勢を意識しましょう。とくに長時間パソコンを使う仕事や椅子に座りっぱなしの職業のかたは、前かがみにならないようにし、こまめに休息をとって歩き回るなど体を動かしてリフレッシュしてください。
食事にも気をつけてください。季節の野菜や穀物を中心にバランスよく食べると血行がよくなり神経にもよい影響がありますので、痛みやこり、しびれに効果的です。
また腰だけでなく体が冷えないように注意してください。過度の冷房を避け、入浴やマッサージで患部を温めましょう。ストレッチなどの軽い運動もお勧めです。
腰痛のかたは、それ以外に腰への負担をかけないよう、中腰の姿勢を避けたり硬めのマットで寝たりという工夫をしましょう。腹筋や背筋を鍛えるのも効果的です。
漢方では、腰は「腎の府」といわれ、生命活動に重要なエネルギーが集まる場所と考えています。軽い腰痛でも軽視せず、正しい姿勢や肥満の予防なども含めて、早期に改善に当たってください。
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あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。
自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
どうぞお気軽にご連絡をください。
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